東京には4つの寄席がある。
- 鈴本演芸場
- 新宿末廣亭
- 浅草演芸ホール
- 池袋演芸場
もうひとつ、21日以降の下席がないので「寄席」として扱われない場合が多いが、4つの寄席に準じた
- 国立演芸場
がある。
その他、国立演芸場を寄席に入れるなら、一緒に入れてもいいと思う席がある。
- お江戸日本橋亭
- お江戸上野広小路亭
- お江戸両国亭
など。
落語の詳しくない人に知られているのは、クラシカルな外観が目を惹く末廣亭か。
本当に古いんだけど。
末廣亭の桟敷席などいいものだけど、お客は一見さんが多い。
一見さんは変なところで笑う。
私が一番好きなのは、池袋演芸場だ。
「客が来ない」のがお約束ネタの寄席だが、平日でも本当にガラガラだったという経験はそれほどない。
特徴は、次のとおり。
- 深い
- 狭い
- 濃い
深い、というのは地下2階 にあるからだ。
噺家さんがよく、「池袋秘密倶楽部へようこそ」って言ってる。
狭い、のも確かだが、びっくりするほど狭いわけでもない。上に挙げたお江戸○○亭などのほうがよほど狭い。
それでも「狭い」感覚がぬぐえないのは、客席の奥行きより、高座に面した側のほうが長いからだ。
劇場というのは、普通の間隔では逆で、奥行きのほうが長いものである。
この狭い寄席に行くたび、最大で何人入るのだろう、これだけの客が木戸銭を払ったとして、噺家さんに渡るワリはいくらだろうと考えてしまう。
たぶんギュウギュウに詰め込んだら200人くらい入るのではないか。
ワリのほうは、噺家さんは決してそれで生活しているわけではないのであまり気にしないことにしている。落語を知らない人は驚くでしょうが、事実です。
最後に、濃い。
なぜこの寄席が好きかというと、他の寄席とはお客がまったく違うからだ。
「一度生で落語を聴いてみたいと思って、うちのある上福岡から一番近いのでここに来た」
という方も、まあいなくはないだろうが、そういう人は少なめ。
池袋のファンは、濃い。
聞き飽きたネタには反応しない。あからさまに無視、というのではなく、きっといちいち笑うのが面倒くさいのだ。
噺家さんもわかっているから、楽屋ネタを振ったりする。そうするとちゃんと客が笑う。
「俺はわかってるぜ」の自慢笑いも聞こえてこなくはないが。
紙切りという演芸がある。お客のリクエストに応じて紙を切って絵を作る、いかにも寄席に来た気分にさせてくれる芸だ。
紙を切りながらおしゃべりをするが、芸の性質上、話す内容は毎回ほとんど同じである。
しかし、池袋の客は聴き飽きているのでそうそう反応しない。
仕方ないので、紙切り芸人さんも通常しないトークを始めるのである。
わかっている客と、デキるな、と次の手を繰り出す噺家。
このせめぎあいが時として異様な熱気を生むのである。
池袋の21日以降の公演(下席)は、通常より遅い2時スタートで、その分2,000円と安い。
主任の古今亭菊太楼師匠はあまり聴いたことがないのだが、一日くらいは行きたいものです。