寿限無の言い立てバリエーション

たまに当ブログで取り上げる、落語のフレーズシリーズ。
「金明竹の言い立てを覚えた」なんて記事は、今でもよく検索でヒットします。
今日は子供たちの大好きな寿限無。その言い立てが無限にあるという話。

寿限無 寿限無 五却のすりきれ
海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末
食う寝るところに住むところ ヤブラコウジのブラコウジ
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の 長助

これは子供の頃私も覚えた、NHK標準バージョンの言い立て。
子供たちはみなこれを覚えているので、学校寄席など行って違うのをやると、拒否されるようである。
もっとも、寿限無を高座で実際に聴く際、標準バージョンであることのほうがむしろ少ない印象。
三遊亭円楽師の最後の弟子、楽太さんは標準バージョンだった。子供の頃覚えたのだろう。
師匠の寿限無はこれではなかったのだが、師匠が違うバージョンにOKを出したものと思われる。
覚えなおせって命ずる師匠もいるだろう、きっと。なんだっていいと思うんだけども。
子供たちも、知っているのと違うのが披露されても、あ、これもあるんだなと思ってもらいたい。

本記事を書くきっかけは、ラジオで聴いた笑福亭生寿師の高座。もっとも本編が寿限無であったのではなく、マクラで。
まさに、地方(北陸)に行って覚えたバージョンでやると、違うと言われるんだそうで。
バリエーションをいろいろ楽しんでいる私だが、生寿師のものはややびっくり。

水行末 雲行末」まではよく聴く。「雲来末」より、むしろこちらのほうが多数派なのではないかな。
ただ、ウンライマツであろうがウンギョウマツであろうが、最後は風来末であろうと。
生寿師のものは「風行末」であったのだ。初めて聴いた。
まあ、風の行く末であろうが、来る末であろうが、意味の上で大差はない。
ちなみに立川流では「スイギョウバツウンライバツフウライバツ」になる。「末」ではあるみたい。

これ以外のバージョン違いを、頭から見てみる。
五却のすりきれず」というバージョンがある。語呂悪くてあまり好きじゃない。
あかね噺ではこれ。アニメ化される際にNHK標準バージョンになると想像するが。
しかし、「すりきれ」と「すりきれず」では意味が真逆な気がする。

「海砂利水魚の」の「の」を抜いてしまうバージョンはたまに見る。
こちらは語呂がいいから嫌いじゃない。
食う寝るところ住むところ」と、助詞の「に」を抜くものも見る。
しかし、「ヤブラコウジブラコウジ」はなかった気がする。絶対にないとも言いきれないけど。

「ヤブラコウジのブラコウジ」よりも、「ヤブラコウジのヤブコウジ」のほうが、体感では多い印象。
植物の名前としてはヤブコウジだ。
このあたり、「がまの油」に出てくる「テレメンテイカにマンテイカ」を連想しなくもない。要は意味より語呂です。

パイポパイポ パイポのシューリンガンと来て、シューリンガンのグーリンダイ。
この先、違うバージョンが多い。
パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
となるものをよく聴く。グーリンダイが一個少ないのだ。
そして、「ポンポコナーのポンポコピー」というものもある。
最初聴いたときは耳を疑い、間違って覚えたんじゃないかと思った。そんなことはないのだけど。
もともと、パイポの国の王さまとお妃さま、そして二人の王女の名前。こんなものはテキトーでいいのだった。

私の知る限りでは、これが寿限無バリエーションのすべて。
バージョン違いも楽しいもの。
最近、入船亭の「たらちめ」、それからバージョン違いの「金明竹」もそらんじたいと思っております。

学校寄席では人気の寿限無も、寄席ではそれほど披露されるわけではない。
披露目のときがチャンスかもしれないが、もっとも「一目上がり」「黄金の大黒」と、他に縁起いい噺もある。
ただ、柳家花いちさんの「寿限無くん」とか、パロディも多いため、言い立てを聴く機会はもう少し増える。
先日、笑福亭希光さんから聴いた「ノーノー貧困ノーノー紛争」で始まるSDGs限無は覚えたい。
円丈、それから弟子の白鳥師などもパロディをやっている。
あまたあるパロディのうち、覚えてしまったものがひとつある。

10ゲーム10ゲーム 後藤の振り逃げ
ジャイアンツ球場 毎週末フーライ捕るオーライ捕る
ピンチのときに角盈男 球児好児の右好児
大豊大豊大豊のチューインガム
チューインガムのグリーンウェル
グリーンウェルはポンコツだけど チ○ポコだけは超スゲー

ナイツの「野球寿限無」これは傑作だった。

ちなみに子供の頃、寿限無と一緒に覚えた名前がある。

パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・シプリアーノ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ

すなわち画家ピカソの本名。
本当はこのカタカナで覚えたわけではない。英語読みのポールとか、ジャンとか、ネボムチェーノとかが入っていた。
もう少しスペイン語読みで覚えたかった。
その前に、ここに出ているのと違うバージョンなんだが。画家にも別バージョンがあるのだった。

パブロ・ディエゴ・ホセ・フランチスコ・ド・ポール・ジャン・ネボムチェーノ・クリスバン・ クリスピアノ・ド・ラ・ンチシュ・トリニダット・ルイス・イ・ピカソ

これで覚えちゃった。

作成者: でっち定吉

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