拝鈍亭の橘家圓太郎2(上・一度サゲてから、考え直して続ける「らくだ」)

黒門亭1部の終了後、拝鈍亭の開演5時まで3時間。ブログ書いてたらアッという間だ。
まっすぐ護国寺を目指すなら湯島駅から行くのがよかったのだが、ふらふらして結局秋葉原から日比谷線に乗り、築地・新富町経由での大回り。
頑なに安いルートにこだわりを持つ、貧乏人の面目躍如。まあ、JRで行って池袋駅から歩いてもいいのだけど。

電車で短時間寝たのだが、やはり眠くて圓太郎師の二席目でちょっと意識が飛んじゃった。

圓太郎師の拝鈍亭へは、昨年同時期にもやってきた。
黄金餅と、志ん朝の私生活ネタに衝撃を受けたあれから1年か。
圓太郎師を聴きに先月の座間に遠征したかったのだが、帯状疱疹と止まらないくしゃみで断念したところ。

客は30人ぐらいか。

らくだ(通し)
(仲入り)
蛙茶番

例によってご住職の挨拶からスタート。
圓太郎師匠は5度目の登場です。今日、圓朝ものを頼んでおいたのですが出るでしょうかとのこと。

圓太郎節は今年も掛からない。昨年はCD忘れて鳴らなかったのだが、今回は最初から木鐸(金属製だからこれでいいのかわからない。銅鑼ではない)の音で登場としていたそうで。
登場した圓太郎師、また太っている。
終演の際、次はもっと痩せてきますって言ってた。
おかげで、正座が辛いみたいなのだ。

住職に圓朝ものを頼まれました。先日、朝日新聞に(圓太郎師の圓朝ものへの取り組みを)載せてもらったので、それで。
圓朝もの、よく考えたら去年やってるじゃないですか。
頼んでおいて演目も見てないんですよ。
と和尚の悪口。
だいたいここ、何時開演か、時間も教えてくれないんですよ。
この近所に娘のジムがあって、雨の日はクルマに乗せるんです。その際ちょっとここに寄って、会の予告を覗きました。
でも、私の会はまだ出てませんでした。まあいいや、5時開演のつもりでいればいいやと思ってました。

マクラが結構長くて、25分ぐらいあった。それから確か50分ぐらいでらくだの通し。

見世物として江戸時代人気だったラクダの話。いつも口をくちゃくちゃやって食べ物を発酵させている。
このツバを掛けられると、スカンクもびっくりで大変臭かったと。
らくだねえ。圓朝ものではない。
私、最近ちょっとらくだづいてるのが引っかかる。
でも、本当に見事な一席でした。

らくだの通しとは最初から思っていない。
くず屋と兄貴分の地位が逆転したところで実際、いったんサゲた。なにもおかしくはない。
ところが圓太郎師、どうしましょうかね、仲入り後、続きやりましょうか(拍手)。あともうちょっとなんで。
だが、ちょっと伸び上がってしびれを取り、そのまま続けることにする。
後半は非常にスピーディで、願人坊主を焼こうとするくだりまでとんとん進む。
ちなみに、落合の火屋のおんぼうとくず屋は知り合いではなく、袖の下を渡して焼いてもらう。

どうやら、「圓朝ものを」と頼まれた圓太郎師、なんとなく黄金餅に引きずられたのでしょうか。

圓太郎師は、黄金餅を見てもわかるがグロ描写がわりと平気な人。
菜漬けの樽に押し込む際のバキバキこそなかったが、髪の毛をむしるシーンは入っている。兄貴分がさすがにくず屋を止めている。
グロい噺を普通に語れてしまうというのも不思議な個性である。演者の肚の持ちようひとつなのではないか。
まあそれでも、客の5%ぐらいは脱落しているかも。

らくだの最初に戻ります。
らくだの兄貴分は、名を名乗らなかった気がする。名乗っていても、その後くず屋が名を繰り返すことはない。
兄貴は、あの鼻つまみのらくだよりも、体が一回り大きい。顔には無数のキズが入っていて、見るからに恐ろしい。
くず屋も人一倍気弱というわけでもないようだが、もう逆らえない。
圓太郎師の好きな人なら、大ネタのらくだが未聴でも、くず屋がどんな声出すかわかるんじゃないですか。

大家がらくだに強く出られないのは、人別帳を確認せずに貸してしまったかららしい。らくだの野郎がまた、その不備を突いてくるんだ。
丁寧だ。

丁寧といえば、兄貴がくず屋をこき使う際、自分で行かない理由も入っていた。
「らくだのそばにいてやりたいから」なんだそうだ。そう言われると反論できない。
くず屋と地位が逆転してからは、おなご衆の家にカミソリを借りに行く際、顔が怖すぎるからという理由が付く。

やはりかんかんのうがハイライト。
らくだの大きな体を、豪快に揺すって踊らせる兄貴分。大爆笑。
ここまで動きの派手なかんかんのうは初めて見ました。

後半を結局続けてやったため、マクラ含めて1時間近くの長講だった。
後半も普通にマクラが長く、終演時間は30分オーバーの熱演となった。

後半に続きます

 

作成者: でっち定吉

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