春雨や風子改メ雲龍亭雨花師の披露目、広小路亭も終わってついにラスト国立になっちゃった。
その初日である。
三連休はマジメに仕事していた。
代替会場は紀尾井小ホール。
国立の披露目はスタイル変わったのか、真打ひとりだけが披露目に出る落語協会方式である。
そして、師匠が顔付けされてない。
雷蔵師、披露会見に参加しなかったのであるいは披露目の口上に出席しないのではとも思ったが、寄席三場では出ていた。
難しい師匠だが、高座は聴きたいけれど。
国立演芸場公演は東京かわら版で割引あるが、今回はオンラインで買ってしまった。
ちなみに5日間あるうち、伯山先生の出る19日だけ満席に近い。
ぐずつきがちだが蒸しもせず、快適な日だ。
紀尾井ホールに向かうのに、四ツ谷からも赤坂見附からもなんだか気が進まず、麹町から出向く。
ロビーでは物販。桂鷹治さんと、女性。誰だっけと思ったが、神田鯉花さんか。雨花師匠も登場。
小ホールは狭いな、と一瞬思ったが、よく考えたら池袋演芸場よりずっと広い。
転失気 | わ大 |
黄金の大黒 | 音助 |
代書屋 | 萬橘 |
陽・昇 | |
都々逸親子 | 歌助 |
吉田茂伝 | 幸丸 |
(仲入り) | |
口上 | 雨花・幸丸・歌助・萬橘・宮治 |
たらちね | 宮治 |
東京ボーイズ | |
芝浜 | 雨花 |
主役の雨花師はなんと芝浜でした。
寄席がハネたら雨だった。向かいのニューオオタニで雨宿りさせていただき、ロビーで書いてます。
さて冒頭から。
前座は玉川わ大さん。
「前座でお付き合い願います。玉川わ大と申しまして浪曲師なんですが、曲師がいませんので今日は落語でお付き合いいただきます」
そうなんだ。確かに講談みたいにひとりではできない。
落語も修業にはよかろう。
転失気を掛けていたが、なかなか達者な語り口。
ちょっとうとうとしてしまった。
二ツ目は、結構楽しみにしてきた雷門音助さん。
一度しか聴いていないのだが、本格派の上手い人。
学校寄席や幼稚園寄席など振って、披露目の席ではおなじみ、黄金(きん)の大黒。
ワイガヤ噺だが、いちばん年かさの男が最初の口上をやるので、キャラ付けがわりとしっかりしてる。
羽織は絽だが、裏が新聞紙の「合わせ」。
二番手の男は与太郎っぽくはないが、ナチュラルに失礼なやつ。
突っかかるところのない聴きやすく楽しい一席。
真打は円楽一門会からゲストで、三遊亭萬橘師。
そういえば行かなかったけれど、風子の会ゲスト萬橘というものを検討したことがある。
なんでめでたい披露目の席に呼んでいただいたんでしょう。この1か月ずっと悩んでいます。
雨花さんはそんなにキャリア変わるわけではありません。
律儀に、お中元持ってきてくれたりしていました。最近来ませんが。
どうしてぼくのところに来てくれるのかな、友達いないのかなと思ってたんですが、できたのかもしれません。
高座に上がった際には掛けていたメガネを自然に外し、そして羽織を脱いでからも若干マクラを続ける。
段階的に、スムーズに噺に入りたいみたい。
スムーズに入った本編は代書屋。
どこから来ているのだろう。権太楼・文治系統でないことは確か。
円楽党では聴いたことがない。いずれにせよ、かなりの部分萬橘師が作り上げていることは間違いない。
山出しの女中(とは語られていないが)の、相手の決まっていないラブレターから始まる珍しい型。
これは瀧川鯉津さんから聴いた。
体重116kgのこの娘との攻防は、さすが萬橘師。スピーディに語りこみつつ、しっかりギャグも入ってしかし耳をすり抜けていかない。
そして、このくだりがサゲの伏線になる新機軸。
続いて履歴書のくだりだが、既存のものとまったく違う。
文盲で、言葉がほとんど通じない点は共通してるが、あとはほぼ萬橘師の創作に違いない。
噺のガワだけ活用し、中身を自由に作り上げる「ラジオ焼き」(でっち定吉命名)である。
なにしろ、二人で来るんである。お連れさんは何がなんだかわからない。
履歴書をヒアリングしつつ懸命に書いてやる代書屋だが、まともな会話にならないのでキレている。
代書の客に対し「バカじゃねえの」と言い放って、そっくりギャグになるのはスゴい。
代書屋の災難をじわじわ楽しむ、とかそんなムードはない。
もっとストレートに客の感性に伝わる楽しい高座。
コントっぽい。
どうせなら、3人目の訪問者を、オリジナルで作って欲しいなんて思った。上方のものとは違うスタイルで。
するとトリネタになるじゃないですか。
代書屋の最高傑作。ほんとです。
さすがは萬橘師という圧巻の高座。
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