昨日は産経らくご入会の理由の一つでもある、神田連雀亭昼席の配信もあった。
なにも義務的に全部取り上げるつもりはないが、こちらの配信もよかったので明日に。
配信は、明らかに生の高座と見方が違う。
仕事しながらすごくぼんやり聴いている。楽屋仕事に余念のない前座の捨て耳のごとく。
そしてよかったら、あとでもう少しちゃんと聴き返す。
にも関わらず、意外と生の高座と楽しみ方が近い。
テレビと違い、編集してないからだと思う。
そして、カメラは固定の1台のみ。寄ったりしない。
堀井憲一郎氏は、テレビの落語観てると酔うそうで。絶対に現場ではあり得ない視点が混ざってくるから。
だから、そんなところに落語の本質はないのだと続く。
私はテレビの落語好きなので、特に気にしていない。
だが配信はテレビより、ずっと現場に近い。これは新たな発見。
昨日の続き。
遊方師の「戦え!サンダーマン」は、東京に持ってくるのも容易そう。昇輔さんとかやりそうなんだが。
とはいえ劇中ショーが当然標準語のところ、芝居を離れた部分が関西弁になる構造は、上方新作ならではだ。
私は上方新作は、文枝師の影響で東京より飛躍の度合いが薄いと認識している。だが、この噺は飛躍満載。
手配犯がステージに躍り込んできたのに、子どもの夢を優先し、この犯人に悪役をやらせようとする無茶苦茶な関係者。
実に楽しい。
サンダーマンは三田(さんだ)出身だそうだ。
もちろん、子供の命がかかっているのである。ふざけた噺が客の気持ちに沿わないことだってありそうだ。
これは、シャレがわかるかどうかとは、意外と別次元。
だが、この部分のケアが上手い。
子供を連れてきたお母さんの中に、現実とショーとが区別できない人がいる。
このお母さんがすべての設定を落語の客に受け入れさせてしまう。
客席を巻き込んで声を掛けさせるとか、最近流行りの要素も多い。
遊方師、全力でこのファンキーな噺を演じ、最後はもうヘロヘロ。
犯人を逮捕する際、口が回っていない。
お疲れさまでした。
トリは笑福亭岐代松師。61歳。
松鶴の下のほうの弟子。どんな人かはよく知らない。
この元気寄席のトップに出ていた笑金さんは、この師匠に影響を受けているのだろうか?
タメにタメて繰り出す話芸がよく似ている。
タメてるわりには、わりと能弁でもある不思議な口調の岐代松師。
稽古するとつまらなくなりそうな噺なので、入念な稽古をしてる感じではない。アドリブに強いのだろうか?
すべて想像の域を出ないのだが、とにかくたまらなく面白い。
フルでやると50分だと言う。25分なので途中までやりますとのこと。
結局、十三から阪急神戸線に乗り、西宮北口に着いたところでタイムアップ。
昨日、この高座を漫談と書いた。
いや、ガーコンを漫談に分類するならこの「新開地への道」も確かに漫談だと思う。でも再度聴いたら、とても普通の落語っぽくもあり。
会話が多いためである。
十三の家を出る際に、おかみさんと交わす会話がたっぷり。
そして、帰りは飲んでくると伝えるにあたり、メタ的に笑金さんがセリフ付きで登場する。
でも、ストーリーはなんにもなくて、やっぱりその点漫談ぽい。
不思議な一席。はっきりしているのはこれもまた「話術」だということだ。
ないストーリーをあえて言うと、十三在住の岐代松師が、喜楽館のある新開地まで阪急電車に乗るという、ただそれだけ。
間で止まる各駅につき、師匠自身が経験したエピソードが入る。
米朝の住んでいた武庫之荘とか。
では、エピソードのために便宜上ストーリーのある、地噺なのか?
地噺といえばそうなのだが、感覚的には違う気がする。
喋り方に加え、ここぞというシーンで謎のポーズ付きで言葉を送り出す。
両手を斜め方向に突き出して。
一つが「関東炊き」(かんとだき)、もう一つが「にしきた」。
なんだこりゃ。
横浜にぎわい座の上方落語の会で出したら、かなりウケそう。
いつか大阪・神戸で遭遇したい楽しい師匠であった。
(追記:「米あさ」とか書いて放置しておりました。もちろん米朝です)