らっ好さんは、NHK新人落語対象の放映を見ながら、「本命・吉笑」「対抗・わん丈」でひとり、競馬を楽しんでいたらしい。
優勝の事実は一切教えてもらわないのだなと改めて思う。
三遊亭わん丈さんは、吉笑さんさえ不在だったら優勝できていたと思う。
ただし今年から始まった「全国若手落語家選手権」で、吉笑さんを倒して優勝したばかり。
吉笑さんは「一人相撲」を出したという。
昨日書かなかったことを今さら書いてるのは、今日の記事、書くことが少ないのです。
ネタバレを避けるとなると。
さて連雀亭の2番手は、その吉笑さん。
黄色のいつもの着物に緑の袴姿。
いやあ、自分の弱点はヨイショに弱いことでした。知りませんでした。
理屈で生きてる人間だと思ってたんですが、褒められるとダメなんですよ。
(らっ好さんに10万渡した)あれ以来、円楽一門の後輩に会うたびに、すごく褒められるんです。
円楽一門恐るべしです。
本編は、商家の噺。関西弁だ。
東西両方の設定でできるのは器用でいいよな。
今日から奉公に入る丁稚の定吉。ひとりでいろいろと気を揉んでいる。
「ぞおん」かと思ったのだが、違う。
最近渋谷らくごの三題噺企画で作ったばかりの噺らしい。
三題噺というのは、新作を生み出すに実にいい方法のようで。まったく関係のないお題にブリッジを掛ける際に、飛躍が生じるからだろう。
柳家喬太郎師の「母恋くらげ」など、掛け捨てに終わらなかった三題噺。
特に三題噺とされていないよくできた新作落語の中に、少なくともアイディアの段階では三題噺だったのではないかと思われるものも、たまにある。
林家彦いち師の「神々の唄」は、「嘘つき・八幡様・スーザン・ボイル」で生まれたんではないかと。
吉笑さんがもらったお題は「犬・ブッダ・新人研修」だそうな。
なるほど、古典設定なのに「新人研修」という固いことばが入るので、なんだろうなと思った。
三題噺の企画が済んだ以上、変えてもいい気がするが。これは普通のこと。
新人研修から、大店の丁稚奉公に話を持っていく力技。
ブッダも面白い使い方をしていた。教養溢れる吉笑さん、ブッダからすぐに涅槃などにアイディアを広げる。
定吉が大旦那に挨拶しようとすると、応答がない。
意を決して戸を開けると、犬が出てくる。座敷犬らしい。
可愛いなと撫でていると、番頭に見つけられて叱られる。
いっぷう変わった、びっくりするお店で修業を積む定吉。
しかし、手代から悪魔の誘惑を掛けられる。
ちなみに、お題に入っていない「ゆず」も結構重要なアイテムとなる。
定吉は旦那の前に引き出される。
旦那が実によく喋る。驚く定吉。
そして商売とは、という大きな話を長々し出す。
なんだこりゃ、百年目だねと私が思った瞬間、「旦さん、百年目みたいですね」。
しびれるツッコミ。
百年目を知っていなくても問題ない。旦那が急にべらべら喋り出し、違和感を与える。違和感を確立しておいてからツッコむという、実に高度なワザ。
このテクニックはよく考えたら、「一人相撲」でも使っていた。
江戸の相撲の様子を再現して喋る奉公人たち、ことごとく方向性が間違っている。しばらく泳がしておいてから、ツッコミ一撃で全部笑いに変えるのである。
お笑い芸人としては芽が出なくても、落語の中でお笑い手法を使いこなす吉笑さん。
実に楽しい、爆笑落語であったのだが、やはり書けることは少ない。
タイトルである程度ネタバレしている。
大旦那だと思ったら犬旦那という。だが、聴いてるほうは演題なんて知らなかったので。
ずいぶん先の噺だが、戌年の際は引っ張りだこになりそうではある。
犬の噺って少なくて、元犬と、たまに鴻池の犬ばかり聴くことになる。前の戌年には犬の目も聴いたけど。
ついでに書いておくと当ブログ、ついに「定吉」だけで検索に掛かるようになりました。
嬉しいというより、なんだか小僧さんに申しわけない。
7年前に、もうちょっとブログのタイトル考えて付けるんだったかなあと。ただ、結果でっち定吉だからここまで来れたのかもしれない。