「落語初心者は寄席に行きなさい」これでいいのだ

休みがちで済みません。
身内で葬儀などあったもので。
まあ、その割にはまあまあ更新しているなと。

さて今年は、落語関係の検索ワードで必ず引っかかるブログにしようと企んでいる。
すぐに引っかからなくても、仕込んでおけばいずれ掛かる。現に、TBS落語研究会で柳家さん喬師の「鴻池の犬」が出て、検索訪問がありましたよ。
私の記事は日本の話芸のもので、内容は若干違ったけども。

「つまらない落語家ランキング」のワードは、まだ書いた記事がダイレクトに掛からない。まあ、いずれ。
ところで、この検索で引っ掛かるブログ記事がひとつある。
「落語初心者に、寄席をお勧めしない4つの理由」だって。何度か目にしたことはある気がする。

関係ないけど、タイトルに具体的な数字を入れる方法は、プレゼンとして非常によいとされている。
私も、このブログではあまり使わないけど、本業のほうでは結構使う手である。

調べたらこの方、「はてなブログ」で書いていたようだが、2019年にすでに更新を止めている。
125記事を書いて更新を止めてしまったようだ。
こんなの別に珍しいことではない。
私も、世間にはそこそこ引っ掛かった数多くのブログが、更新をやめるさまを見てきた。
まあ、飽きるんでしょうね。そしてネタがなくなるのだ。
ちなみに、当でっち定吉ブログには1665の記事があります。1日5本読んでも1年掛かる。
初期にヤフーブログで書いてた頃の続きものは1本にまとめたので、実際にはもう少し多い。

「つまらない落語家」検索でなぜその記事が引っかかるかというと、「寄席にはつまらない落語家もたくさん出るから初心者は行くな」というオススメだからである。
ホール落語で慣れてからのほうがいいよ、と親切に忠告しているのだ。

こういう意見は珍しいというわけではない。
広瀬和生氏もこんなことを書いている。正確に言えば、落語評論家が大嫌いな広瀬氏は「初心者はまず寄席に行け」という無責任なオススメを非難しているのであるが。
広瀬氏の場合、いい席だったら寄席でもいいようだ。

かつて私は、広瀬氏の意見につき「そんなことないよ。始めて行く場合、寄席こそいいよ」と書いたことがある。
このときは別に、露骨な反論ではない。個人の意見を書いただけ。

今回改めて、天狗連の書いたこのブログ記事に別の感想を持った。
「前提が激しく狂ってるな」である。
つまらない寄席があるから、どこでもいいわけじゃないと書いてる広瀬氏も同様。

寄席をお勧めしない「4つの理由」はこういうこと。

  1. 寄席は時間が長い
  2. つまらない演者がいる
  3. 小噺が多い
  4. 真剣でない客が多い

読めば読むほど、私の感性とは違うなあと言わざるを得ない。

なお、広瀬氏も含めてだが、超根本の間違いは、この「4つの理由」とは別にある。
どうして、寄席に興味があって行きたい人が、その後ステップアップして落語大好きになる前提なの?
そんな人、いたとして10人に1人じゃない?
「落語大好きになるはずの初心者が、最初に躓いたら可哀そう」だってか。
せっかくの落語ファン候補が躓かないためにアドバイスしようなんて、傲慢に過ぎなくない? それも落語の基本である寄席を取り上げて。

私は非常にライトな歌舞伎好きである。
歌舞伎座の幕見しか観ない。当然ながら幕見の閉まっているここ数年、歌舞伎に触れていない。
それからミュージカルも好きだ。C席で観る。これもしばらくご無沙汰。
歌舞伎やミュージカルについて語れと言われれば、知っていることをいくらでも語れる。
語れるが、どこまで行ってもライトな観劇ファンに過ぎぬ。
落語にだって、ライトなファンがたくさんいるのであるが、お忘れか。
出会いが悪くてライトなファンにすらなり損ねるような奴は、救済する価値はない。救済してやったって、一人前のファンはおろか、軽いファンにすらなったりしない。
余計な気を揉む必要などないのである。
歌舞伎なら歌舞伎座をおすすめすればいいし、落語なら寄席をおすすめすればよい。
古い建物で人気の末広亭に行きたいなら、それでいい。
おすすめした人がどんな運命をたどるか、そんなことに責任は持たなくていい。

昔ごく軽い反論をしたときは感じなかったのだが、今にして思う。
ただただ落語評論家を貶めたいがため、架空の「落語好きになりそこねる層」まで持ち出してくる広瀬氏のレトリックって、最悪だな。

さて、更新をやめたブログの「寄席をおすすめしない理由1〜4」についてもう少し。

1(長い)はまるで間違いではない。
初心者のうちから、昼夜居続けなんて変態はいないが、昼だけ、夜だけでも長い。
それはそうと「長い。ああ疲れた。もういやだ」なんて人は、落語好きになんかならないって。
でも、ライトな落語好きでいられる可能性は十分あると思う。だから、一度経験したっていいのだ。
それに、落語会にはない要素が寄席にはある。多数の色物さんが、疲れないように気を使ってくれるではないか。
落語会での2時間は、寄席の4時間に相当する。落語界相対性理論。マルCでっち定吉。

2(つまらない演者の存在)は、かなり間違い。
100%ウケる演者は最初からいない。客の好みもいろいろあるから、いろんな人が出ていていいのだ。
そして、100%つまらない演者は寄席には呼ばれません。
呼ばれたとて、最大限害のない出番に置かれるものだ。
ただ、ここ数年で寄席の顔付けがレベルアップしたのも感じる。特に芸協。
まるで間違いというより、ちょっと古めの見解ということになるだろうか。
そういう私もまだ、広小路亭の芸協定席に行くのは若干怖い。だが、初心者はそんなのでもいいと思いますよ。

3(小噺が多い)は事実ではありません。
「15分しかないと落語はできない」なんて書いてるが、そんなことはない。
15分こそ落語の基本。
末広亭では確かに、12分の高座で小噺がよく出た記憶が私にもあるけど、最近はそうでもないと思う。

4(客が真剣でない)はまあ、浅草についていえばそうですね。
でもおかしなこと言うなあ。1では「真剣に聴くと疲れます」って言ってるんだよ。
いいんですよ。リラックスして聴けば。寝たっていいよ。

というわけで、初心者は寄席に行って下さい。
以前は私も、「鈴本がいいよ」と書いていた。今でもこれはそんなに間違っていないと思う。
でも、どこでもいいから「とにかく一度行ってみる」が正解ですよ結局。

(訂正)

葬儀の話を書いたら、「個人の意見」が引きずられて「故人の意見」になってました。まだ生きてます。

それから当ブログ、1日5本読んだら1年で読み終わります。
5年って書いてました。

作成者: でっち定吉

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