池袋演芸場31 その3(ウクレレえいじ)

ウクレレ漫談のウクレレえいじ先生は初めて。
いつの間にか落語協会の正会員になっている。

終盤に出すモノマネ「♪マニアックでゴメンね。微妙でゴメンね」が盛り上がりのハイライト。
「七人の侍」における志村喬のモノマネから始まり、ぶらり途中下車の西岡徳馬や、建もの探訪の渡辺篤史とか。
ご本人もかつて出たらしい、「細かすぎて伝わらないモノマネ」の方法論である。
鉄板ネタのそこを最終目的地に据えつつ、ハワイアンと日本全国の民謡等で盛り上げていく。
ウクレレにおける「ダイヤモンド・ヘッド」と「津軽じょんがら節」は超絶技巧。よく弾けるものだ。

寄席向けのすごい芸人を知って感激。
何年か経ったら色物の栄誉であるヒザだって務めているだろう。芸風的には問題ない。
面白い人は落語の寄席を目指して欲しいですね。
しかし、こんなエンターテイナーが出てくると、めおと楽団ジキジキなんて影響がありそう。
のだゆきさんは大丈夫そうだが。
いつも書いてるが、寄席の色物さんは厳しい競争に常にさらされているのです。

次が、古今亭志ん輔師。本来は夜の顔付け。
この日のことをなんと書いてあるか、久々にかのブログを覗いてみたら、
「町内会のおじさんおばさん的なお客様で悩んだが『替り目』でまあOK」
だそうな。褒めてはいないと思うし、客席にいた側からすると意味不明。
この師匠の替り目、2年前に池袋で聴いている(仲入り)。
昼の仲入り後から入ろうと思っていたら、早めに着いたので。ただ、ブログには聴いたことも書かなかった。

続いて隅田川馬石師。
手短なマクラはなんだったか忘れたが、冒頭から愉快なムード満載。
ネタは鮑のし。つい2か月前に聴いたばかりのネタなのだが、全く気にならなかったからスゴイ。
ミラクル甚兵衛さんがもう、本当に楽しくて。
この日は、(同じ師匠で)聴いたことのあるネタが多かった。まあ、そういう日もある。
それにしても、馬石師の面白さは特筆に値する。どんなに楽しくても、繰り返し聴けば飽きるのが普通だが。
「お嫁ごさま」が「およよよよ」になってしまう甚兵衛さんは、毎回楽しませてくれる。

寄席の短い時間であるから、当然フルバージョンではなく、ようやっと口上を察してもらって1円くださいまで。
魚屋の親父は最初から、鮑のしなんて言って縁起物だよと甚兵衛さんに勧めている。
今日のタイトルにしてもいいのだが、すでに「隅田川馬石 鮑のし」で検索すると1位と2位が当ブログなので、やめておきます。

ロケット団は、ほぼ知っているネタなのだがやはりたまらない。
倉本の出身地はパキスタンからミャンマーに戻っていた。
コロナ療養や大谷&大仁田や、四字熟語。おぼんこぼん。あとなんだっけ。
珍しく、「じゃあ、おしまい!」でなく、ネタ中にスムーズに頭を下げてハケていく。
こういうコンビ観てると、やってるほうも楽しいんだろうなと思う。

仲入りは柳家小ゑん師。
花いち師の初トリに、心強い師匠がついている。
池袋ではいつもそうだが、このマニア向け演芸場に集まる客を、変態だと褒める。
そして唐突に、悲しみは埼玉に向けて。
これも「柳家小ゑん 悲しみは埼玉に向けて」で検索すると、1位と5位が当ブログ。
1位のほうの記事は2年前の、3月池袋下席の新作台本まつり。
その記事に、今回のトリ花いち師が出した「土産話」のことも合わせて書かれている。

半年前にも円丈トリビュートで聴いたばかり。
だが馬石師と同様、飽きない。実に楽しい。
噺自体が骨太だし、そこに小ゑん師オリジナルのエピソードを付け加えていく構造がたまらない。
劇中に、西小山に住む小ゑん師が、円丈の住む竹ノ塚まで稽古をつけてもらいに行くノンフィクションが入るため、マクラは不要。
仲入りだから20分程度はあるが、北越谷伝説や、隅田川上の橋に2編成載せると落ちる東武線の話は抜いていた。
さらに「新栃木」の話を入れたりすることもあるのだろうか。

北千住に着いた小ゑん師、うっかり「駅前にパルコがある」と言ってしまう。
パルコでなく、ルミネとマルイ。
パルコは、その後で出てくる駅前のパチンコ屋の名称である。いいけど。

仲入り休憩時に地上に上がると、トリの花いち師が楽屋入りするところだった。
中日だから、打ち上げするのでしょうか。

クイツキは弁財亭和泉師。
私は久々である。
この師匠が池袋下席でトリを取った芝居で、花いち師がクイツキを務めていた。行けなかったけど、その裏返しのようだ。
断捨離がテーマの、どこかで聴いた噺。たぶんコロナ禍の配信だと思う。
演題は「箱の中」という、ややピンとこないもの。
断捨離の結果、家を出ている息子の大事にしていたアイドルのTシャツが、自宅前の農園のカカシに着せられてしまう。
SNSでバズっているのを姉から聞いて、慌てて実家に戻る息子。
新作好きの私だが、よくわからない。
子供たちが慌てているのに、両親がその慌てぶりに対応せずのんびりしてる点が気になるのだろうか?
明らかにあえてそうしているけども。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

粘着、無礼千万、マウント等の投稿はお断りします。メールアドレスは本物で。