月曜に池袋で、白鳥師の「3年B組はん治先生」を聴いてきた。
記事の反響は上々で、アップから24時間で個別アクセスが400を突破した。
この新作落語のストーリーは、「弟子が師匠を訴えた」ところからスタートしている。
その張本人、無事真打昇進も決まった吉原馬雀さんを聴きたくて、木曜は神田連雀亭へ。
落語協会の会長人事にまで、影響を与えたに違いない。
馬雀さん、話題になるのは当然として、1月に聴いた際大幅に腕を上げていて驚いた。
そしてもうひとりのお目当て、柳家小はださんは、はん治師の弟子。
兄弟子の小はぜさんともども、期待の二ツ目である。
祇園会 | 㐂いち |
粗忽長屋 | 小はだ |
サイン | 馬雀 |
つ離れしている。
小はださんは、「みなさんきっといつもお越しですよね」とテキトーな前説。
ちゃんと、飲食喫煙録音録画禁止は語っていたが。あと、空調の利きについて。
春風亭㐂いちさんは、前座時代に聴いて以来。
大師匠から来ているのであろう祇園会(祇園祭)。
この噺を、祭りの再現をするひとりキ◯ガイ噺としてやることにしたらしい。
それはいいけども、改めて難しすぎるぐらい難しい噺だなと。人が怒っている状況で楽しませようというのだから、難しい。
京男が本当に嫌な人だったらいけないのだ。
最近、春風亭一花さんと橘家圓太郎師で聴き、面白い噺だなと再認識していたのだが。
なんと12分で降りてしまった。
小はださんは、高座ではメガネを外す。
今日は落語協会の3人でして、黒門亭みたいなもんですねと。場所も近いですし。
前日の、さん喬会長が決まった総会の模様を。
ちゃんと会員の同意を得るため、挙手を求められたという。
しかし、おちゃらけた師匠がいきなり「ハンターイ」とかなんとか、そんなことを叫んでいたり。
噺家は、緩いほうがいいですねと。
ズボラでそそっかしい人とマメでそそっかしい人がいますと。
「ビール800円、瓶ビール900円」と書かれた張り紙を見て、「高いねえ」と言う人がいる。
よく見たら、「ヒール800円、ピンヒール900円」という、靴のお直しだった。
うちの師匠なんですけど。
面白いね、はん治一門は。
今師匠は鈴本でトリを取っていますのでよろしければと。
「アカ、出てけ」の小噺。
粗忽長屋の前に振る、擦り切れた小噺が小はださんに掛かると妙に面白い。
会話のトーンが必要以上にせりあがらないからみたい。先代小さん風の、昔ながらのやり方。
若手だと、メリハリつけてしっかり会話させ、そしてつまらなかったりするものな。
この「アカ出てけ」を、赤旗まつりの会場でやってしまった粗忽の師匠がいます。
うちの師匠です。客爆笑。
粗忽長屋は、文枝新作の多いはん治師が得意にしている古典落語。
本当に難しい噺だと思う。別に私は落語喋るわけじゃないけどもつくづく。
粗忽の噺の中では「松曳き」と同レベルに難しいなんていうのだが、粗忽長屋のほうがずっと難しいのではないか。
なにしろ宇宙人みたいなハチクマふたりである。客との接点が作れないまま終わってしまったり、平気でそうなる。
しかし小はださんは手練れ。会話に切迫感がまるでないためか、非常に聴きやすく、聴いてるうちにどんどん楽しくなってくる。
欠点があるとするなら、言葉が心地よすぎて、耳をすり抜けていってしまうことがあること。
でもまあ、心地よくないので耳にとどまる人よりはずっと将来性がある。
面白いことに、はん治師の口調が随所に出てくる。あの自然にもったいをつけた口調。ナチュラルモッタイ。
弟子の声は師匠とまったく違うので、モノマネっぽいのではない。自分の言葉で語るのだが、師匠のあの感じが自然と漂うのだ。
師匠そっくりなのはあまりよろしくないとされるが、なにしろ違う声なのに似てる部分が濃厚という、絶妙なズレが非常に気持ちいい。
ハチクマミラクルワールドを客に納得させるのは非常に速い。
相手をする町役人を強調しないためのようだ。
若手から聴く粗忽長屋、だいたい逆で、なんとか町役人を強調して攻略しようとするんだけど。
町役人たち、ハチクマの言うことを否定はするのだけど、拒絶はしていない。頭のおかしい人が増えちゃったねと軽い反応を示すだけ。
だから、客の脳裏に粗忽チームのなんとなくの正義が伝わるみたい。
そしてハチの兄貴は本気でクマの心配をしているし、何とかしてやらなきゃと思っている。
クマの野郎は、後悔にさいなまれている。
粗忽の正義が、現実を圧倒する瞬間である。
そのピークが、「あ、俺だ」なのだ。
非常にいい粗忽長屋だったが、時間はあまり使わない。
小はださんは18分程度。つまり30分を残して下りてしまう。
トリの馬雀さんに続きます。