巣鴨スタジオフォー「四の日寄席」(上・古今亭文菊「お菊の皿」)

仕事の隙間だ。
平日(木曜日)でも、自分で休みと決めれば休み。
休みなら、別に短い時間の席でなくてもいい。
ぜひ昼間から寄席(定席)に行きたいが、上野広小路亭などまで範囲を広げても、いい昼席がない。
だが幸い、まだ行ったことのない落語会がある。巣鴨のスタジオフォー。
ここで毎週水曜日にやっている二ツ目の会、巣ごもり寄席にも以前から行きたいなと思っていた。
この木曜日は真打5人の「四の日寄席」でさらにいい。
四の日はとげぬき地蔵の縁日だそうな。
このところずいぶん城北づいている。城北、城東は寄席も落語会も多くて楽しいエリアだ。

都営三田線、西巣鴨の駅で初めて下りる。
白山通りを進んで都電の新庚申塚電停をまたぎ、右折すると左手にスタジオフォー。
昼間から満員である。50人は入っている。

文菊  / お菊の皿
馬石  / 鰻屋
やまと / 夢の酒
(仲入り)
駒治  / 初めての自転車
左橋  / 豊志賀の死

この会のレギュラーメンバーの師匠がた。
亭号は初音家、隅田川、桂とバラバラだが、みな古今亭に連なる人たちだ。なかなかの顔付け。
料金は2千円。
この会の終演時間を知らないで来たのだが、2時間半あってたっぷり、寄席サイズ。
この時間の落語会で2千円ならお得。しかも、揃って長講。
短い落語もいいのだけど、私は長講のほうがさらに好きなようである。
内容もまたバラエティに富んでいて、季節感にも優れ、コストパフォーマンスもいい、すばらしい会でした。

開演前に主催者から挨拶。
テレ東の、「池の水全部抜く」の企画で、スタジオフォーの裏手で井戸を新たに掘ったので、それが取り上げられるらしい。
それで、今日はTVカメラが入りますとのこと。
放送は7月末なので楽しみにしてくださいと。まあ、映るのはたぶん3秒ぐらいでしょうけどね。

古今亭文菊「お菊の皿」

開演して、いきなり古今亭文菊師が高座に上がる。
前座もおらず、いきなり真打、しかも人気の師匠が開口一番。ちょっと驚くな。
井戸の話から世間話のように入ってお客をリラックスさせ、スムーズに始める。
文菊師、きっと次来たときはお茶も井戸の水になるんでしょうと。
井戸の話を聞いて、演目を決めたらしい。
井戸の中から出てくる幽霊の噺。この時季は寄席でよく掛かる「お菊の皿」である。

実に気持ちのいい一席。
若い者たちに皿屋敷のいわれを語る、隠居の語り口に思わず引き込まれる。
話芸というものは、語り手がちゃんとその気になって、興味深い昔話をしてやろうとして語ることで、面白くなるということがよくわかる。
そして怖い場面はしっかり怖い。本気で怖いわけじゃないが、怖いムードが出ている。
客が増え、人気が出てきたお菊さんはぞろっぺえだが、別にふざけているわけではないという、そのさじ加減がたまらなく好きだ。
この噺、ギャグを入れるのはいいのだけど、徹底的にふざける方向につい進んでしまう人が多い気がする。
でも、本来なんでもありの噺じゃない。それが文菊師でよくわかる。
やり過ぎないが、しっかり面白い。
とぼけた人たちの楽しい世界を楽しむ文菊師の演出、最高である。

それにしてもお菊の皿って、「18枚まで数える」理由はサゲで判明しているけど、「9枚まで聞いても死なない」ことについては、全然解決してないよね。
「もともと9枚まで聞いたって死なない」ということなんでしょう。
青山鉄山だって、もしそういうルールがあるなら、狂い死にする前に一撃で死んでるはずだもの。

続きます。

作成者: でっち定吉

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