グルーヴ感満載の萬橘師の「代書屋」。
履歴書の依頼人の名前が「石丸伸二」だったのを思い出した。今回だけだろうけど。
「話が噛み合わない」から連想したんでしょう。
石丸と伸二と、名前がふたつあるんだって。いよいよ困惑する代書屋。
謎のお連れさんにスポットがあたり、そして前半の伏線を回収する見事なサゲ。
国立だったら一度幕を下ろすところであるが、前座さん(知らない人)がマイクを持ってきて、座布団を下げる。
色物は高座の前で。
投票日当日に聴いたばかりの宮田陽・昇。
大好きなこの漫才、今年3席目である。ネタも多く、飽きることはない。
寄席なので入りは、「あの人が拍手してない」。
相方は広島出身で。広い狭いの広いという字に鳥みたいな。
先週は、島津亜矢から「津亜矢」を抜いただった。いまだに一種類でなく、いろいろあるのが面白い。
そういえば、島谷ひとみから「谷ひとみ」を抜いたってパターンもあったっけ。
「秋田特有の、日本海を見つめ続けた暗い目をした菅元首相」のネタは、先週も聴いていたのを思い出した。
そこから岩手ドロボウには進まず、秋田の天才少年から円周率へ。
あと、立命館法学部からの国際私法のネタは久々に聴いた。離婚の認められていないフィリピン人が日本で離婚できるかどうか。
できるのか。わかんねえんだよ。
そして立命館を振っているのに、「大丈夫だよ。オレ早稲田出てるから」。
しまいは中国の省を全部やる。
これだけバラエティに富んでいるなら、毎月聴いたって飽きないだろう。
二人はネタ合わせなんてしてないと思うのだけど、どうだろう。
ともかく、どんなネタでもきっちりツッコむし、それに応じてまたどこに進むか、ボケとしても未定なのだろう。
それが予定調和のなさと、そしてコンビで漂わせる気楽な楽しさにつながる。
寄席の人気漫才でも、陽・昇ほどネタのつながりが自然なものはないと思う。
桂歌助師は、昨年の国立お盆興行のヒザ前で聴いた、都々逸親子。
マクラもワンセットの完パケ高座。
ちょっとガッカリしたのだが、でも意外なぐらい楽しかった。
不思議だが、二度目だからこそ楽しんだものでもあって。
歌助師、冒頭のマクラはもちろん、主役の雨花師について。
業界初のシングルマザーで入門した人です。
楽屋で懸命に働いているので、私も声を掛け、大船の会の前座を務めてもらいました。
そうしたら彼女はすっかり気に入られ、その後も何度も会を開いてもらいました。私はそのとき限りでした。
入門時に小さかった坊やももうはたちだそうで。
落語会に連れてきたこともよくあって、私ともよく話をしました。
仲入りは桂幸丸師。
実は初めてである。浅草お茶の間寄席では何度か聴いたが。
先日、Eテレの古典芸能の番組に出て、落語の物売りを紹介していらした。
この師匠も雨花師の話を語っていたはずだが、寝落ちしてしまった。
気づくと吉田茂の話をしている。
地噺だが、なんだか新作講談っぽいなと思った。
吉田茂は当然偉人として描くが、孫の麻生太郎を途中で登場させていじる。
仲入り休憩は、トイレが長蛇の列。小便器が3台しかなくて。
雨花師はまたロビーに出ている。
仲入り後は口上。
下手から、桂宮治(司会)、三遊亭萬橘、雲龍亭雨花、桂歌助、桂幸丸。
芸術協会の会長、副会長はおろか理事もいないという、極めて地味な口上。
司会が人気なのでそれでも成り立っている。
私のようなものが司会とは恐れ多いと殊勝な宮治師。
雨花ねえさんは、香盤で私のひとつ上で、一緒に修業した中です。
萬橘師は、雨花師とは昔から気が合いますと。合う人は最初からわかるものです。
なぜか下ネタに走り、宮治に「オイ!」と笑点っぽくツッコまれる。
現代のコンプライアンス基準からして、萬橘師の汚点にならないとも限らないので、残念ながらカットします。
「そんな意味じゃないよ」とは弁明してたが。
歌助師はなんて言ってたか。萬橘師をいじって、「ゲストゲスト!」と反撃されてたのは覚えている。
幸丸師は、運・不運という話。
コロナのときに昇進すると、大変だ。その大変だった人が宮治です。まあ、それでも整理券が出たから立派ですが。
雨花さんは、こうしてコロナも収まった今昇進で、非常に幸運です。
師匠、米丸のセリフも入る。皆さん死んだと思ってますがまだ生きてます。99歳です。
運がよくて、1割の努力しかしない人が売れることもある。9割努力しても売れないこともある。
そういうものだが、腐っちゃいけないと。
ともかく披露目というものはいいものです。
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