神田連雀亭昼席8(上・柳亭市若「太三郎狸」)

8月もいろいろ予定しているので大人しくしていてもいいのだが、神田連雀亭の昼席がいい顔付けなので出かける。
トリが桂竹千代、その前が立川吉笑。
吉笑さんは、真打になったら聴く機会がだいぶ減りそうなので、今のうち。
それからもうひとり楽しみな人が、柳亭市若。

今日も暑いが、いいメンバーなのでつ離れしている。
市若さんがテンション高いおもしろ前説。
最後に一言。
マスクしているのは一向に構いません。ただ、笑顔だけでは演者までなかなか届きませんので、ちゃんと声に出して笑ってください。

蛇含草吉馬
太三郎狸市若
おしくら吉笑
蒟蒻問答竹千代

トップバッターは、一度も聴いたことのない柳亭市寿さんの代演で、三遊亭吉馬さん。
表の木札も見ず、メクリが死角にあったこともあり、登場で初めて知った。

市若さんのマクラを引いて、寄席のマナーについて。
特に先日の鈴本の指笛について。
なんだかわりと、非難されてる指笛客に同情的。
喬太郎師匠も、反射的に笑いに変えただけで、悪くは思ってないと思いますよと。
歌舞伎の大向うみたいなもので、やがて指笛が標準になって、鈴本がお金払って雇うかもしれませんとのこと。
伯山先生のスマホ音吊し上げなどに、思うところあるみたい。
寄席はマナーのムダに厳しいところじゃないんだから、怖がらないで行ってくださいっていうメッセージらしい。
でも、ここ連雀亭で言われても、誰に響くのか。

相変わらず、声をヘンに張り上げる人だなあという印象。
セリフの途中で、もう1段階上げていくのだが、音量がでかいだけで私は好まない。
ちなみについ先日、芸協で同じタイプの二ツ目に遭遇した。

バス車中の氷水の小噺。
ウケないのは当然だが、「教わったとおりなんで。時代背景とか、現代に合わないこともありそうです」。
古臭いマクラだって、演者によっては爆笑を呼ぶもんだが。
教えてくれたのは鯉昇師だろう。

2番手は愉快な前説の市若さん。
兄弟子市寿の不在を詫びる。もともとこういう人なんだって。
というか、いない理由知らないから、どうこう言われても。

こう見えて食べることが大好きです。
みなさんも夜中お腹がすいて、コンビニに駆け込みますよね。
おにぎりかチャーハンが食べたくなります。
先日夜中に日高屋にチャーハン食べに行きました。脂ギトギトで、スープのほうも脂浮いてて、そんな組み合わせが大好きです。
コンビニ行くと、チャーハンおにぎりがあるんですね。
チャーハンって、油でもって米粒を離してパラパラにするもんでしょ。
それをギュッと寄せ集めておいて、これをあっためるとまたバラバラになるんですね。
これが旨いの。

オムライスおにぎりの話も。
半年振りに聴いたら、またスピーディで情報の多い話術がアップしている。
師匠・市馬とまるで似てない鬼っ子弟子のようでいて、師匠のエンターテインメント性は見事に受け継いでいる。

浅草演芸ホールの幽霊の話。
住吉踊りは出る芸人が多く、楽屋がいっぱい。なので日頃使わない、2階3階の楽屋にまで人がいて、打ち合わせや踊りの稽古をしている。

用事があって、夜席が始まってからも寄席にいた市若さん。
上の楽屋から、師匠がたの笑い声がする。
帰りづらいところだが、挨拶して帰ることにする。
中に入って挨拶するが、誰もいない。さらに上の楽屋にも。
ああ、これが伝説の幽霊か。
寄席を出ようとすると松倉社長に出会ったので、幽霊に会いましたと話をする。
また出たのとのんきな社長。
出てもいいんだけど、幽霊はカネにならないね。お足がないから。

楽しい漫談を切り上げて入った本編は、シリアスな地噺。
でも、この演者なのでユーモアに満ちている。
祀られるのは狐が多いが、狸もいる。
四国を司る、太三郎(たさぶろう)狸。
平成狸合戦ぽんぽこでもおなじみ。
屋島の神社に祀られるようになった、鑑真和上のエピソード。
そして大坂で人を殺して逃げてきた男が、女に屋島の神社への行き方を案内される。
いい女だから、いただいちまおうと男。このときの演者の顔が悪いのなんの。
しかし道は海につながり、そして女に手を出そうとした男は、巨大蟹、白扇シオマネキの餌食に。
またあるとき、善良な男がカニの餌食になるところを、太三郎狸に救われる。

こんな噺は知らない。
伝承から仕立て上げたのだろうか?
サスペンスと、多少のバイオレンスにも満ちた、見事な一席。
女を襲おうとした男が、最後に聞いたのがスパっという音。
マンガや映画のホラーシーンではないか。

高座下りる際は、「ハクセンシオマネキの由来」と語っていたが、ホワイトボードには「大三郎狸」(太い、じゃなくて大きい)と書いてあった気がする。
調べる限りは太三郎。

(追記:ホワイトボードをアップしている人のによると、ちゃんと太いほうで書かれてました)

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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