カメイドクロック落語会4(三遊亭好二郎「お化け長屋」)

無料落語愛好家のでっち定吉です。
今日はカメイドクロック落語会。前回、2週間前はついQBハウスに入ってしまい、間に合わなんだ。
今日はそんなことないのだが、家の都合で11時開始の第1部は間に合わず、13時開始の第2部のみ。
タダとはいえ、30分の落語をわざわざ聴きにいくほど亀戸は近くじゃないのだが。
でも、三遊亭好二郎さんの「お化け長屋」それもフルVer.が聴けて幸せです。

秋風もようやく吹くようになったと思いきや、昨日からはもう真夏アゲイン。
その割にはまあまあ人が集まってきている。家にいるよりカメクロのほうが居心地よかろう。

好二郎さん、待ってましたの声を受けて、終わってから待ってましただと困りますと返す。
客席からゴオーという恐怖の声が聞こえてくる噺家怪談から、陰陽に円山応挙、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」など。
お菊の皿かなと思ったが、いきなり長屋の住人が空き店について話している。
お化け長屋だ。
決して珍品というほどでもないが、でも聴かないな。もっとやって欲しいけど。
円楽党でも聴いたことがない。好二郎さんはずいぶんあちこちから噺を仕入れるみたい。
ラッキー。
(※ 広告張る段になって、師匠の持ちネタと気づきました)

好二郎さんは、固いのが魅力の人だと思っている。さむらいの噺とか。
でもお化け長屋には固いところはひとつもない。ふざけた人たちのふざけた噺。
でも、ふざけた噺も面白い。マジメにふざけると面白いこともある。

やはりちょいちょい細かい工夫をするのがいい。
入居志願者に「古狸の杢兵衛さん」と呼ばれる杢さんだが、「面と向かって言われたのは初めてだ」なんてつぶやかず、ちゃんと返事をしている。
ただ、ハッキリ言う人だねと。

杢さんの語る架空の後家殺人が、まさにマジメにふざける感じ。
入居志願者がビビっているのを引き止めて畳み掛けていく。

二人目の入居志願者はガラッパチ。
杢兵衛さん会心の怪談にいちいち茶々を入れていく、動じない男。
怪談はすっかりグズグズ。
私の知ってるお化け長屋では、杢さんが半泣きになってしまうのだが、そうではない。
男が「もっと手短に、陽気にやれ」と指示するので、その通り明るく軽い怪談を語らせられるのだ。
ある意味、創作者としてはこれはさらにツラいぞ。
そして男、強盗が後家さんの胸元に手を突っ込むあたりで、なぜかいきなりカミシモ振ってひとりで落語を始めてしまう。
落語の客がなにが起こったかわからないうちに入ってしまう劇中落語、これはかなり面白い。
後家さんが、抵抗するかと思いきや、強盗がいい男なので積極的に誘うというエロ噺。

ようやくひとり語りを止めた杢兵衛さん、「どこまでやったかわかんなくなっちゃったじゃないですか」。
これはまさに、高座に袖から乱入されたり、携帯電話が鳴って注意したり、客席で喧嘩が起きたりしたときの噺家のセリフだ。
虚実二重写しになって笑った。
やはり好二郎さんは、創作力に優れた人。もともと人のアイディアによるものだとしても、その信頼は揺るがない。

ここまでやって25分ぐらい。
仕方ないから杢さんと木戸口の男、家賃折半して払おうかなんていうところでサゲると思った。それが普通だろう。
だが、終わらない。
存在だけかろうじて知っていた、長屋に本当にお化けを出してしまおうという企みに進む。
おお、ますますラッキー。
長屋の役割分担と、その結果。

  • ジョウロで水を掛ける(水入れるのを忘れて口でやる)
  • 鐘(ゴンゴンゴオーンとやたら鳴らす)
  • 笛(借りられなかったのでほら貝)
  • 太鼓(陽気にドンドンカッ)
  • 音もなく開く障子(腕のあるところを見せようと何度もやる)
  • 幽霊(女が夕涼みで出払っているので80越えの婆さん)

よく考えたら全員勝手なプレイでもって大失敗なのだが、ガラッパチ男は実は気が弱く、勝手に怖がって逃げ出してしまう。

なるほど、初めて聴いたくだりだが、実に楽しい。
用意をことごとく間違ってしまうのは「不動坊」だが、不動坊では失敗するのに、お化け長屋は成功してしまう。
長屋の住人が協力して敵を倒す、集団コメディなのであった。
最後どさくさに紛れてにっくき大家もやっつける。

時間はちょっとオーバーして終演。実に満足です。
次回は9月6日で、この日もまた好二郎さんらしい。
その後、兼矢、好青年、好好なども出演予定。
好楽一門ばっかりだね。

30分でもわざわざやってきて正解でした。
また来ます。

(追記)
家帰って師匠のものを聴きました。ほぼ踏襲しているが、それはそれでいい。
むしろ、好二郎さんが師匠と同じにやるのが珍しい気がする。
ただサゲは自分で変えていた。

作成者: でっち定吉

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