神田連雀亭ワンコイン寄席46(上・三遊亭はらしょうのドキュメンタリー落語)

連休の谷間、24日の連雀亭はなかなかユニークな顔付け。
といっても、世間的に派手なメンバーではないのでつ離れはしていないが。

目当てのひとり、三遊亭仁馬さんはなぜか立って前説。立ってやる人初めて見た。
前回(昨年5月)はボウズだったのに、髪を伸ばしていて誰かと思った。そしてちょっとぽっちゃりしている。

ドキュメンタリー落語 はらしょう
宮戸川 仁馬
狸の化寺 希光

三遊亭はらしょうさんは初めて。
興味はあったのだが、どこかでさりげなく聴きたいなと思っていた。
最近、元天歌さんの裁判を傍聴したりしているそうだが、そんなネタは出ない。

はらしょうさん、袖のない羽織で、あいびきを抱えて登場。
さらに片手にスマホを持っている。これは使わなかったが録音でもしたのだろうか。

師匠・円丈譲りのちゃんちゃんこスタイルなんでしょう。ワッペンはないけど。
そして、声質こそ違うが噺のリズムが師匠そのもので、懐かしくなってしまった。
円丈門下で、師匠に似てる弟子なんて他にひとりもいない。なのに、一度破門され落語協会も退会しているこの人が一番似てるなんて。

私はドキュメンタリー落語、自分の体験談を話しますとのこと。
私の事前の知識はそこまで。これは漫談とどう違うのか、あるいは鶴瓶一門のする「私落語」とはどう違うのか、なにも知らない。
結局のところ、漫談である。楽しい漫談。
ただ、馬風師のやるような練り上げられたものではなく、マクラの延長線。

客を掴むのが実にスピーディで驚いた。私も真っ先に掴まれた。
ここ連雀亭はいいんですよと。
日頃出てるのが東洋館ですから。治安が悪くて。
楽屋ドロボウが出るんですよ。ペペ桜井先生も、ギターと一緒にサイフ抱えて舞台に上がるそうです。

おや、はらしょうさんは東京演芸協会を辞めたと思っていた。
後で調べたら復帰しているようである。

楽屋ドロの話。
一人いるんですよ。この人が出たときには金目のものがなくなるという。
浅草警察にも相談したそうですが、被害額が少額なので内輪で解決してと言われました。
名前出したいんですけど、まだ現役ですからね。75歳ぐらいですが、まだ長生きしそうですし。
でもまあ、いいでしょう。SNSに上げないでくださいよ。
*****です。

私も名前だけは知っている人。
楽屋からも爆笑が聞こえてきた。

実在の楽屋ドロの話が続く。
少人数の寄席でこっそり話されたことを公開するのがよくないなんて「ごくらくらくご」みたいなことを言うつもりはないのだが、マクラじゃなく全部が本編だから、さすがに書けない。

それから、落語界ではなぜか不文律になっているが、実際にはバイトする落語家もいますという話。
はらしょうさんは練馬のスーパーオオゼキで1日3時間半働いているそうだ。もう12年になるとか。
落語界で唯一、バイトしているのを隠さない芸人なんだって。
今日もこのあと(終演を待たず)働きにいくので、これでもう上がりますだって。

最後に神田伯山ネタも。
テレビのドキュメンタリーで楽屋が狭いと悪態付いてましたが、カメラが回ってないときは静かに入るんです。
求められるキャラを意識しすぎる人です。

実に楽しい一席だった。
思いついたことをどんどん被せていくため、自分でもなんの話をしていたのかわからなくなるみたい。
ちょいちょい見失っていた。
ドキュメンタリー落語って、内容じゃなくて高座のスタイルのことじゃないのか。

二番手が三遊亭仁馬さん。
昨年5月にワンコインの予定をすっかり忘れ、慌てて駆けつけトリを取っていた。
その際に聴いた新作落語「多様性」は衝撃の作品だった。
その日は、本来のトリ立川吉笑さんの「ぷるぷる」も聴いたという、贅沢な席でありました。

髪を伸ばしてパーマを掛けた。
楽屋である師匠にいじってもらえるかと思ったら、「お前、太ったな」。
自分の師匠には「モテてえのか」と言われた。
仁馬さんも、バイトしてるんだそうだ。ジムの費用を捻出するためなら、別にいいだろうと。
ネットスーパーで自転車こいでるのだそうだ。クーパンかな。

碁将棋を振って、宮戸川。今日は古典だ。
一席終わっての拍手を聴く限り、さしてウケてはいなかった。
だが、私はかなりよかったと思います。
ウケてなかったっぽいのは、普通に思えたからだと思う。でもそんなこともなかったが。

「他の客がわかってない高座の魅力を語るでっち定吉」
イヤなヤツだな。でも仕方ない。明日語ります。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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