続いて三遊亭竜楽師。
竜楽師は35分ぐらい語っていたので、若干マクラがカットされる模様。本編は短めなのでそのまま流れるだろう。
最近では外国人の噺家もいましてと。関西には前からいたんですが、東京にも好楽師の弟子にスウェーデン人がいます。
私はこの好青年さんとユニットを組んで、外国語落語を演じています。
英語落語をやる人はいますけど、私は現地の言葉でやります。英仏独伊西。
それぞれの言語でやるときの客の反応の違いを語る。
そして、ネタ出し親子酒のフリとして各国ごとの酔っ払いのありよう。
イタリア人は陽気だが、酒より話をするほうが好き。フランス人、特にパリの人は飲まないし、笑わない。
一番お酒(ビール)が好きなのはドイツ人。
ああ、久々のマクラだ。
かつてこの師匠に惹かれていったその感覚がよみがえってきた。
海外での落語、そして酒の話ができる人なんていないわけで。
そして、かなりウケていた。
竜楽師を見出した日本の話芸スタッフも鼻高々であろう。
師の親子酒は、私は過去三度聴いている。
ずいぶん短くなった感じがする。2019年、三度のうち最後に聴いたものがすでに短めだったと書き残しているので、徐々に変えてきたのだろう。
今回は特に、鉄板マクラに注力する方針だったみたい。
猫婆アのおかみさんが猫を放すシーンにいつも感心していたのだが、なくなっていたかもしれない。なきゃないでいいんだけど。
大旦那がかみさんに謎を掛けるのも、酔っ払うのも手短かである。
せがれの独白もそう。徹底的に刈り込んできている。
みんな知ってる噺だが、本編もまたかなりウケていた。
これなら竜楽師、今後定期的に日本の話芸に入ることと思われる。定期的、といっても年1回あれば十分すごいが。
3年ぶり、というのは懐かしがるほど長い時間ではないのだが、落語を聴くにあたっての「感覚」が一緒によみがえってきて、とても懐かしかった。
個人的にはだが竜楽師、広小路亭のしのばず寄席に顔付けされたら行きたいなと思った。
最後は権太楼師。
仲入り休憩が入るところだと思うのだけど、そんなものはなく収録はどんどん続く。
権太楼師は、寄席ではいつもやってるが、夢グループのCMをいじる。
そして文珍師と同じく、「このふたりは、デキてます」。
夢グループ、客にバカウケ。それはそれは、恐ろしくウケていた。
NHKでも流すのかというと、そんなことはなくて、あくまでも客へのご褒美。
これからちゃんとへっつい幽霊やりますのでと権太楼師。今までのマクラは皆さんだけの楽しみです。
まあ、確かに30分でへっつい幽霊をやるのはなかなかキツい。
「へっつい」がなんなのか、東京の下町出身の権太楼師にはずっとわからなかった。親も知らないと振って。
北区滝野川が下町かどうかは知らないが。
私、やっと認識した。へっつい幽霊、好きじゃないや。
いつも書いてることだけども、この噺はムダが多すぎる。
もちろん、落語はムダを楽しむものだ。最近聴いたのでも、上方落語の「仔猫」など、ムダな部分が一番面白い。あと質屋蔵。
いっぽうへっつい幽霊は、構成にムダがあっていけない気がする。洗練されていない上方ダネ、という感じ。
道具屋から、熊さんと若旦那、そして300両スッカラカンと金策、幽霊との対峙と、場面が変わりすぎる。
しかも、若旦那のうちから博打うち熊さんのうちへと、へっついの置かれる場所も違う。
やはり、若旦那の出てこないバージョンが好きだ。
つい最近、さらに新たなバージョンを柳家圭花さんから聴いた。
若旦那が出ないどころか、へっついを熊さんが手に入れるまでのくだりが実に短い。明らかに、ダレ気味のへっつい幽霊に対する疑問があるのだろう。
既存のへっつい幽霊、各場面にいちいち意味を持たせないとならないとなると、ギャグを入れることになるが、さらに間延びしてしまう。
たとえば権太楼師は、吉原で散在してくる若旦那の、楽しみを描く。花魁につねつねされて、いたーい。幽霊が出てきているのにこれをやっている。
もちろん面白いんだけど。
権太楼師のものは、協会が違うが小遊三師のものと非常によく似ている。
ただ小遊三師のほうが、長い噺をまっすぐ進めるだけに気持ちよかったなと。
そんなわけで、ちょっとくたびれてしまいました。
だが、日本の話芸の本放送(12月末だそうです)の際には、実にうまいこと編集されて見事なデキになっているに違いない。
それも立派な仕事だと思いますよ。
堀井憲一郎氏は落語はライブにしか存在しないと言う。
一理はあるけども、編集されたものもまた落語だ。別にいいさ。
終演後、NHKからアンケートの依頼が来た。
色物さんも入れたらどうでしょうと書いておいた。
でも、一緒に演芸図鑑の収録ってわけにはなかなかいかないかな。客席のモードが違いすぎるから。