「はい、続いての問題です。山田さん、フリップを配ってください」
「はーい、かしこまりました」
「私、春風亭昇太や小遊三さん、宮治さんは落語芸術協会という団体に所属しています。そして木久扇さんとたい平さんは、落語協会です。二つの協会それぞれに落語家が所属していますが、団体の個性には違いがあると言われています。
ひと昔前ですと、古典落語の落語協会、新作落語の落語芸術協会なんて言われました。今では落語協会にも新作派が多くなって、芸術協会のほうも古典が主流になって、やる噺自体はそれほど変わらないんですが。
フリップには、『落語協会』と『落語芸術協会』の文字が書かれています。順序は問いませんから、二つの協会の違いを説明してください」
「俺もいるけど」
「好楽さんは、どちらでもない、円楽一門会ですね。元々は落語協会にいたんですよね。彦六師匠が亡くなってから先代の圓楽師匠のところへ移られたんでしたね」
「どうかうちに来てくれって圓楽が頭下げるもんで、仕方なくて」
「山田さん、好楽さんの2枚取って」
「なんだよー」
「気を取り直して、できた人? はい宮治さん」
「会長に威厳があるのが、落語協会。会長に」
「宮治さんの1枚取って」
「まだ最後まで言ってないじゃないですか!」
「だいたいわかるわ! 確かに俺には威厳はないし薄っぺらいのも自覚してるよ。でも、小遊三さんが逃げたから仕方なくやってんだよ!」
「仕方なかったのか!」
「じゃ次、はい、逃げた人」
「逃げた人って言うなよ」
「小遊三さん、どうぞ」
「落語が上手いのが、落語協会。夕食どきの家に上がり込むのが上手いのが、落語芸術協会」
「それ、ひとりだけだろ。みんながそうじゃないよ。ん、なにたい平さん」
「人の家に忍び込むのが上手いのも芸術協会ですよ」
「そうだ。山田さん、泥棒の1枚取って。じゃ、たい平さん」
「昇太会長の信頼が厚いのが落語芸術協会。相談されない相談役がいるのが落語協会」
「それ隣の黄色いおじさんのことですね。面白いから1枚あげて」
「私にも誰か相談してよお」
「知らないよ。じゃ、相談役どうぞ」
「高座で芸を売るのが落語芸術協会。ロビーでラーメンを売るのが落語協会」
「そう、困るんだよ一緒の会に出るとすぐラーメン売るからさ。木久扇さんに1枚あげて。はい円楽党の好楽さん」
「落語協会の噺家も、芸術協会の噺家も、池之端しのぶ亭には出られます。あと立川流も上方もね」
「こんなところで自分の寄席の宣伝しないの! でもなんか平和でいいから1枚あげて」
「池之端しのぶ亭って、この間潰れたんじゃなかったでしたっけ」
「潰れてねえよ」
「宮治さん、人の寄席勝手に潰さないで。はい、じゃあなたどうぞ」
「人気の落語家が多いのが落語協会。一番人気がある芸人が講談師なのが落語芸術協会」
「うーん。君ももっとがんばれ。はい小遊三さん」
「全裸芸人のアキラ100%を嫌ったのが落語芸術協会の歌丸師匠。すぐ裸になる噺家がいるのが落語芸術協会」
「それ、あなたのところの遊雀さんでしょ。どっちも芸術協会だけど、落語協会はどうしたの」
「協会でも玉の輔がすぐ脱ぐらしいよ」
「もう、噺家みんなハレンチだと思われるじゃないですか。迷惑だから1枚取って。はい木久扇さん」
「鈴本演芸場から出ていったのが落語芸術協会。うちから出たら帰れなくなるのが落語協会」
「もう、それあなただけでしょ! おじいちゃんの1枚取って。はいたい平さん」
「会長が離婚してタワマンでひとり暮らしなのが落語協会。会長が世田谷の豪邸でいっときふたりで住んでいたのが落語芸術協会」
「まだふたりだよ!」
「なにかあったのか」
「なにもないよ! 1枚取って! はい次、好楽さん」
「30歳までに入門しなきゃいけないのが落語協会。35歳までに入門しなきゃいけないのが落語芸術協会。そして年取ってから入ってくる弟子がいるのが円楽党と立川流」
「そうなんですよ。35過ぎた人は好楽さんのところに行くと弟子に取ってもらえるかもしれませんね」
「若い人も来てね」
「はい次、宮治さん」
「仲間をいじめる前座を理事会で協議して追放するのが落語芸術協会。弟子を公衆の面前でぶん殴って警察を呼ばれるのが落語協会」
「えー、ここカットします。あんまり特定の噺家に着目しすぎないように。はい小遊三さん」
「歌舞伎役者みたいな噺家に会えるのが落語協会。アラン・ドロンに会えるのが落語芸術協会」
「誰がアランドロンだ!」
「いないいなーい、アランドロン」
「小遊三さんの1枚取って。フリップで遊ぶんじゃない。
というわけで、落語協会と落語芸術協会の違い、わかりましたでしょうか。結論としては、どっちもいい加減な大人たちがいる協会ということですね。ぜひ寄席にも足を運んでください」
・・・というネタ記事が「落語協会 落語芸術協会 違い」というキーワード検索にバシバシ引っ掛かり、ついでにGoogleポータルにも掲載されて、広告収入がジャラジャラ入る夢を見た。
まだまだ続きま~~す♪
ってこのネタ続けてほしいです。
全9話ぐらいでまとめてのシーズン7ぐらいまでいけるんじゃないでしょうか?
少々イージーなネタでしたが、喜んでいただけて幸いです。
最初は「やかんの先生」が両協会を説明するスタイルにしようと思ってたんですが、笑点は便利です。