「つまらない落語家ランキング」だと?

2023年の当ブログ、世間で検索されているワードに合わせた記事も積極的に書いていこうと思っている。
これは、商業ブログにおいてはごく普通のことだ。
「落語協会 落語芸術協会 違い」検索は4位まで上昇。

昨日の金原亭杏寿さんの記事も、さっそく検索で8位に登場している。
アップして丸1日の個別アクセスは、ほぼ当ブログの読者の方のものだろうが、すでに300突破。
これから検索アクセスも増えていくと予想される。

よく考えたら、東大でサルトルを学んでいた超インテリの古今亭菊一さんも、柳亭市松さんともども同時昇進だ。
かつて菊一さんを求めるフィギュアスケートファンの来訪で、古いブログは大賑わいだった。残念ながら、古いブログにはGoogleの自動広告はなかったので、売上は上がらなかった。
デビュー時から落語の上手い菊一さんにはあいにく、それ以来遭遇していない。
この人の昇進記事が出たら、またなにか書きます。

さて、以前から気になる検索ワードがある。
「つまらない落語家ランキング」

えー。「つまらない落語家」だけならわかるのだが、なぜランキングまで?
特定の人間が繰り返し検索してるのかな。そうだとしても、現にポータルサイトの類推検索に表示されているので、これをタップする人もいるのである。
検索を捕まえてみるか。
ちなみに、「落語芸術協会 つまらない」という検索ワードもあるが、これに私のブログがたまたま引っ掛かる(笑点の記事)。
別に芸術協会つまらなくないですよ。特に成金以降は。二ツ目さんもいい芸人が無数にいるし。
落語協会の寄席しか行かない人が、「芸協つまらん」はダメでしょう。

「つまらないランキング」の成立は本質的に無理がある。
簡単な理屈である。
本当につまらない、というか下手な噺家はいる。そして、年功序列で真打になっている。
真打になっても、下手な人は寄席に呼んでもらえないので出番もそうそうない。
出番がない人には遭遇しない。遭遇しない人のランキングは作れない。

遭遇しない、珍しい代表として、柳家小三太という人がいる。
噂は耳にしていたが、実際に黒門亭で聴いて心底驚いた。高座が成立してないんだもの。

実は、つまらないランキングに入っているんじゃないかと調べたくなる噺家は、こういった名ばかり噺家よりも、クラスが上である。
林家三平師はしばしば、つまらない噺家の代表とされている。
だが少なくとも、この人は浅草に限定すれば出番もあるし、トリも取っているのである。
ある程度高座を確かめる機会があった上で評価を受けているわけだ。
私に言わせれば、下手というよりも、噺家生活の初期に刷り込まれた勘違いが治らない、気の毒な人だと思っている。
客への立ち向かい方を誤っているわけだ。

兄の林家正蔵師もしばしばヘタクソ呼ばわりされるが、そう言っているのは聴かない人か、20年前に聴いてネガティブな感想を持った人かどちらかで間違いない。
現在気軽に正蔵ヘタクソと言うなら、落語の鑑賞力に疑問を持たれてしまう。「好きじゃない」まではいいと思うが。
今の正蔵師はかなりの腕達者。弟と同様口調はちっともよくないのだが、これに合わせた喋りを確立した点がすごい。

立川キウイという人も昔から悪目立ちで有名なので、名を出して差し支えなかろう。
私が聴いたのはもう10年ぐらい前だろうか。別に個人的に高座そのものにつき、腹が立って仕方なかったということまではないけど。
といって、感心する要素はない。
こんな人も立川流の広小路亭あたりには今でも顔付けされている。
ちなみにかつて立川雲水が広小路亭の顔付けを担当していた際、キウイを露骨に香盤から外した。
今では雲水本人が立川流の寄席から完全に排除されている。因果応報。

その雲水は、かつて一度だけ遭遇した。ツイッター芸人になる前である。
その際の高座がひどかったわけではないのだが、もう聴く機会はないでしょう。
少ない本業はともかく、ツイッターのネタは本当につまらないなと常に思う。
思想が偏ってるからという以前に、笑いを作ろうとする立ち位置が偏っているからだ。
常に人の上から見下ろすスタイルでは、ギャグ自体が成立しなくなる。
あんなネタ作っておいて、国民的番組をバカにするんだから。

金原亭馬遊という師匠も、同業者から気軽に下手呼ばわりされる人。
確かにそう。
ただ、決して客を不愉快にはしない点は立派なのかもしれない。

ここらへんは、名前を出して差し支えない人。
これ以外は、露骨な営業妨害になりかねない。

私が高座で聴いて、下手だなと感じた人のためにはタグをひとつ作ってある。

私は誰でしょう

名を出さずに、デキの良くなかったことだけ書いてある。一応、プライバシーに配慮して。
好きな演者がたまに悪かったときにはこのタグにはしないから、一度ここに入れた人はなかなか蘇らない。

まあ、近頃は悪い高座はなるべくスルーすることにしている。
ただかつて、それはそれは詳細に書いてしまった人も数人いる。名を出していないのを免罪符に。
さすがに、詳しく書いた人はいまだに売れてない。私にも人並みの鑑賞力はある。
だが、最近はもうちょっとスルーするのが上手くなっていて、必要以上に匿名で批判する情熱は減少している。

TVにも下手な人はたまに出る。
先日、仁鶴一周忌の特番で出たある弟子はびっくりしたな。
客に全然嚙み合っていない高座の状況を、嚙み合っていないことを実況中継しつつますますスベっていった。
偉大な仁鶴にも、ひどい弟子がいたものだ。
上方落語協会会長の仁智師は偉大だと思うけど。

先日、ラジオで久々に聴いた月亭方正師について、大丈夫かと書いた。
その後、よしもとの落語正月特番(テレビ)で再度観た。
この際の「十徳」もどうもいただけないなと思った。だが、繰り返し聴いたが、評価が上下にブレて来ない。
評価も批判もできないままなので、ネタにするのはあきらめた。
ブレてこないというのは、もしかして芸が確立したということなのかもしれない。

作成者: でっち定吉

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3件のコメント

  1. いつも興味深い記事をありがとうございます。
    正蔵師に関しては、以前立川流の某師に批判的な記事を書き、その際正蔵師の精進を取り上げたところ、立川流の信奉者から「クソ面白くもない正蔵と比較する時点で、話にならない」と執拗に書き込まれたことがありました。定吉さんおっしゃるとおり、聞いてもいないのに以前の印象で凝り固まっているのかしらんと。

    ときに、まったくのトピズレですが、小三太という芸名にノスタルジーを感じました。小朝師と同時に真打昇進した、前の小三太師結構好きだったんですが、その後気がついたら廃業されてしまったことを思い出しました。乱文にて失礼します。

    1. 定吉さま、失礼しました。
      前の小三太師は現さん遊師で、別の廃業された方と記憶がゴチャゴチャになっていたようです。申し訳ありません。

    2. いらっしゃいませ。

      個人的な好き嫌いを自覚して書くならいいとして、みんながそう思っていると思い込むのはダメですね。
      正蔵師は、もはや突き抜けましたね。
      かなり早い段階で褒め出したのが堀井憲一郎氏だったと記憶します。
      逆に、故円楽や志らくといった人は随分最近まで正蔵ヘタクソイジリをしてました。

      前の小三太はさん遊師と思ってました。
      ひとりいるとは存じ上げませんでした。

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