㐂三郎をきくかい?(上・柳家㐂三郎「化け物使い」)

火曜日は神田連雀亭から堀之内寄席にハシゴ。
楽しんだ堀之内寄席だが、トリの昔昔亭喜太郎さんのショート新作3連発の内容がまるで思い出せない。
ある種のモヤモヤを抱えてしまい、結局水曜日、連日で出かける。本業のネタも思いつかないし。
出かけた会は非常に満足でした。本業のネタも思いついた。

ばばん場の馬石師でもいいのだが、ちょっと目先を変えてらくごカフェ、柳家㐂三郎師の勉強会「㐂三郎をきくかい?」へ。
終わってから調べたのだが、㐂三郎師、2021年以来で驚いた。
平日昼間かららくごカフェは大盛況。人気あるね。

化け物使い(短縮Ver.)
佃祭
(仲入り)
居残り佐平次
※それぞれおおむね30分

仲入り後に話していたが、㐂三郎師、9月の池袋下席主任を務めるそうな。
初の主任興行だろうか。行こうかな。
寄席の側も、若手真打の躍進をちゃんと見ている。少なくとも池袋と鈴本は。
実際、トリを取るのにふさわしい腕になっていることを確認した。

師匠が会長になった話題は出なかった。会長就任後初めての会だと思うのだけど。

ご本人登場後、久々の私も、Vサインはしっかり合わせた。
怪しいスタイルですねとご本人。そして、おなじみ様ばかりですねと。
そうでないやつもいるけど。でも今後おなじみになるかもしれない。一門自体好きだし。

カメラが入ってるので驚かれたかもしれません。
これはフランスの映画祭に私のドキュメンタリーが流れる、わけではなくて(ワイパーみたいな仕草付き)、寄席チャンネルの配信です。
お客さんは頭の後ろだけ映ると思います。
ドキュメンタリーなんか撮るわけないですね。しん平師匠の映画じゃないんだから。
しん平師匠の映画撮影は面白かったですけどね。
先輩もいますけど、撮影現場ではもう厳しい口調ですよ。監督は頭の中の映像を撮りたいわけですから、妥協しませんね。
噺家は、人を使うのが上手くないです。
前座さんにも、無意味に厳しくして嫌われるか、何もしないで気にも留められないか、どちらかですよ。

人を使うということから、1本目は化け物使い。
驚いたのだが、本所割下水に住むご隠居の人使いの荒さを描写しておいて、いきなり引越し。
ウルトラ奉公人の杢助は出てこないのである。こんなスタイル、一度も聴いたことはない。
そんなの成り立つの? と思ったのだが、なんと全然成り立つのだった。人情味は皆無だが、なくてもいいのだ。
1席終えてから、本来もっと長い噺ですが、今日は短縮バージョンですと述べていた。

ご隠居、奉公人を叩き出してばかりなので、引越しの際にも奉公人はいない。
人足をかき集めて引っ越すのだ。
奉公人が最初からいないため、化け物たちが隠居の餌食になる。理にかなった作り。

㐂三郎師の高座は、非常にアクションが多い。左右だけでなく、前後にもよく動く。
じっと見てるとトリップする。
化け物が出る前ぞくぞくっとするシーンが、オーバーアクションで繰り返されて面白い。
それにしても㐂三郎師、すごいなで肩。全然関係ないけど。

化け物は全員登場。すなわち、一つ目、大入道、のっぺらぼう。
一つ目小僧に、お膳を台所に片付けろと隠居。小僧が台所がわからないと言うのに対し、「お前のほうが前から住んでるだろう」と言って反撃させないのがおかしい。
そして隠居、小僧と入道には厳しいが、のっぺらぼうの女には意外なぐらい優しい。
針仕事を命じるが、ずいぶん優しく頼んでいる。
なんとのっぺらぼう女に、名前を与える。卵みたいだからおたまちゃん。
おたまちゃんの目鼻を卵のような顔に書いてやるが、これはやらないほうがよかったと。

ご隠居一か所甘噛みして、噛んだっていいじゃないかだって。

小僧と入道は、「布団を敷け」と命じられると抵抗して結局消えてしまう。
のっぺらぼうに布団を敷かせようとして抵抗されるのかなと思ったのだが、それは陳腐なのか、その前に消えてしまう。

サゲは狸が暇くれと頭を下げている状態でセリフを言う。ちょっと面白いサゲ方。
化け物トリオの楽しい一席。
長いものもやるのだろうけど、こっちのほうがいいかなと思った。杢助のシーンもいいのだけど、あそこに山場が来てしまうから、後半を長くできない欠点があるわけだ。

㐂三郎師、いったん席を立って水分補給。
みなさんもよかったらビールでもどうぞだって。
化け物使いでは羽織を脱がなかったが、2席目はすぐに脱いでしまう。
とにかく暑いんだって。
着物で行動している噺家も多く、真似してみたいこともあります。高い洋服買うぐらいなら。
街でお客さまと会ったときも格好付きますし。ただ夏はダメです。
あたしの私服なんて、子供の虫取りみたいです。

そういえば前日の神田連雀亭ワンコイン寄席のハネたあと、昼席の三遊亭好二郎さんが着物で客を見送っていたっけ。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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