前座香盤6人抜きの怪(春風亭貫いち)

昨日は落語会に行ってきたので、本来そちらのレビューをするところなのですが。
気になって仕方ないのでひとつ割り込みます。

昨日は9月1日。新学期だから当たり前だが小学生も登校していった。
ともかくひとつの区切りであり、三遊亭天歌改め吉原馬雀さんが落語協会の香盤に復帰するんじゃないかと。
昨日早速記事にしたが(アクセス多いです)、結局は復帰しているようなしていないような状態である。
想像の域を出ないのだが、どうやら香盤が変わるのだろう。
香盤が下がったとして、それをペナルティと考えるべきかどうかはわからないが、彼にペナルティを与えたがっている人がいても驚きはしない。
しかし、記事を書いた際には検索窓で引っ掛からなかったのに、アップ後ヒットするようになっていて、これは面白かった。

落語協会の二ツ目香盤を、そんなわけで昨日はずっとウォッチしていた。
となると、前座の香盤も自然と見ることになる。おやと思った。

前座のトップが、春風亭貫いちさんになっている。一之輔師の四番弟子。
パッと見不自然である。三番弟子のいっ休さんの上に、弟弟子がいるからだ。
どういうこと?
恐らく昨日、突然こうなったのだ。落語協会のWikipedia、「所属会員」の欄にも変動がない。
Wikipediaはきちんと管理している人がいるものだ。
以前、柳家小ごとさんが廃業し、香盤から消えた際、消えた人が誰かわからなかったのでWikipediaに頼った。
この際も迅速に仕事がされていて、落語協会公表の香盤と同じになっていたが、古いバージョンを見れば一目瞭然。
しかし今回はただちに連動してはおらず、公表された香盤とズレが生じている。

貫いちさん、Wikipediaと照らし合わせると「6人抜き」で香盤トップに立ったことになる。
こんなの見たことありません。
○人抜いて入れ替わるなら、抜擢で昇進する場合というのが普通。
もっとも、「二ツ目抜擢」(他の前座を抜いて二ツ目に昇進)だって長らくなかったはず。
フィクションの昭和元禄落語心中では、与太郎の血のつながらない息子の信之介が、10人抜きで二ツ目に昇進しているが、現実との違和感は大きい。
落語界の共通認識として、前座はしっかり務め上げなさいというのがあると思うのだ。処遇に差をつけるなら真打昇進時でいい。

今回は、先輩を抜いて二ツ目に昇進したわけでもないので、さらにうろたえている。
過去にこんなのあったのだろうか? 私は知らない。
今後、先に二ツ目に昇進はするのだろう。

抜かれた人は次の通り。

  • 春風亭 いっ休
  • 鈴々舎 美馬
  • 柳亭 左ん坊
  • 三遊亭 まんと
  • 入船亭 扇ぱい
  • 金原亭 駒平

この6人抜きに関する情報はなにひとつない。
なにもわからないまま書いている当ブログが第1号ということになる。
ツイッターことXを読んでも、31日の余一会でもって貫いちさんが「木日土金水」という珍しい根問ものを掛けたとことしか書いてない。

さっぱりわからないが、前座会の会長にでもなった?
もっとも前座会の会長は前座香盤トップになるなんてルールもないと思う。むしろ逆で、年功序列で香盤トップになった前座が会長を務めるものだろう。

貫いちさんは上手い前座だし、私も世間に推している。
もっとも、「天才前座出現」と思ったわけでもないけれど。
前座というもの、上手くても師匠に言われた通り、堅実に高座を務め上げている人が多い。だから真の実力まではわからない。
あくまでも勝負は二ツ目になってからだ。
抜かれた中で私が一番期待しているのは柳亭左ん坊さんだが、彼だってまた前座らしい高座を務めている。
左ん坊さんと貫いちさんの現時点での比較をしたところで、さして意味はない。

噺家にとって香盤は命である。年功序列で決まっているものだが、時として順番に変動がある。
抜擢真打が出たりすると、抜かれた側にとっては激しい感情を呼び起こすこともある。
香盤が大事なのは芸術協会も同様。
移籍してきた三遊亭遊雀、立川談幸という師匠は、キャリアからするととても変な位置に香盤がある。
芸協入会時点で決まっているのだった。
だからといって「アニさん」という敬称で呼ばれていたものが、急に対等になるとかそういうことではないけれど。

桂しん華、春風亭かけ橋、桂ちづ子の3人は落語協会を辞めてから再度入門していて、当初のキャリアがリセットされている。
にもかかわらず、本当になかったことになっているわけではない。
本来アネさん、アニさんだったのにあえてけじめのために後輩扱いしなければならないことなどあるようだ。

香盤については先の例を引いていくらでも語れるが、さすがに前例がないものについてはこれ以上なんとも言えません。

(2023/9/3追記)

朝確認したら、前座香盤、元に戻っていました。
結論としては「ただの間違い」のようです。
落語協会らしい話だなあと。
ネタとして保存しておきます。

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. 落語協会を辞めて芸協に再入門された方ですと、瀧川鯉昇師のお弟子さんの瀧川鯉三郎さんも、四代目三遊亭圓歌師の四番弟子の三遊亭歌りんさんだったのでは?記憶違いだったらゴメンなさい。

    1. 情報ありがとうございます。知りませんでした。
      Wikipediaの三遊亭圓歌の項に書いてますね。
      ただ、黒歴史で恐らくそこにも載せちゃいけない内容の気はしますけど。
      被害者の会を結成すればいいのに。

  2. 今落語協会のサイトを見たら、馬雀さんは二つ目の一覧のなな子さんとつる子さんの間に掲載されてましたね。

    貫いちさんの6人抜きは謎ですが、いっ休さんや美馬さんらの11月上席からの二つ目昇進は既に発表されているので、単なるミスなのかと愚考しますがどうなんでしょう?

    1. そうですね。左ん坊さんまでの3人は、失念してましたがすでに昇進発表されてましたね。
      ただ、あとの3人は?
      ただの間違いなんでしょうか。
      だとしても面白いではないですか。
      馬雀さんは、やはり香盤サゲですね。
      いろいろ言われそうですが、このぐらいなら嫌がらせではなさそうです。

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