新宿末広亭5(上・月亭太遊「山城ヨチムーランド」)

家族から解放された金曜日、どこか出かけたい。できれば禁断の夜に。
これがまあ、行き先がよりどりみどり海老名美どり。
柳亭こみち師がこのギャグを「ほっとけない娘」に入れていたが、先日浅草お茶の間寄席で聴いた本家柳家小ゑん師も入れてた。逆輸入したのかしら。
いや、そんなことはいい。

よりどりみどりの行き先は、新作落語せめ達磨とか(当日料金になるからいち早く除外)、渋谷らくごとか、一度も聴いたことのない桃月庵黒酒さん(落語協会2階)とか、新宿無何有の春風亭昇輔さんとか。
悩んで出かけるのは結局寄席。
末広亭の夜席仲入り後が1,500円なので、これに。
この寄席、避けてはいないし、「新宿末広亭がなくなったっていいじゃないか」なんて記事を書いたが嫌ってもいない。
でも2年ぶりだ。
たまに意味なく寄席の前を横切ったりしてますが。先日も、新宿三丁目駅で林家正蔵師とすれ違った。

主任は笑福亭羽光師。
本来のヒザがコント青年団なのだが、浅い出番と入れ替えで不在なのは残念。
坂本頼光先生もいないし、そしてヒザ前ひとつ前の落語交互が、春風亭昇々でなく昔昔亭A太郎なのも残念。
クイツキの他団体交互は、上方の月亭太遊師。NHK新人大賞で、ドスベリしてたイメージしかない人。
前日なら立川吉笑さんだったが。
まあしかし、番組のすべてが希望通りになるものではない。
A太郎だって、悪態つかなきゃ別にいいんだ。

夜席後半は午後6時45分頃始まるので、少し前に末広亭へ。
平日らしい、ほどよい入り。

山城ヨチムーランド 太遊
エルシャラカーニ
紙入れ A太郎
お血脈 文治
小すみ
おもんない菌 羽光

見台が出て、月亭太遊(たいゆう)師。
見台、出てるだけでほぼ使ってなかったけど。
かつて大会でドスベリしていたのは事実だが、といってまったく期待していなかったわけでもない。
羽光師が顔付けしたのだろうし。
あともうひとつ名前を見たことがあった。
橘家文太さんが九州で活動し出した際、「九州初の在住落語家」と報道されたが、実は太遊師が、「住みます芸人」として大分にいて、報道にご立腹であったと。
それにしても、吉本所属の噺家は、メディアでも本当に聴く機会が少ない。
昨日取り上げたばかりの桂かい枝師も、やはり吉本なので機会は少なめだ。

太遊師、抜群に早いツカミ。
初めて末広亭に出させていただきます。月亭太遊と申します。
師匠が八方の弟子で遊方です。師匠に一字もらって太遊です。
なんで太いかといいますと、入門した頃太ってたんです。
落語家は割とええもん食べてますので太ります。先日も高級イタリアン、サイゼリヤでご馳走してもらいました。
上方落語です。いかにも品のない感じでしょ。
でも本当は大分です。大阪に魂を売りました。
末広亭にまた呼んでいただければ、東京弁にもなります。
地元に呼んでもらうこともあります。師匠なんて言われるんで師匠らしく振る舞うんですけど。なんだ、師匠なんて言うけど、よく見たら後藤さんとこの長男じゃないかなんて。
東京の会で、桂吉弥師匠に会いました。心強いです。あー、太遊くんと声かけていただきまして。
奇遇やなあ、きみ大阪でも会えへんのに。

新作落語をやります。短いのと、普通のとふたつやりたいんです。
明日はもしかすると、もう出してもらえないかもしれません。今日頑張ります。
最初のは、タイトルを「ディズニーランドに行きたいけどお金がないので気分だけ味わう家族」と言います(うろ覚えです)。
ミュージカル落語です。

貧しい大家族が、ディズニーソングの替え歌を歌いながら楽しむ。
少ない客だが非常によくウケた。
さらにちゃんとした一品を。テーマパークつながりです。

男二人がドライブしている。今から夢のテーマパークに行くのだ。
女の子はいないが、行列の際に話題を振らなきゃいけなくて気を遣うから、いないほうがいいだろう。
助手席の男は行き先がディズニーランドだと思っているが、運転しているほうは、なんや勘違いしてへんか。
向かう先は、山城ヨチムーランド。
城陽にある。なんやその、関西やったらウケるかもしれへん絶妙な土地やけど、東京でもそのまんまかい。
公園に爺さん(たぶん、歯がない)がいて、自分の見た夢を語ってくれるのだ。
前にいた彼女と行った際に、こんな夢の話を聴いた。なんでそんな夢を見たかと訊くと、独自の解釈を話してくれた。
夢の内容も、解釈も、そのつながりもまるでわからず困惑する男。

実に楽しかったが、こんなムードの落語、誰から聴いたっけ?
最後メタ構造になっているのはまさに羽光師だが、他にもいろいろな要素が隠れていそう。
爺さんの夢の話、本当に支離滅裂なのだけど、聴いていて実に楽しい。
夢の中で、中学生の頃好きだった女の子に会う。女の子のところに行きたいが、大勢の力士が立ちふさがっている。
力士を押しのけると、ちょっと抵抗はあるが力士の体内を通り抜けることができる。通り抜ける際に、「○○県出身、○○部屋」というアナウンスが聞こえる。

これは手練れの創作である。ヒットでした。
支離滅裂な噺に、それを楽しむ視点と、わけがわからないと思う視点と両方入っているので、誰でもついていけるだろう。
機会は少なそうだが、また太遊師を聴きたい。
その前に、師匠・遊方師もそうそう聴けないけども。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

2件のコメント

  1. 更新ご苦労様です

    本日はR-1決勝戦がありますね。落語で言えば小ゑん師匠やつる子さんが高座でかける落語も作られたどくさいスイッチ企画さんがアマチュアで出ますね

    あと、個人的に気になっているのは街裏ぴんくさんでしょうか。芸風は嘘漫談と呼ばれているのですがその場にいない人や物を頭で想像して笑うというのが創作落語みたいだと感じることもあります。良ければネタをご覧になられてはいかがでしょうか?もし合わなかったらその時は申し訳ございません

    1. 情報ありがとうございます。
      THE Wは観ても、R-1は博多華丸以来観てないと思います。
      あとで情報追っても、「観なくて正解」と思うことが多くて。
      でも、せっかく教えていただいたので観てみようと思います。
      ブログのネタになるかどうかはわかりませんが。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

粘着、無礼千万、マウント等の投稿はお断りします。メールアドレスは本物で。