個人的にたがやにあまり遭遇しない私。
小もんさんのたがや、殿さままでに、ふたりでなく3人斬っちゃうんだなと思いながら聴く。
正当防衛とはいえ人殺しなのだが、小もんさんの醸し出す楽しいムードで、全然血生臭くはない。
両国橋の画が浮かぶとか、そういうことはあまりないが、コミカル仕立てで実に楽しい。
きちんとやって、コミカルになるというのは小もんさんの得難い個性。
とんとんと殿さまの首が飛んでめでたしめでたし。
頭を上げて小もんさん、私は住吉踊り連に参加しておりまして、今年の浅草にも出ます。
持ち時間ももうないんですが、ひとつ踊りを。準備してきましたからね。
赤いステテコを見せて、踊りの準備。袖からブルートゥーススピーカーとスマホを持ってくる。
狭い高座の前でかっぽれを器用に踊っていく。
ところで浅草中席が恒例の住吉踊りだが、顔付け今さらじっくり見て驚いた。
落語協会と芸協の混合みたいなメンバーじゃないですか。二ツ目交互は半分芸協だし、そして雷蔵、とん馬の両師も登場。
昨年も芸協の人は顔付けされていて、それはそれですごいことなのだけども、こんなに多くはない。
革命でも起こったのか。行こうかな。
そういえば池袋の中席は、ずっと務めていた鯉昇師が、弟子の鯉八に譲っている。
今年事件(極めて個人的な話)がなければこっちへ行ったかもしれないなあ。
初めての会なので知らないが、3人ぶっ続けでやるのだ。
トリの入船亭遊京さんが登場。
ここアートスペースプロットは遊京さんの顔で取ってるからなのだろうか。
そういえば次の週10日は遊京さん、今度は阿佐ヶ谷駅北口エンゼルウイングで、夜に独演会。
コーヒーも買っちゃったし、先日聴いた「唐茄子屋政談」ネタ出しだから私は行かないが。
遊京さん、この日はアートスペースプロットで朝も会を開いたそうな。
東京かわら版には出していないが、地域のために親子落語会を。そうしたら、お客は1組の親子だけだったそうで。
お嬢ちゃんは、何も入ってないカバンを開けたり閉めたりしながら聴いていた。帰るときに「楽しかったです」と言ってくれたそうだが。
阿佐ヶ谷のお祭りのほうは、夜が盛り上がりますとのこと。
遊京さんも夏の噺。この時季の大ネタ、鰻の幇間。
私はそれほど好きな噺でもない。
落語には災難を楽しむ性質のものがあると思っている。船徳の客みたいに。
うなたいもそうだと思うのだが、どうしても、騙されるゴールに向かって一直線に向かう構造になってしまう感じ。
喜多八師が繰り返し女中に説教したり、権太楼師がうなぎ屋の子供よしおちゃんを描いたり、一之輔師が鰻に梅干しを付け合わせたりするギャグは楽しいが、実はクスグリに頼らないと噺が持たないのではなかろうか。
かといって、「こんなうなぎ屋はいやだ」みたいなナンセンス色を強めようとしても、うまくいかないだろう。
たいこ持ちの心情のみ打ち出しても、今度はペーソスが強すぎたりして。
実に難しい。
で、遊京さんのもの、これがもう最高でした。高い演出能力に驚嘆である。
どうしても要素が過剰にならざるを得ないこの噺を、引き算で捉える。
といっても、足すところはひっそりと足す。過剰には足さない。
ごく軽めのベースを確立しておいて、その範囲で遊ぶのだ。
この楽しいたいこ持ち、過去に聴いた遊京さんのイメージからは出てこない造形だ。
頑張って作り上げたんだろうなあと。
遊京さんの鰻の幇間は、一八が落語の客を楽しませてくれる噺だ。
仕事として精いっぱいヨイショするたいこ持ちの一八に、陰はない。別に仕事がなくて鬱屈してはいないのだ。
野だいことはいえ、このところまったくボウズということではないらしい。
襟元に縫い付けてある十円札を取り出す際も、別に「故郷の弟が」とかそういう悲惨な要素は出してこない。
芸人やってりゃこんな日もあるさ、というごく軽い描き方。
客の気持ちにマイナスをもたらさず、快だけ残していく。
たぶん後日、シャレだよ許せと祝儀がたんまり出る、気がする。
そんな余韻を残す。
街でふらりと出逢う浴衣の旦那も、その存在感はごく軽い。
一八に向かって、過剰に謎を掛けたりしない。本当はどこの誰だかわからない芸人に向かって、わからないのを見抜いて意地悪するでもない。
噺のアクセントをとことん少なくする中、座敷で遊んでいる家の子こうちゃん(だったかな)が噺に爪痕、というか足あとを残す。
こうちゃんはすぐ追い出されるが、こうちゃんの去った後で、卓に足あとがべったり残されているのだった。
騙されたと知った一八、不揃いのおちょこに文句をつけ、固いうなぎに、薄くできるだけ切った漬物に次々文句をつけ。
しかし酒についてはケチは付けていなかった記憶。
確かに、旦那が帰ったと知って追加でお銚子を頼んでいるのである。これで酒にケチを付けるのはおかしいと、私も前から疑問に思っていた。
以前から上手い人だが、一皮剥けたと思う。
抜擢される新真打の影に、すごい人がいるのです。
いずれ必ずブレイクする人である。
暑い日の、満足な夏の噺3席でした。
〉池袋の中席は、ずっと務めていた鯉昇師が、弟子の鯉八に譲っている
ちなみに浅草上席の夜トリもこの時期はいつも務められてた笑游師ではなくて弟子の小笑師になってますね。
世代交代?というには早すぎでしょうけど。
いらっしゃいませ。
ホントだ。6日から浅草夜トリ小笑師ですね。気づきませんでした。
トリネタ持ってるのかしら、なんて余計なお世話ですね。