若手の大喜利が全員落語協会員だった / 上方落語をきく会2024

笑点特大号を観たら、若手の大喜利があった。
若手大喜利でも女流大喜利でもない。お絵かき大喜利。
メンバーを確認したら、こう。
下手から。

  • (司会)林家たい平
  • 春風亭いっ休
  • 春風亭一花
  • 春風亭柳枝
  • 林家けい木
  • 柳家わさび
  • 古今亭雛菊
  • (座布団運び)柳家小ふね

なんと全員、落語協会。司会と座布団運びまで。
一般の笑点視聴者は、噺家の所属協会なんてそんなに日頃から気にしてはいないかもしれない。
私は顔を見た瞬間、瞬時に所属協会、師匠までワンセットで認識する。これはこれでまた、落語好きとしてはある種普通のことと思う。
まず春風亭が3人出て、みんな落語協会か。しかも同じ一門だなと思ったらなおも次々協会員が出てきて、これはのけぞった。

過去にこんなのあった? たぶんないと思う。
絵が上手い人が、協会にしかいなかった?
司会のたい平師は美大で、これはまあ当然の人選。
それにしても極端だ。
落語協会の底力に感心するところなのだろうか?

笑点にあまり縁のない、柳枝師が大活躍していた。
これは木久扇師の後釜? いや、急すぎてないと思うけど。
柳枝師は大喜利得意らしい。絵も本当に上手い。
この大喜利、往年のお笑いマンガ道場みたいなゆるさが漂い、なかなか楽しいものだった。
カピバラネタも出てたし。
第2回のある企画だと思うが、メンバーが偏りすぎてる点だけはやはり気にはなる。
実は、木久扇師の後任が芸協から出るにあたっての、バーターだったりして。バーターとしては釣り合わないけど。

話はとめどなく飛ぶ。
芸術協会所属の柳亭小痴楽師も、笑点メンバーになっておかしな人ではない。向いてるとも思う。
その小痴楽師がドラマ「さよならマエストロ」に出ていて、なかなか検索訪問が多かった。
「日曜劇場 落語家」なんて、ドラマのタイトルすらわからないテキトーな検索だってちゃんとヒットする。
ドラマのほうは、別に数字がいいわけでもないようだ。
だが、日曜に見た回も、わりと面白かった。
明らかに展開に起伏がないのだけど、でもこんな落語の人情噺ってよくあるよねと思う。
展開の代わりに悪目立ちする要素を入れたりしなければ、余計な部分で引っかからずに結構楽しめるのである。

日曜はABCラジオで、「上方落語をきく会」があった。
昼の部は生放送で。夜の部は翌日タイムフリーで聴いた。全部カバーした。
特に夜の部、もう一度聴きたいなと思うともう配信期限切れなのだけど。でも構わない。
いずれなみはや亭で順次流れる。だから録音はしなくてもいい。
昨年は桂二葉さんが、そしてその前は、高座に上がった後で笑福亭羽光師が大きな話題になった。
今年はそんな派手さはまるでなかったが、でも楽しいものであった。
私はもともと、「落語に東西の区別はない」と主張しているが、それにしても今回のメンバー、全員にほぼ馴染みがある。

一番印象が強かったのが、桂かい枝師の新作落語「ひまわり」。
ストーカーに命を救われるというバカ落語。私が新作落語に強く求めてやまない「飛躍」の要素も濃厚にあり。
もちろん演者の魅力が大きい。なみはや亭でやっていた、小佐田定雄先生の「屁臭最中(へくさのさいちゅう)」という、タイトルだけ掘り起こした「古墳落語」もいいものだったし。
だが本当にいい新作落語については作品の価値が背後から立ち上ってくる気がする。
作者の石山悦子さんという人は、落語協会の新作落語台本募集でも名前を見かける方だ。
今年の池袋下席新作台本まつりの千秋楽3月30日に、林家彦いち師の「もてる」が出る。
聴いたことないので、この日行ってみようか。
浅草お茶の間寄席で流れた桂右團治師の「完全マスター」という作品も、この作家さんだそうで。
私も今年の台本募集に出したいアイディアだけ一本あるのだが、仕上がるかしら。

もともとこの会に、実際に行こうかと思った。
冷静に考えると、どんなにいい会であったとしても、ラジオで聴けるという点、結果的に価値が下がる。
なのでやめたが、それでも3月に一度、今週末あたりに大阪行ってこようかとも考えたのだった。
しっかり検討し、やめた理由ははっきりしている。
大阪にわざわざ行くぐらいなら、近所で落語聴けばいいやと思ったのだ。
東京のほうが価値が高いなどと言ってるのではない。日頃から東西完全に同じだと認識しているがゆえに、あえて遠征する必要性がなくなってしまうのである。

ただ、西の人も東京では聴いていく。今回のメンバーも、文珍、松喬、銀瓶、佐ん吉、慶治朗、笑利と実際に聴いている。全12人の半分である。
南天、吉弥、鉄瓶といった人もじきに聴く機会が巡ってくるだろう。
最近は土曜日、ナイツのちゃきちゃき大放送をやめて、吉弥師のラジオを聴いている。
堀井憲一郎師は、落語は土地のものだ(から上方落語家を東京で聴いても無意味)なんて言うが、そうは全然思わない。
慣れ親しんでいる人が上京してくるのをお待ちしております。

作成者: でっち定吉

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