Zabu-1グランプリ2023

今日はいよいよ笑点新メンバーの発表ですね。
ちょっと盛り上がり過ぎじゃないのか。いいけどさ。
その前にひとつイベントを。

数えて4回、Zabu-1グランプリ。
4回もやると、変に手慣れてきた。
後ろのビジョンの使い方が、自然になってきた。落語をダイジェストに改造するためにも便利。

昨年は3日にわたって取り上げたのですが、今年は1日だけです。
別にレベルが低いとかではない。ツッコミどころが減りまして。

昨年もその前も、ひとりしか選ばれていなかった落語芸術協会から、今年は3人(茶光、吉好、遊子)。
こんなところにも芸協の躍進が見てとれる。優勝は落語協会の柳家吉緑さんだけど。
落語協会が4人(一花、文吾、雛菊、吉緑)で、立川流と円楽党、上方はゼロ。ただし笑福亭茶光さんが上方落語。
そして、「諸派」であるらむ音さん。イロモノ(色物ではなく)枠かなと。
女性が3人。イマドキではある。
私の通う神田連雀亭に出ているのは、半分(茶光、一花、文吾、吉緑)。出ていない人への遭遇頻度はどうしても少ない。

吉緑さんはさすが若手の二冠(さがみはら、北とぴあ)。
優勝決定戦の「鈴ヶ森」を見ていると、NHK新人落語大賞という最も権威のある賞もいけるんじゃないか。
「紺屋高尾」を出してきたのを見て、いくらなんでも攻めすぎてると思ったのだが、会場の女性たちにはラブロマンスはウケたようだ。
久蔵が高尾花魁に、「町で会ったら久蔵さん元気、と訊いて欲しい」というのはこの人のオリジナルだと思う。
ちなみに「柳家吉緑 鈴ヶ森」で検索すると私の記事が出ます。
この際、マクラでの、本質を貫いた古今亭志ん輔批判にも感心したのだった。

他に感心したのは、「ツンデレ指南」の春風亭吉好さんと、「電話の遊び」の三遊亭遊子さん。
ツンデレ指南、一度ラジオで聴いたことがあったのを思い出した。
「オタク落語のパイオニア」という評価は、わかるけど柳家小ゑん師に失礼かも。
私はあちらの世界にはさほど興味ないが、落語だったら、興味のないジャンルでも全然構わないというのはいつも書いているところ。
そして吉好さん、アイディアの前に落語が上手い。上手くていろいろやっているというのはいい。
真打の披露目、行ってみようかなと思った。オタク落語でもいい。

遊子さん、「電話の遊び」は遊雀師に教わったのだろう。遊子さんとまったく異なる遊雀師の口調をちょっと感じた。
お囃子「太田その」師匠(落語協会)の歌声を褒め、そして司会のDJ KOOと佐久間みなみアナいじり。
いささかやり過ぎだが、でも面白かった。客いじりなど、この手のいたずらの嫌いな私が褒めたくなった。
「保阪」という名が入っていたが、遊子さんの本名。畠山にしておくとさらに面白いのに。
ちなみに、「その」師匠の隣で太鼓叩いているボールドヘッドの前座は、京大出の春風亭いっ休さん。

春風亭一花さんも師匠譲りの「植木のお化け」で喉も披露。非常によかったのだが、落語初心者にわかるはずもなく。
やりたかったのだからこれでいいじゃないか。

笑福亭茶光さんは「ん廻し」で、もしかしたら芸協らしく小遊三型かと思ったら、やはり上方落語なので雀々型(田楽喰い)だった。パンプキンとでんでん虫。
元芸人の過去は本人が嫌なのか、使っていなかった。でもナイツのラジオに出て、ひかりごけ時代を語ってりしてたけどな。

私がいつも褒めている橘家文吾さんは、普通。
古今亭雛菊さんも。
もちろん二人とも上手いけど。

今回、最大にして唯一のツッコミどころが、トップバッターであり、勝ちぬいて決勝に行ったらむ音さん。日系ブラジル人。
初めて聴いた。
かつてこの人、こちらの記事で触れたことがある。記事の終盤にちょっと。
批判したわけじゃないのだが、フリーのまま東京で活躍なんてできるわけないだろと書いたのだ。
師匠(らぶ平・落語協会時代に真打にはなっている)も、古巣に口利いてやればいいじゃないかよと。
なにも、ギルド的なものに飲み込まれろ、そんなことではない。

どんな落語をするのかなと。
まず、口調は非常にいい。
だが創作の面において、やはりフリーランスならではの欠点むき出しだなあと。
Aブロックを勝ち抜いたんだからいいじゃないかって? いやいや。

初天神でシュラスコを出し、時そばでぐるぐるソーセージ(リングイッサ)を出し。
そんな方法論、出すアイテムは違えど、二ツ目が最初手掛ける黄金パターンじゃないか。そして、実によくスベる。
鈴々舎馬るこ師の「糖質制限初天神」ぐらいまで行かないと。
落語を聴いたことのない女性から(相対的な)評価をもらったところでな。
あれで勝負できると思った感性が、つまり業界を知らなすぎるということじゃないかと。
高座に踊りを持ち込んで、破壊すればいいと思ってるその単純さも。
こんなの、とうにやりつくされて草刈り場になってるのに。

いやあ、落語ってやっぱり孤立したらできないもんなのだ。日頃から、刺激を受けていないと創作力がいびつになる。
フリーランスでやるのも、孤立の一種。
両協会に入るとすると今から前座修業をしなきゃいけないが、移籍してやり直している人もいるのだから。
とにかく、このままじゃダメでしょ。
気の毒に思うんですよ、私は。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。