七人の侍2(中・三遊亭鳳志「やかんなめ」取材用撮影のマナーについても)

最前列下手に座る女性は、カメラマンだった。
いきなり写真をパシャパシャ撮るので、冒頭出てきた枝太郎師、釈明していた。
取材なんですよと。
ところがこの女性、実にもって、撮りに撮りまくる。膝立ちで移動し、上手に、そして客席の中ほどに移動して。
さして広くはない会場に鳴り響くシャッター音。
枝太郎師耐えかねて、このぐらいでもういいでしょと女性に声を掛ける。お客さんも気になっちゃってますから。
すみません、打ち合わせ不足でしたと客に詫びる枝太郎師。

確かに気にはなったが、写真撮影を許した時点でこんなこともあると思う。仕事熱心なのだろう。
客のマナーにはうるさい私だが、この件には別に腹立ててない。
職業意識同士が抵触してしまった事例だ。

枝太郎師、どこまでやったかわからなくなっちゃう。
定吉が熊さんを呼びに行く場面から再開するが、もしかするとなにか抜けてるかもしれない。
でもまあ、最適なタイミングで声を掛けたとはいえる。

酒と沢庵の一件を自白する熊さんのくだりも、スピーディ。
熊さん、実は腰抜けなのが早々バレている。
蔵に入ってからもスピーディだ。
質屋蔵はもともとムダ(本当に無駄だというのではもちろんなくて)の多いところが持ち味の噺と思っていたが、こんなやり方もあるのだな。
歌丸師のものは聴いたことがないので比較はできないが。

蔵の中で化け物同士が相撲を取る場面では、土俵の太鼓が鳴る。CDを掛けているのだが。
熊さんも番頭さんもお互い腰が抜けて、抜けましておめでとう。こういうクスグリはしっかり入れる。
サゲもさらっと。
サゲの意味がわからないんじゃないかという気がするが、人の心配しても仕方ない。
この質屋蔵、非常にいい高座でした。
ご本人的にはカメラのおかげでグズグズだったと思ってるかも知れないけども、高座はまさに生き物。

カメラマンの女性は、ここで退場。この人のことは、あとで鯉橋師がいじっていた。

そして仲入りは、圓喬襲名の噂される鳳志師。なんだか髪が長め。
噂といっても、今のところ私が言ってるだけだけど。
ちなみに知らなかったのだが、亡くなった小圓朝師が、圓喬襲名の準備をしていたのだという。
ということは、圓橘門下の弟弟子である萬橘、朝橘に行くほうが筋? ただどちらも「本寸法」ではない。
鳳志師は、鳳楽門下だから筋は違う。でも私はこの人しかいないように思うんだけどな。

鳳志師、襲名のことは何も語らない。語らない人が怪しいんだ。
落語の演目はたくさんあります。500ぐらいあるらしいです。
そのうち250を私は覚えました。まあ、できるのは3つなんですけど。
今日時間間違えて、一番遅れてやってきたんです。
そうしたら、全員ネタ出ししてまして(客は知らない)。

楽生さんは色っぽい噺出しましたでしょ。それから枝太郎さんは商家の噺ですね。
小助六さんは、たぬきの噺を出すそうで、それから鯉橋さんは富の噺だそうです。
そうすると、できる噺ないんですよね。

なんて振って、女性の胃痛「癪」の話へ。
合い薬、まむし指(男性の親指)、男のふんどしで縛って癪を止める話を手短に語り、やかんなめへ。

やかんなめね。
小三治が復刻した噺であり、恐らく喜多八を通じてさまざまに広がった。
芸術協会でも出る。そして円楽党の鳳志師も。

やかんなめはユニークな、ビジュアルも楽しい噺だが、ツボは決まっている。

  1. お武家の楽しい主従関係
  2. お武家様の早飲み込み
  3. 主人思いの女中に漂う人情
  4. お武家様の人助けをした満足と、裏腹な恥辱

ここをしっかり描いておくと、だいたいいい感じになるみたい。
だが、どんな噺でも手短に演じる才能の持主、鳳志師は、早速1を抜く。
家来の可内(べくない)が主人に軽口を叩いても、全部許す関係性を描かずに進めるのだ。
もちろん、笑いっぱなしの可内は後でしっかり描写する。
可内が、笑いを必死にこらえているのを、お武家が「肩が震えている」と見抜くあたり、他の人のやかんなめにはないくだり。

そして2はわりと強調するのだが、3も4も軽い。
軽いからこそ、いい噺だなという満足感が漂うわけであるが。

他にも、独自性があった。
癪を起こしたおかみさんに、いったいどうやってやかん頭を舐めてもらうかというビジュアル。「舐められ方」に迫った人は初めて見た。
いろいろと工夫し、頭の出し具合を悩むお武家。

これは絶品でありました。
誰が何と言っても、私は鳳志師が圓喬でいいです。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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