両国寄席7 その1(三遊亭鳳月「のめる」)

楽べえ / 寿限無
鳳月  / のめる
楽天  / 平林
良楽  / 太刀山の恩返し

王楽  / 新聞記事
(仲入り)
好の助 / 蚊いくさ
母心
兼好  / 大山詣り

久々に夜、家庭から解放されたので、夜席に行くことにする。
別に昼でもいいのだけど、この日一番いい番組、三遊亭兼好師が主任の、夜の両国へ。
開演時はちょっと多いぐらい。いつもは空いている最前列に、ずらっとお客が。
兼好師のご贔屓筋なのか。
その後どんどん入ってきて、両国とは思えない大混雑。
最終的に100人ぐらい入っていたか。
先日の亀戸もそうだったが、ここに来て兼好師の人気はすごい。
というか兼好師だけでなくて、円楽党、両国寄席、亀戸梅屋敷寄席といずれも人気が上がっているようだ。
今や円楽党を無視して東京の落語界を語ることなんかできぬ。

他派の噺家も一緒に顔付けされるのが楽しみな両国寄席だが、この日は最初から円楽党のみ。
しかしながら、珍しい噺も出て、楽しい日でした。
古典落語を聴いて、演題がわからないことなどめったにない。1日でふたつもわからないなんてことは、ますますない。
この日がその珍しい日。いつもは撮らない写真に頼っております。
100人が一度に退出するので、ぼやぼやしてはいられない。瞬撮して出ました。

入場時のテケツには知らない前座さん。いつものように、「兼好師匠を聴きにきました」と言って1,200円で入れてもらう。
千円札と500円玉を出して、お釣りをもらう。私が手を出しているのに前座さん、チラシの上に100円玉3枚を載せてこちらに返す。
そんなお釣りの返し方、誰に教わるの? 落とすってば。
別に非難しているわけではないが、客が手を出しているときにはその手に返してやったらいいじゃないか。それが気遣いじゃないかと思うよ私は。

前座は楽べえさん。この人は二度目。
噺に入ると、前列の爺さんが「寿限無か」と大きな声。変にウケてしまう。やめてくれい。
両国もたびたび通うようになってすっかり愛着が湧いているのだが、客の質だけはどうもな。
この先、すべて演題を言われたらいやだなと思ったのだが、この1回だけでよかった。

あまり覚えていないのだが、楽べえさんは昨年亀戸で聴いていて、ブログに多少メモを残している。
前座らしく声を張り上げて喋っているのだが、それが妙な調子を生んで、なかなか楽しい寿限無。
お寺の和尚と話す父親。「お子さんは男かい、女かい」「男です。今のところは」。
この手のクスグリ、前座が入れるとだいたい撃沈する。だが、しっかりウケていた。
客が明るいからいいのだろうが、私も確かに面白いなと思ったのだ。

三遊亭鳳月「のめる」

早くもパイプ椅子が後ろに多数並べられる。ここのパイプ椅子は大きいし座りやすくて好きだ。
番組トップバッターは、最近立て続けに聴いている鳳月(ほうづき)さん。
楽べえさんが、ちょっと言い立てで噛んでいたのを受けて、ああいうことがあると、感染るんです。この後全員間違えるなんてことがあるので、私のところでなんとか取り返したいと思いますだって。

鳳月さん、とても上手い人なのだが、その秘訣がまたちょっとわかってきた。
男二人、熊さんトメさんの会話、相手のことをとても思いやっている。
しっかりと肚から出たセリフを喋るからこうなる。のだろう。
背景に、「悪い癖を友達二人でしっかり治そう」という、互いの思いやりがちゃんとある。
まずそれが確立している。岩田の隠居と打ち合わせ、なんとか熊さんに「つまらねえ」を言わせようと対策を講じるのは、その次の問題なのだ。
仲良しのふたりが、知恵を絞ってなんとか相手に1円払わせようという噺が、背景をしっかり描くことで気持ちよく、楽しくなる。

続きます。

作成者: でっち定吉

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