さん喬師が落語協会新会長。
歓迎しているのだが、にもかかわらずかなり衝撃を受けた。
好きな師匠がトップに立つ喜びと、世界一不透明な選出法への不信感に引き裂かれる。
ちなみに昨日柳家小はださんのマクラで、ちょっぴり総会の様子を聴いた。
会員の同意を得ることには神経を使っているらしく、「賛同の方は挙手を」というくだりがあったそうな。
ちなみに「さん喬会長でない理由」なら、次の通りたくさんある。
- 若返り傾向に反する長老政治
- 弟子の喬太郎がすでに会長になるべき世代
- 柳家長期政権が続く
- 副会長でなく、常任理事でもなかった
- 病気もしている
(※ 常任理事でしたのでおわび訂正です。自分の過去ブログに書いてました)
柳家が続いて、古今亭や三遊亭、春風亭には異論はないのだろうか?
どうも、ないみたい。
古今亭は人間国宝も出たし余裕。
三遊亭のうち、圓歌一門は口を出せる状況ではない。
円丈一門は我関せず。
もともと柳家支配に最も不満があると想像する春風亭(橘家、林家もいる)はよくわからないけど。
とにかく落語協会の心ある人の中には、相当の危機感があるみたい。
危機感とは?
パワハラに端を発する師弟関係の混乱、そしてその帰結と思われる、女性前座の消滅。
そもそも入門者もひと頃より減り気味のようで。
落語界、そもそも文楽や能・狂言のように伝統芸能の看板掲げつつシュリンクしていくことへのおそれが常にある。
落語ブームと言われつつもずっと静かなブームだなんて自虐も聞かれるところ。
なにかのきっかけで弟子が入ってこなくなれば、アッという間に衰退する。
さん喬会長は、こうした背景を想像するとわかりやすい気がする。
何しろこの師匠は、喬太郎以下12人の弟子を育てている。孫弟子も2人。
多いだけなんてことはなく、質も備えている。
さらに、弟子育成の秘訣もしばしば書籍で披露している。同業者も読んでいるだろう。
パワハラで揺れる今、経緯はさておき協会員から望まれて就任したものなのだ。そう思っている。
喬太郎師も、師匠のおかげで現在があると繰り返し語る。
これに関しては、逆も真実だと思っているのだが。すなわち、惣領弟子喬太郎のおかげで、さん喬は名師匠になったのである。
喬太郎師も、さん喬門下における第2の師匠としての役割を担っていると感じる。
今回の就任の裏側では、喬太郎師もだいぶ動いていると想像する。
就任のコメントが、「上下の壁を砕き」とあったのは極めて象徴的。
まさに時代が生んだ新会長。
師匠小さんの方法論をいちばん実践してきたのがさん喬師。
同じように、小さん的に会長も務めていくのだろう。
ちなみに、小三治会長のやり方は、さん喬師の最も嫌いなものであったに違いない。
独裁で、全体を考えず変な理念でもって全部決めてしまう。
師匠としては、弟子の半分クビにして、孫弟子のクビまで切る。
落語協会員が柳家支配の継続に異を唱えないのであれば、それは小三治とその時代をさん喬師が否定していて、その態度が明確だからではないか。
今後なにが変わるのか。
師弟トラブルがあったら、協会が積極的に介入していくのでは。
師匠と相性の悪い弟子は、積極的に移籍させるのでは。芸協や他団体も含め。
辞めるやつは仕方ないとしていると、噺家という職業の根底にかかわる。
表に出てこない廃業も、関係者の認識においてはいろいろあったのであろう。
このたびの文枝招聘なんて企画は、きっと続くと思う。
さすがに芸協みたいに、他種目を充実させていくなんてことは、会員の多い落語協会ではやりづらい。
やってもらえるならいいけれど。
外交はどうなのだろう。
さん喬師は、立川流嫌いを隠していない。会長に就くなら、これについては今までのようにはいかないと思う。
向こうも一般社団法人となった。規模はともかく同格だ。
円楽党についてはどう考えているか、コメントを聞いたことはない。
正蔵師がこのところ落語協会を代表して前に出ていたが、なんだったのか。
ちょっと前までは、実際に新会長へのレールが敷かれていたのだと思うが。
今回、副会長が発表されていないのには、なんらかの歯車の狂いはあったのでは。
副会長残留はある気がする。まさか弟子の喬太郎が副会長なんてなかろう。
他に新理事の中から候補を探すと、たい平か。
たださん喬師が選ぶとしたら、寄席によく出てる人のほうか。
大抜擢なら菊之丞。
理事を見ると、常任理事だった扇遊師が退き、扇辰師が入っている。
それから橘家圓太郎、春風亭一之輔。色物では江戸家猫八。
弟子いびりのない、明るい落語協会に期待します。
ほんと、びっくらしましたあ。衆目一致で『正蔵』師とばかり思ってましたから…ある意味クーデターですよねえ。はたまた師が固辞したのか。副会長人事が・・・ますます興味津々です。
いや、衝撃でしたね。
正蔵師は、個人的には辞退しそうな感じもありますけども、一門の総帥ですからそういうわけに行かないとは思うのですが…
副会長、私は菊之丞師が面白いと思ってます。
将来の会長候補で。人望のほうはわかりませんけど。
お邪魔します。
吉原馬雀さんのブログによればかつて拍手一括で決せられた選挙が、今回は挙手による投票だったとのこと。正蔵師も従前のように政治力だけではどうにもならなかったのかもしれません。
ここからは推測ですが、投票となれば九蔵の件などの海老名家への反発も影響したのでは、と考えております。つる子師の抜擢も本来プラスに働くはずがマイナスに作用したのかもしれません。
馬雀さんのブログ読みました。情報ありがとうございます。
ただ、会長人事については承認決議はなかったようですが。