渋谷らくご(上・昇々、わさび連続新作)

渋谷らくごは、避けたりしていないが未訪問。
先月いい顔付けだったので腰を上げかけたが、結局よそ行ってしまった。

土曜日の昼の渋谷らくごは、入船亭扇辰、三遊亭遊雀、柳家わさび、春風亭昇々というすばらしい顔付け。なのでついにデビュー。
扇辰、遊雀という組み合わせはめったにない気がする。元は落語協会で一緒に前座修業をした仲だ。
ただ日曜日に予定していた、用賀でやってる無料の眞福寺落語会はやめることにする。ゲスト文菊。

マークシティを通り抜けるだけでなんだか気疲れする。
そしてラブホ通りはライブハウスの若者でいっぱい。
その先が地味なユーロライブ。
キャッシュレスで決済できるのが私にはとても嬉しい。
ようやく辿り着くとなかなかいい空間。
行き場所のない大人が集まった、この感じ好き。
あくまでも感じなんで、怒らないでください。

 

ザ・卓球昇々
ヤンママわさび
(インターバル)
十徳遊雀
藁人形扇辰

前座が出るもんだと思っていたら、いきなり昇々師から。
前座さんはいるけど(見たことない人)高座返ししかしない。

昇々師は知らないうちに、マクラがタメ口主体になっている。
いい感じ。
副都心線から会場までたどり着くのが大変。インバウンドだらけ。
インバウンドは渋谷らくご来ないからね。
ラーメン屋まで並んでるよ。私は並ぶくらいなら吉野家がいいです。
外国で落語するのは諦めました。やったことあるんですけどね、人より多く。
イタリアとロシアと、インドです。
ロシアは日本の大使館なんですけど。パスポート忘れたんですけど、入れてくれました。
インドは畳だけは用意してくれたんだけど、地面に畳置いただけたから、高くないの。
低座だね。低いから高座じゃないよ。
そしてお客さんはみんな立ってるの。
見下されてるんだよ。
でもそこで、小噺やったらウケたの。
牛の乳を持ち上げたら時間がわかるって、おなじみのですよ。
小噺は寄席ではやらないの。学校寄席ではやるから、たくさん仕入れてるんだけどね。
小噺ってすごいと思ったね。

私は団体行動はしないと決めてるの。落語界は居心地がいいですよ。
高校のときに、修学旅行で朝目を覚ましたら、誰もいないの。
そんなことあります?
広島駅にタクシーで乗り付けて、先生に叱られました。お前友達いないのかって全員の前で。
それ以来団体行動はしません。

本編は卓球部の噺。熱い朝練のシーンから始まる。
男子ダブルスの全国大会(聖地・東京体育館)に颯爽と向かう、先輩と後輩。

始まってすぐ、噺の根幹を支える重要なネタバレがあるので、なにも書けない。
書いて噺の価値が落ちる性質のものではないのだけど、そこまでして書かなくていいかな。
そういう配慮はするくせに、マクラは書くんだね。それはさておき。

コント芸人のやるコントを観て、これは落語だな、とか、落語に移植できるな、と思うことがたまにある。
今回は逆だ。この昇々師の「ザ・卓球」、そのままコントになるなと。
登場人物2人だけだけども、東京03にこんなムードのコントがあるなと思う。
というか、昇々師が相方を探して、コント番組に出たらいいんじゃないかと。団体行動しないと言ってるからダメ?

いいコントによくあるが、ストーリー展開でなくて、すべてシチュエーションのおかしさで笑わせる。今これを言うかといった。
ここまでコントに近しい新作落語は聴いたことがなかったと思う。喬太郎師だと、コントというより芝居だし。
そして自身の暗い青春時代を吐き出し、すべてを笑いに昇華する。

見事でした。

続いてわさび師。
昇々さんに、いまやってたのなんの噺って訊いて叱られました。
いや、全然聴いてないわけじゃないんですけど、自分のやる噺のほうに集中しますので。
卓球と部活を避ければいいんですかね?
最初が新作だったので、次は古典落語を掛けるのが普通なんでしょうけども。

わさび師は寄席でたまに、そして浅草お茶の間寄席によく出るのでそちらで聴いていた。
そちらのイメージができあがっている。
だが今日はブラックわさび。行ったことないのだけど、自分の会などではこういう感じの人なんでしょうかね。
ずっとマクラで悪態をつく。悪態出して、ダークなムードは漂うのだが、嫌味な感じにはならないのが人柄なのか。
噺家の修業は必要なのかなんて喋ってた。内弟子だったので、二重人格になってますと。
修業なんてしなくてもR-1に出て優勝したら、高座にだって上がれますよなんて。そっちのほうが速いんじゃないですか。
学生落語の人も、策伝大賞で優勝したりなんかして、でもプロにはならないですね。その後落語協会の新作台本募集も獲ったりして。
リスペクトはしてるって言ってくれるんですけども、でも自分はならないという。

誰のこと言ってるんだ。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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