グダグダだっていいじゃないか
タダだもの
さだきち
無料の落語会は平和の象徴。
東京駅丸の内南口、KITTE地下における落語会は3年間開催できなかったが、先月から復活している。
過去2回来ている。1回はネタにならなくて書かなかったけど。
今月は昔昔亭喜太郎さんだ。予定を組んで行ってみる。
無料落語会は最近、カメイドクロックに二度行ったばかり。
ここは運営がいささかテキトーなのだが、怒らない。タダだから。
KITTEグランシェ落語会についてはスタッフは一生懸命やっているのだけども、施設的になんだかなと思う部分がある。でも全然OK。
グランシェはKITTE地下1階の飲食街。ここはフォーラム方面への通り抜けルートになっているので、実質地下街である。
だが、久々に行ってみたら飲食店のかなりが閉店している。ずいぶん寂しくなった。
つ離れするかどうかの人数だったが、開演後どんどん入ってきた。最終的には40人ぐらい?
先週の国立では、中学生の団体と一緒だった。
今回は、落語をまったく知らなくはないとはいえ、たまたまやっていたから来た感じの客たち。
こういうお客さんに合わせて芸人がモードを変えてやるのを見るのが、最近なんだかとても楽しくなってきた。
ちなみに、変なお客はいません。これはコロナ前もそうだった。
変なお客というのは、初心者のことではないのだった。
主催側の挨拶がある。
どうでもいいのだが、挨拶のスタッフ、「~のほう」が多い気がする。
「喜太郎さんのほう、もうすぐ出ていらっしゃいます」
「喜太郎さんは、昔昔亭桃太郎師匠のほうに弟子入りされ」
「ユニットカデンツァのほうで活躍され」
文句じゃないですよ。
喜太郎さんの経歴に、「笑点特大号でもおなじみ」は入っていなかった。
最近、まったく呼ばれなくなってしまったな。頑張ってたのに。
喜太郎さんは黒紋付。
頭を下げると写真撮影が始まる。カメラに向かってピース。
あとで皆さんにも写真撮っていただきましょうと。
A太郎(兄弟子)か。
この会、3年なかったんですよ。
思い出しましたね。このざわざわした感じ。
無料の落語会はいいですね。お客さんは嬉しいです。
私のほうも、意外と無料がいいんですよ。これが6千円する会でしたらね、満足のハードルもグンと上がりますから、こっちの準備も大変ですよ。
政治家秘書のお付きの仕事をしていた話。
昔も入門後も、スリッパを出しお茶を出し、同じ仕事をしている。ただし給金はなくなった。
私の師匠、昔昔亭桃太郎ご存じですか。笑点の昇太師匠の兄弟子で、元々私の師匠が昇太だったんです。
その師匠のセコいお弁当の話。
今浅草で師匠がトリを務めてまして、今日はそこからやってきましたとのこと。
調子よく合わせることもこの世界で大事と振って、ちりとてちん。
この東京シティアイパフォーマンスゾーンというスペースでは、会場内で物販をやっている。
高座のすぐ横に、物販の客がいるのである。客がいるのだから相手をする。
喜太郎さんがカミシモ振ってる横で、接客をしているのだ。気にならないほうがどうかしている。
客の目線がそちらに向いてしまうので、喜太郎さんもやりにくかった様子。
というか、落語をしているすぐ横で、物販ブースで話ができる客の感覚のほうがよくわからぬ。
集中を削がれるのだが、でもそんなのも面白いんじゃないかと。
別に運営に物申す気もないし、また来ると思う。
変な客のおかげで兼好師がまともに聴けなかった両国では、たかだか1,200円支払っただけではらわた煮えくり返らせているので、いかに値段が重要かということだ。
セコイだけじゃないかという気もするが。
ともかく、そんな環境で一生懸命やる演者が面白いのだった。
喜太郎さんのちりとてちん、おかげで集中できなかったのだが、大変な傑作であると思う。
いきなり調子のいい竹さんが隠居に呼ばれて話をしている場面からスタート。こんなの初めて聴いた。
この男の度を越えた調子のよさが、ニンにとても合っている。
そして、口の悪い態度のデカい寅さんも、喜太郎さんのニンに合っている。
とてもマンガチックなんですよね。シチュエーションコメディっぽくもある。
マンガ造形なので、嫌みな様子はしっかり伝わるのに、あまり憎らしくないのが持ち味。なかなかこうはできないのだ。
ちりとてちんはこの時季よく掛かるけど、「偉そうな男を凹ますさま」を、単に順序立てて描いているだけのものも多い気がするのだ。
ちなみに隠居に呼ばれた寅さん、お腹がいっぱいだと言う。
でも、ツイストを踊って食べ物を下に沈める。
「桃太郎一門らしいね」だって。
腐った豆腐を一気に口に入れる寅さんの描写は白眉でありました。
ここで再度ツイストが出るところが上手い。
胃に流し込み、隠居から酒を奪い取るように飲み、ようやくにこやかに戻ったと思う間もなく再度ウグっと来るあたりが、たまらない。
「あ、来るぞ来るぞ、来た」という。客の気持ちにシンクロしてる。
続きます。
後半は、ショート新作3連発だった。