拝鈍亭の橘家圓太郎2(下・「蛙茶番」)

長いらくだの後、「前座もいないんで」と自分で座布団ひっくり返す圓太郎師。
また自分が座るのに、高座返しは必要なのだろうか?

仲入り後、2席目の圓太郎師、まだまだマクラたっぷり。
楽屋で昔のネタ帳を見てました。この会はもともと、小三治師匠の独演会で始まったんですね。
その後の出演者は、遠慮してなのか、「勉強会」にしたりしています。今は、「落語の夕べ」ですか。
ネタ帳と演目から、演者がみな小三治師匠に遠慮している様子がわかるんですよ。
瀧川鯉昇師匠みたいな愉快なおじさんまで。

圓太郎師は、まわりの話から一人だけ脱落していることが多々あるのだと。
入船亭扇橋復活に関して。
以前、入船亭の総領・扇遊師から、俺はもう継がないよと直接聴いていた圓太郎師、そうなると扇辰師が継ぐものと、思い込んでいた。
なので、扇橋襲名のパーティ(寄合かな)に出かけたら、扇辰師の弟子が扇橋になっていて、そこで初めてびっくりしたのだという。

それから先日、先代柳朝の追善興行があり、法事があった。
法事に出てきたお坊さん、臨時の人で、多数の噺家を前にして緊張している。
それでは故人の三十三回忌を執り行いますとお坊さんが話す。緊張して間違えてるのだと思った圓太郎師、「二十三回忌だろ!」とツッコんで、周りにたしなめられる。
先代柳朝は三十三回忌なのだが、三木助追善と間違えて二十三回忌と思い込んでいたのだった。

圓太郎師いわく、法事って素数が多いじゃないですか。3、7、13と来て。
でも33は割れますから、勘違いしまして。

人間、余計なこと言うもんじゃないですと圓太郎師。
今、妹弟子の桃花が寄席(浅草)で、女性ばかり集めて(桃組)やってます。そちらのほうもぜひご贔屓に。
私、桃花にも昔、余計なこと言ったらしいんですよ。全然覚えてないんですが。
桃花の脚を見て、「水戸カントリーのキャディーみたい」って言ったそうです。
それから駅で会ったとき彼女に、「なんだ〇ッチワイフみたいな顔して」って言ったそうで。

寄席の楽屋で余計なことを言いがちなのが、さん喬師です。
さん喬師は一言、余計なことを言ってから、しまったなとは思うらしいです。でもつい言っちゃう。
私は噺を結構、さん喬師に教わってます。私は全然気にならないんですけどね、よく「なんでそんなにさん喬師匠に教わるの」なんて言われますね。

うーん、ゾクゾクします。
水戸カントリーのくだりは、桃花師とキャディーさん、両方に詫びが必要でしょう。
玉の輔師のセクハラは桃花師もよくネタにしてる印象だが、さらに兄弟子も同罪なのだった。
かつて余計なことを女性に言った師匠がたは、どんどん懺悔してネタ化したほうがいいですね。パワハラも同様。
そうしないと、桃花師のほうだって高座でネタにできない。
そしてさん喬師のくだりが面白かった。
人徳者ということになっているさん喬師だが、避ける人も多いらしいことが、圓太郎師の話から端的にうかがえる。
よく白鳥師が、「アジアそば」でもって「お前はなに教なんだ」「やなぎやさん教」なんてネタやって、その後「お前さん喬師匠好きなの? 変わってるね」なんてギャグにしてる。
浅草お茶の間寄席でも。
なんで盟友・喬太郎の師匠にこんなこと言うのかなと思っていたが、楽屋のふるまいに下地があるらしい。

なんだ、でっち定吉は噺家さんの暴露をなんでも書いちゃうのかって? それはマナーとして隠すべきだろう?
なんでさん喬師の批判になる話を書いちゃうのかというと、書かないとむしろアンフェアな気がするのだ。
故・柳家小三治については、性格も高座も好きじゃないので、いろんなネタを仕入れて批判に用いる。
いっぽう、私の好きなさん喬師に忖度して出さないと、心の痛みを覚えるわけである。私は公平なんです。
いいじゃないですか。さん喬派の圓太郎師の語ったことなんだし。
そういえば前回の拝鈍亭でも、圓太郎師は「締め込み」掛けてらした。

まあ、小三治と違ってさん喬師は破門なんてしないもんね。とフォロー。

鹿芝居の話。
芝居に造詣が深く、芝居噺も上手いのに、うちの一門の正雀師は芝居に出るとなぜか下手で。
本人も最近は気づいてて、ぼくが出ると笑われるからねと言ってます。

楽しいマクラの後は、蛙茶番。
最近、珍品のほうにこの噺入れたとたんに続けて聴くな。そんなもんだが。

ちょっとうとうとして、小僧の定吉が半ちゃんを訪ねるあたりから、半ちゃんが緋縮緬のふんどし(本人はそう思ってる)見せつけるところまで飛んだ。
建具屋の半ちゃん、半次っていうんだ。本名初めて聞いた気がする。
いなせな名前ではあるね。

調子に乗って下半身を自慢するあたりを、実に楽しそうにやる圓太郎師。
桃花師にセクハラ発言したくだりも、きっと必要なんでしょう。

青大将が狙ってますとサゲて、なかなか下りない圓太郎師。
噺家に、「今日はよくなかった」などと決して言わないようにしましょう。お客さんと共同作業で作り上げるものなんですから。
開演時にも同じこと言ってたが。別にこの日のデキがよくないなんてことはなかったけど。

圓太郎師、やっぱり面白いよなあ。
グロもエロも、ひそやかにじゃなくて、しっかり語りながら陰惨じゃないし、ムダにいやらしくもないという。
来年も参加したいものです。

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作成者: でっち定吉

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