月亭遊方「戦え!サンダーマン」(神戸新開地喜楽館配信・上)

5ちゃんねるとの対話は残念ながら成立しなかったので、配信に戻ります。
続編はなさそうだ。
ごく穏やかに参ります。
読んで気持ちいいブログを書けるところをひとつ。

桂ざこば師匠が亡くなった。
関西にいた頃の私の思い出は「らくごのご」。
三題噺を本当に即興で作るあの番組、実に楽しかった。
お題もらってすぐなんて、極めて難易度の高いワザ。たまにできなくて泣いていたことも。
鶴瓶師が本格的に落語を始める前の時期、ほぼ唯一上がっていた高座でもある。

東京の悪口はよく言っていたが、東京の噺家とはつながりが大きかったようである。
亡くなった円楽師の「一文笛」にもエピソードとモノマネが入っていた。
聴いてないが「意地比べ」を持っていたというのは知っている。江戸っ子の噺だが、ざこば師も江戸っ子に親和性がある。

さて今日は神戸新開地喜楽館の配信、3週目。まだ無料。
先週のものは結局ほとんど聴いていない。
恐る恐るの今週は、実に楽しい内容でした。
今回のメンバーは、私の聴いてる関西のラジオにいつも出るということはない。
だが、その層が素晴らしい高座を魅せるのだった。
実に嬉しくなった。
本当に、生であろうが配信であろうが、高座との出逢いは一期一会である。
映像の残らない配信は宝の山かも。
上方落語だし、聴きすぎて煮詰まる心配は当面ない。そもそも今回の高座は性質上、最初から煮詰まらないが。
ちょっと標準より濃くて、上方落語嫌いの人には刺激が強いかも。
トリの笑福亭岐代松師は、練り上げた漫談「新開地への道」。
トリで漫談なんて、川柳川柳みたい。でも聴き応え十分。

昼間は喜楽館音楽ウィークということで、5月連休明け。
2日目の5月7日。昼のメインは噺家ディキシーランドジャズの「ホーンなあほな」。
にゅうおいらんずみたいなもんでしょうか。
そのメンバーが、夜の元気寄席にも出演している。
岐代松師の担当するドラムセットだけ、ずっと高座の後ろにある。連日使うから。
画面からは想像するしかないが、昼間の楽しい空気が流れ込んでいるのだろう。
リアル客席はガラガラのようだが。
でも、配信はコロナの生んだ奇跡の文化だと思う。こうやって誰かに届くのだから。

挨拶支配人・伊藤史隆
小噺笑金
前説支配人補佐・三ノ助
つる笑金
長短米輝
戦え!サンダーマン遊方
新開地への道岐代松

なんと全員よかった。
昼間はエレキベースを担当の桂笑金さんは、亡くなった三金師の弟子。元吉本の社員だそうで。
上手さより、個性を先に身につけている。何かが憑依しているような独特の口調である。
前座時代にこんな喋りをしていたら、東京では叱られそう。
でも、二ツ目になったら、東京であってもむしろこういう個性発揮の模索は大事なことだと思う。
口調以外は現状普通だが、でも、口調で聴けてしまう。
逆に、わりと上手くても平凡な口調で埋没してしまう人もいて。

スキンヘッドの桂米輝さんは、近年評価急上昇のようだ。
私はもう4年前、6日間にわたりYouTubeで見つけたこの人の楽しい新作落語を当ブログで取り上げた。
アクセスは少なかったけど。
あの頃のブログは今とは比べ物にならず小さかったものだと実感する。

マクラの、妹弟子米舞(まいまい)さんの運転免許の話は面白かった。
落語界、常識人ももちろん必要だが、ちょいズレた人が輝ける場所かもしれない。

本編は長短。
気に長いほうを徹底的にカリカチュアして、お得意の「ぴよぴよ」を言わせたりする。
古典落語に徹底的に遊びを入れて、壊さない。すごい。
ぶっ壊しておいて、演者だけ面白がっている人だっているわけで。
新作で鍛えた人は、なんと既存の古典落語を、別の体系に乗せてしまう。
この新体系は、コントのようなふざけ方でなく、ナンセンスなアニメみたい。
体系がしっかりしているから、ふざけているのにパロディという感はなく、実に安定している。

月亭遊方師は新作の人で、ぜひ聴きたいと思っているが機会はほとんどない。吉本の人はラジオにあまり出ないイメージ。
小ゑん、白鳥両師みたいなツートンカラーの着物で登場。
上方落語界とつながりの深い鯉朝師の弟子、春風亭昇輔さんがマクラで触れていた程度。

遊方師、声が枯れててすみませんと。昼席ではボーカルなので。
ウルトラマンがすでに11代目で、米朝や春團治を軽く凌ぐという話。
ウルトラマンへの掛け声で、先代文楽やったら「稲荷町」なんて言いますがと遊方師。残念、それは先代正蔵だ。
くまモンのぬいぐるみのマクラから、ヒーローショー。
文福師がキャシャーンのヒーローショーの司会をした話。

サンダーマンのヒーローショーに強盗の手配犯が紛れ込んで、幼児を人質に高跳びしようとする。
ヒーローショーという日常の中のちょっとした非日常を、さらに究極の非日常が襲うという構造。
子供にとっては、「ぼくらのサンダーマンが悪いやつに襲われている」だし、ショーの主催者からすると「こどもの夢を壊してはいけないからなんとかショーを成立させなければならない」である。
高跳び強盗のほうは関係ないから自分の主張を繰り広げるが、結果的にどんどんショーの構造に押し込められていく。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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