花いちの真観笑地帯(中・柳家花いち 池袋主任興行総括)

夜の「花いちの真観笑地帯」に戻ります。
桂枝平さんは、23分ぐらい話していた。前座にしては非常に長い。
主役の花いち師登場。

今回の花いち師、驚いたことがあって、妙に風格がある。
寄席でトリを取るというのは、改めてすごいことなんだなと。
もともと花いち師は、常に自信がなさそうなのが持ち味。露骨な自虐芸ではないものの、その高座全体が自虐っぽい。
だから風格なんて無縁だったのだ、今の今までは。
自虐モードは変わらないけども、なんだか高座にピタッとハマって見える。
次は鈴本でトリ取って欲しいなと思う。鈴本夜席なら、新宿や浅草よりは可能性高いだろう。

今日の会は、数えて69回目(拍手)。
いや、拍手じゃないんですよ。ここでネタおろししてるわけですから、70席よりもっと新作作ったんですけど。
今、寄席では10席そこそこで回してるんです。みんな消えてしまいました。1回か2回ぐらいしか掛けてないわけです。
もったいないですから今日は古い噺をやろうと思ったんですね。

その、池袋の主任興業の話。
お客さんにたくさん来て欲しかったので、あちこちの会で宣伝しました。
そしたら、緑也アニさんや枝平さんたちとやっている秦野の会のお客さんが、バスツアーを組んでくださいまして。
13日でした。
バスに、同乗して欲しいって頼まれまして。いやだなと思ったんですけど断りづらくて。
なので朝早く、東海大学前駅まで出かけました。
バスの中では、声掛けや拍手の練習をしてもらいました。
この日は枝平さんが前座だったので、枝平さんにまで「待ってました」の練習です。
枝平さんには「待ってました」が掛かったんですけど、次の吉緑さんにはなんの声も掛からず申しわけありませんでした。
私の高座にもしっかり、待ってましたを掛けてもらいました。

新作は時間短いんですね。なのでトリの時間に合わせてマクラを入れるのが大変で。
代演で1日、ヒザがアサダ二世先生だったんですよ。先生にお願いしました「ちゃんとやってください」って。
いつもすぐ下りてきちゃうんですけど、15分ちゃんとやってもらいました。
ちゃんとできるんですよ。

この芝居、毎日師匠方に「お客さんがいいよ」と言ってもらえました。
小ゑん師匠にも、毎日いいよと言ってくださいまして。
柳家小満ん師匠とも楽屋で話をさせてもらいました。
新作は大変だねと声を掛けてもらいまして。
小満ん師匠も新作されますよねと訊きますと、「結構忘れちゃってるけど、とにかく喋るんだよ」。

春風亭百栄師匠なんてキャリアがかなり違いますから、ふだん接点ないんですよ。
でも思い切って、次回のこの会のゲストを頼んでみました。快く引き受けてくださいました。

古典もやりたいなと思って、1日徂徠豆腐出しました。
カッコつけて、マクラをほどほどにして本編に入ったんですけど、22分ぐらいで終わっちゃいまして。
仕方ないので下りまして。そしたら楽屋で誰も目を合わせてくれないんですよ。

古典もやっています。
故郷の浜松なんかでは、キツイ新作はできないですね。
ママチャリきょうこなんて噺があって、座布団の上でこんな、傾いたりするんですね。
こういうのは引かれます。
それに浜松、誰も自転車乗りません。車社会ですから。

マクラの全部がここで話されたわけじゃなく、後半のエピソードは主に仲入り後のものである。
でも、記憶の中で区別がつかないので。
いずれにしても、花いち師の主任の芝居は大成功に終わったと考えてよさそう。
演者の格も一段上がった。
もっと早く順番がまわってきてよかったのだが。

10日間、新作縛りなのかと思ったが、古典も出したのだな。
新作は短いという花いち師だが、古典もだいたい短いのだ。
私も4年前に徂徠豆腐聴いたことがあるが、実に短いものだった。
古典もやれてよかった。将来的に、寄席でもその日のやりたいものが出せるといいのにと思った。
ただこの日に遭遇したら、たぶん私時計をチラチラ見ながら、首をかしげていたと思う。

相撲の話を振って。
珍しいな。花いち師から、相撲の話なんか聴いたことがない。
客席にもアンケート。歴代で最も印象に残っている横綱は誰ですか?
若貴の人? 千代の富士の人? 若乃花栃錦の人? 大鵬柏戸の人?
じゃ、それ以外の方は双葉山ということで。

寄席で出る普通の相撲マクラを振るので驚く。
相撲は日本とモンゴルで盛んです。両国と言って、とかそんなの。
後で語っていたところによると、「相撲風景」の後半だけ変えてみましたとのこと。
オリジナル後半は、大関が使者の前で口上を伝える、その際の四字熟語について。

新大関浜の松はちょっとアレなので、四字熟語が覚えられない。
もっとも高座の花いち師も、若乃花が「堅忍不抜」と言ったのを忘れて口が回らない。
まあ若乃花本人だって、間違えてけんしんふばつって言ったんだが。

まあ、いかにも落語らしい噺。
あとで、浅草用に作ってみましたとのこと(ネタおろし)。
確かに間違いなく浅草ではウケるはず。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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