新宿末広亭5(中・エルシャラカーニは寄席漫才向き)

見台を片付け、マイクを出すので前座二人がかり。
派手な着物の桂南海さんは立前座だろう。この人ももうすぐ二ツ目だ。

続いては色物。坂本頼光先生の代演でエルシャラカーニ。
芸術協会員ではないが漫才協会員。サンミュージック所属。
羽光師が呼んだのか、芸協の準会員になって代演に出ているのか、あるいはその両方なのかは知らない。いずれにしてもたまに出るみたいなので、準会員なのか。
名前だけは聞いたことがある程度の漫才師。
赤いベストの背の高いボケと、全体をコントロールする関西弁のツッコミ。
かなり面白かった。今日のヒット。
最近流行りの、ツッコミがボケを野放しにしつつ、要所を締めていくタイプ。モグライダーみたいな。
ただボケの山本しろうはともしげとは異なり、ポンコツなのかすべてが計算しつくされたボケなのか、よくわからない。
恐らくその両方で、非常にウデが高いのにもかかわらず、要所を決められない欠点があるのかもしれない。
アドリブに弱かったり、上手いまとめをできなかったりするのはある程度本当なんだと思う。
しかし、ネタの切り替えの主導権はボケが握っているようす。主導権というか、ツッコミがあえて野放しにしておいて、ボロが出るとツッコんで笑いに替えつつ、別のネタに誘導していくという。
方言クイズを出そうとして高知県(出身地)の話を振ってしまうとか、いきなりコントに入ろうとして設定の説明をできないとか、そのたびにツッコミで笑いが生まれる。
残り時間を知るため時計を堂々と見て、相方に「横目で見るんだよ」とツッコまれている。
緩さが落語の寄席に向いたタイプだし、新宿カウボーイみたいに正会員になってもやっていけそうだ。

次が昔昔亭A太郎師。
いちいち撮影会やらなきゃ悪いひとじゃないのだが。
スマホの電源を切ってるから、立ち上げるのが面倒なこちらに、悪態つかなきゃ悪いひとじゃないのだが。
ゆっくりもったい付けて入場し、深々お辞儀。

「撮影禁止」が大きく掲示されてる末広亭では、撮影会はしないのだな。
それとももうやめたのか。それは知らない。
CMの3本目が決まったという自慢。
自慢はどんどんやってもらって、私は別に構いません。やたら自虐を入れる噺家よりはいい。
客席に社長がいたので採用してもらった。今日は…いないと思いますけど。
CMは儲かりますね。1本750万円です。嘘ですよ。今みなさんを一気に敵に回しました。

トリの羽光さんとは、いっとき同棲してました。二人とも費用を抑えたくて。
その後性の不一致で別れました。
一緒に中国に行って落語をやりました。現地で言われました。なんでアルファベットが来るんだよと。

あと、台湾で落語を通訳入りでやったが、通訳がウケてた話。
独演会の告知。今、たちきりを稽古してます。新作落語もネタ出ししますと。

今日は羽光さんは新作らしいですよ。私は古典で、とネタは紙入れ。
もともとあまり好きな噺でないので、油断してしまった。
寝落ちしてしまう。
別にA太郎師が嫌いで、睡眠に逃げたわけではない。ちゃんと聴く気はあったのだが。
おかみさんを色っぽく演じつつ、「そこのおじさん、目をそらさないで、気持ち悪いのはわかるけど」と、らしいギャグを入れていたのは覚えている。

ヒザ前は桂文治師。
トリを立てる出番のテンプレート的な、お血脈。
あたしの落語はタメになる。レベルが違う。ゆっくり出てきて格好つけるようなのとは違うの。
あたしはこう見えて東京出身じゃないの。大分県のUSA。
先に出た太遊師を引き合いに出し、「USAだけあってちょっと私のほうが垢抜けてるけど」。
三条河原で窯茹でにされたままの石川五右衛門が、手ぬぐいを頭に乗せて「京都慕情」を歌いだす。
前座たちは鳴り物を入れる。2番まで進んだところで「誰か止めてよ」でボーン。
「大分出身者は歌が好きということで」とサゲる。
同じことを太遊師が語っていたのだが、よく考えたら「大分は歌が好き」が指しているのは文治師ではなく、市馬師のことなのだろうな。

ヒザがコント青年団でないのは残念だが、別に小すみ姐さんが嫌いなわけではありません。実にくつろぐ。
なぜか、落語協会の小菊師匠の口調が聞こえてきたのは気のせいか。一緒の仕事なんてないと思うけど。

トリの羽光師に続きます

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

粘着、無礼千万、マウント等の投稿はお断りします。メールアドレスは本物で。