一之輔が笑点メンバーになるたとえ(伊集院光)

金曜日は朝からニッポン放送で、春風亭一之輔師の「あなたとハッピー」を聴く。
この番組は、原則ゲストというものは出ないのだが、今日は伊集院光が二度目の登場。

オールナイトニッポンの特番に呼ばれたぐらいでは、私の予言「文化放送にもニッポン放送にも、伊集院のレギュラーはできない」はまだ生きていると思っている。
だが、ここに来てなにかしら動きがあるのかもしれない。制作の裏側ではいろいろ綱引きがあるのだろう。

いや、今日はそんなことを書きたかったのではない。
とはいえちょっとは書きたいので、あとに回す。

伊集院が一之輔を評して言う。
「笑点に一之輔さんが出ることの意味は本当に大きいのだが、世間には浸透していないんじゃないか」
一之輔師が、その通りで、少々腹立たしいなんて答える。

このたとえが面白かった。
「笑点は特急券なんだ」
噺家みんなが特急に乗りたいわけじゃない。ゆっくりと各駅停車で(寄席や落語会でコツコツ)やっていくと決めた人もいる。
一之輔も、実際にゆっくり行くと決めていたのに、急に特急のお誘いがきたのだと伊集院。
そして、中堅になってくると笑点というもののすごさもわかってくるので、ますます決意するのが難しくなる。

「伊集院光がこう語った」と、早速どこかの媒体が取り上げそうに思ったが、今のところネットには出てないね。

笑点は特急か。なるほど。
痛い落語好きは、得てして特急を黙殺しようとする。自分たちの乗った各駅停車が駅に停車中、高速で抜かしていく電車が目に入っているのに。

もっとも演者の側にだって、「あんなの電車じゃねえや」みたいなことを言う人はたくさんいたわけで。
呼ばれるはずのない人の中にだって、そんなことを言った人もいたろう。
それは必ずしも強がりというのでもなくて。笑点の恐ろしさがわかったうえでそう言う人もいる。

笑点現メンバー、さらに物故者も、特急に乗る出世をした人が多かったと思う。
中には、特急の速さについていけなかった人もいる。
物故者ではないが、強制的に下車させられた人もいる。下車した駅は、北陸新幹線の安中榛名だった。
駅前にはなにもない。

特急に乗れたのはいいのだけど、たい平師などもう少し、同時に各駅停車に乗っている雰囲気も出して欲しいよなあといつも思っている。
要は本業がもっと上手けりゃという期待です。
私まだ、正蔵師よりもたい平師に落語協会会長を期待してますのでね。正蔵師も実際に就任したらちゃんとやるとは思っているけど。

特急列車に乗っていても、落語の修業はできる。
歌丸師であり、小遊三師であり。
昇太師なんかは逆に、落語で功成遂げて特急に乗り込み、今に至る。

小遊三師なんか笑点と高座のスタイルは似ていて、しかし明確に違う。
こうした人を見ていると、笑点は別競技ではないなと。基礎のトレーニングが同じで、若干本番での筋肉が違う程度のものだと。

一之輔師はどう特急に乗り込んだかというと、「偉そうなことも言っちゃうよオレ、オレなんかが言うからギャグになるんだよね」と。
しかし、早速「一之輔は偉そう」と怒っている笑点ファンも若干はいる様子。
仕方ないと思いますね。
こういう人に、「シャレだから許せ」と言うのはちょっと違う。シャレが許せないという人なわけで、むしろわかるね。

伊集院光のひとフレーズで、いろんなことを想起した。
言葉の強みを知る人だなと、これについては感服した。
私は一之輔師のようなラジオ少年ではなかったから、ラジオの帝王、伊集院光を聴いてきたわけではない。
だが、こんなときに自力を実感したという話。昔から聴いていたら、きっとファンになっていただろう。
たとえの前提となる、理屈がしっかりしている人だからだ。
でも、パワハラについてはやっぱりイヤだね。どんなに仕事に懸命だからといって、むやみに人にキツく当たっていいことにはならない。

伊集院光このラジオの最中、「今求職活動中ですので」だって。
これはシャレではあるが、言葉に出してしまうとシャレでは済まない。
古い因縁のあるニッポン放送でも、頼まれれば出たいということだ。
でも経営サイドからすると、レギュラーではやはり怖いんじゃないか。ファンが放送局じゃなくてパーソナリティの味方につくのも怖い。
予言はまだ撤回しないでおきます。

微妙に話が飛ぶ。
愛人DVで一度放送メディアを追われた桂春蝶が、このところやたら関西メディア(もっぱらABC)に登場している。
先日のなみはや亭でも一席披露していた。
新作落語を掛けていたが、まるで面白くはなかった。絶対に好きになれないモードで聴いてるからではあるけど。
一之輔・吉笑と三人会もやって。
愛人がどうかはさておき、交際相手をボコボコにする噺家は、メディアに出るべきなんでしょうか?

こんな例に比べれば、伊集院光がゲストに来るぐらい、そよ風のようなものではある。

作成者: でっち定吉

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