神田連雀亭ワンコイン寄席47(上・三遊亭らっ好「子ほめ」)

思い立って神田連雀亭へ。
今月はよく出掛けていて、7席目。
いい席もあったが、外れもあり、極めて不愉快な経験もあり、いささかフラストレーション溜まり気味。

連雀亭はいまだにマスクが義務とのこと。推奨ではなくて、マスクしないと入場不可。
アクリル板があり、世界一パンデミックと縁のなさそうなこの席で、なぜ?
行ってみたら、ビル自体がマスクを義務にしていた。
オーナーの意向みたい。

今日は立川吉笑さんが出るので連雀亭大盛況。女性が多い。
吉笑さん、どこかで「NHK獲りはしたが、前年の桂二葉さんほど売れない」みたいな自虐吐いてた覚えがある。
別の噺家がマクラで言ってたんだったかな。
ともかく、二葉さんは別格であり、吉笑さんもちゃんと売れっ子路線に入っている。

5年振りに聴くトリの人だけイマイチ。期待してたのだが。
決してひどかったわけではない。
古い新作、「旅行日記」だったのだが、この噺を聴くのは三度目。すべて二ツ目。
はっきりしたサゲが付いていて、二ツ目さんがやりたがるのは非常によくわかる。
だが、期待ほど盛り上がらない。今回も。
サゲがグロな以前に、二ツ目さんが掛けても「ご難に遭う快感」が湧いてこないからじゃないかな。
サゲ自体も現代人に不向き。
時代背景を江戸時代にすると、劇的によみがえるんじゃないかと思っている。
あとは演者。昔昔亭桃太郎師が、「春雨宿」のムードでやったらウケると思うのだが。

今日の二ツ目さんは、この噺をいにしえの芸協新作っぽい、くどい演技でやる。サゲ前もそれはそれはタメる。
方法論が真逆ではないか。
過去に聴いた二人の演者ともども、今日の人は「私は誰でしょう」タグにする。
まあ、また聴くつもりはあるけど。

寝ぐせのついた頭で吉笑さんが出て前説。
スマホの音については注意するが、マスクについてはスルー。

冒頭の三遊亭らっ好さんは、子ほめ。
寄席ではいつも引っ張りだこの噺で、前座が出さなかったら真打が掛けたりもする。
だが、連雀亭では珍しい。
2018年にらっ好さんの「子ほめ」を亀戸で聴き、激賞した。
その時は、珍しいクスグリを一切入れない工夫にいたく感心した。
5年経つと、当時のいいムードを保ったまま、クスグリも進化していた。

2022年はらっ好さんを聴いておらず、2年振り。
ヨイショの達人で、私は笑点の若手大喜利向けのキャラだとずっと思っている。出たことは確かあったはず。
ただ、一門ではとむさんが売れ筋なので、もうひとりというわけにはなかなか行くまいが。

マクラは吉笑さんにヨイショした話。
人を誉めるのが上手い人は、上っ面では誉めませんねと。
相手に興味を持たないと伝わりません。
なんてことはない、らっ好人たらしメソッドの紹介だ。
こんな話をしても、不快感ゼロ。まさに達人。

NHK新人落語大賞の予選で、吉笑さんの次に上がったそうだ。
前の吉笑さん、それはウケてたらしい。ただ、無観客で審査員しかいないのに。
らっ好さんの高座では、ひと仕事終えた審査員は飲み食いしてたそうな。
その次は朝枝さんだし。

らっ好さん、吉笑さんに優勝まで行っちゃうんじゃないですか、すごいですよねとヨイショ。
吉笑さん思わず、優勝したら10万円やるよと言ってしまう。
本当にもらっただけでなく、祝賀の落語会にも呼んでもらったそうで。

本編の子ほめに入ると、「タダの酒飲ませろ」から、すでにいい気持ち。
悪態なのに。
人柄としか言えない。
客もヨイショされてる。

「60の人が来たら55、6」を面白いことに、八っつぁんに考えさせる。
応用編まで教わってるのに、40の番頭さんを誉められないのが、フリの効いたとっておきのクスグリ。

番頭さんの前、知らない男に声かけて、しかももう1回捕まえてしまうあたり、客はもう笑いが止まらない。
このあたり、本当に普通なのに。

子ほめの口上は長め。
竹の野郎を怒らせてから口上を途中で一度切って、とっておきのワザを繰り出すあたりからやり直す、地味な工夫。こちらで、お腹を押すくだりを出す。
ただ、赤ん坊のトシを2度訊いてた気がする。
間違えた部分もあったみたいだが、おかしいなと思った人はそれほどいないのでは。

どうみてもタダ、の先があり、よくできたサゲをつける。
本来のサゲで決して手を叩かせないのが見事。
実に自然だからだ。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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