日本の話芸収録東京落語会(上・桃月庵白酒「厩火事」)

日本の話芸(東京・落語)を収録する東京落語会は、(初代)ニッショーホールのいったん閉鎖に伴い、ジプシーとなった。
最近はNHKでの非公開収録が続いていたが、これは会場が確保できなかったためかどうかわからない。
9月1日、ルネこだいらでの公開収録に応募したら当たったので、観にいってきました。
受信料払ってるんだからたまにはこんなご褒美もよかろう。

今回のメンバーは、柳家権太楼、三遊亭竜楽、桃月庵白酒の各師。
白酒師も初だと思うが、ベテランの三遊亭竜楽師が日本の話芸に登場である。かつての円楽師の枠を譲り受けたものと推測する。
竜楽師、個人的に本当にご無沙汰。
2017年から2020年に掛け、私は竜楽師を実に21席聴いている。改めてその数にびっくりした。
3年みっちり聴いて、その後3年ご無沙汰。コロナとはまるで関係ない。
最近はもっぱら好楽師を聴きに円楽党に通っているが、この団体の最初のとっかかりは、実は竜楽師だったのだ。
それだけ数多く聴いていて、なぜご無沙汰しているか。
「江戸しぐさ」のせいである。
架空のマナー体系、江戸しぐさのインチキ振りがあるとき唐突に話題になった。
一度は教科書にも載った江戸しぐさだが、ネガキャンが功を奏し、瞬く間に勢力を喪った。
これは当たり前の帰結なので、いいとする。
それはそうと私が聴きに通った竜楽師は、古くより江戸しぐさに協力していたのだった。
それに気づく前に、江戸しぐさのあまりのトンデモな面白さを当ブログでも揶揄してしまった。
それ以来、なんとなく遠ざけてしまって今に至る。
円楽党(両国・亀戸)は顔付けが毎日違うから、特定の師匠を避けることは、いや強く避けなくても余裕なのだった。

その後、志らくがテレビで江戸しぐさを持ち上げ大恥をかいておきながら開き直ったという馬鹿げた事件もあり、デタラメ歴史である江戸しぐさは、ほぼ滅んだようである。
江戸しぐさにとっては、志らくが持ち上げたのこそいいツラの皮であった。
ともかく、今回、竜楽師と再会する機会が訪れた。

夕方小平へ。
ルネこだいらは落語会を多く開催しているホールだが、初めてだ。1,000円の平日昼間の会があったりするので、しばしば検討はしているが。
立派なホール。
小平と言えば、金曜あなたとハッピー常連投稿者の高校生、「小平のユウキ」から投稿がなかったということで、ラジオ界はちょっとザワついているのだった。

開演15分前に前説が入る。
それから、小平市長の挨拶。なんでもこの会は、ルネこだいらの30周年記念らしい。
最後にディレクターが出て拍手の練習。練習というか、この拍手を本放送に被せて使うことでもあるのだろうか。

本膳(収録なし) 伸ぴん
厩火事(ネタ出し) 白酒
親子酒(ネタ出し) 竜楽
へっつい幽霊(ネタ出し) 権太楼

 

収録だから仕方ないことだけど、大ネタ3連発はちょっとしんどい感もありました。
寄席や落語会では絶対にない構成なので、こちらも慣れていないのだ。

開口一番として前座が登場。
桂伸ぴんさん。芸協の前座香盤ではもう2番目にいるが、私は初めて。
名前がしんぴんなだけに、早く中古になりたいと思います。
なんと本膳。ただでさえ珍しい噺なのに、前座がやるという。
決してやりすぎない、上手い人だ。
鼻の頭にごはんつぶ3つとかマンガチックな噺だから、やりすぎても不思議はないが。
しかし、収録のために客席をあっためるという役割が、本膳で果たせたのだろうか?

ここから収録開始。
伸ぴんさんがあいびきを持ってきて据え付ける。
時間計ってたのだが、一番手の白酒師はきっちり25分で下りてきた。つまり、ほぼカットなし。
冒頭の一言が2分、そして最後に番宣CMを30秒入れればぴったり。
ふくらはぎを痛めてしまいましてと白酒師。歩きスマホの人が階段で急に立ち止まったので、捻ってしまった。
決して太ってるからではないのです。

白酒師は、2年振り。
追いかけてはいないが、聴けば絶対に強烈な印象を残してくれる人だ。
NHKでも臆せず毒舌。いや、具体的な誰かをdisってるわけではないのだから、むしろ抑え気味なのかもしれないが。

カット部分がないから、あまり詳しく書くのは気が引ける。オンエア本番を楽しみにしていただければ。
確か10月23日放映と言ってた気がする。
ともかくこの人の厩火事は、兼好師と並ぶ爆笑ものだ。わりと似ている。
湿り気を一切取り払うことにより、逆に夫婦の情愛を浮かび上がらせる離れ業。
白酒師のお咲さんが、一番楽しい人なのではないかな。
お咲さんは茶々を入れ通しで絶対にウザい人なのだけど、白酒師のお咲さんはウザいのに楽しい。
お咲さんをフィーチャーするがゆえに、仲人の旦那は記号的。ただしいつもいつも訪ねてきたら迷惑だとはハッキリ言っている。
珍しいなと思ったのは、ヒモ亭主は腕のある職人なんだそうだ。腕はあるけどぶらぶらしてる。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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