1月に訪れた、馬遊・喬太郎の会へ再訪。
馬遊師によると前から予定されていた会ということだったが、開催を私が知ったのは直前である。
情報がアップされたのは、東京かわら版最新号と同時期ではなかったか。
なので私にも予約が取れているのだ。
珍しいことに、前日に「残り3席」と告知が出ていた。満員とはいえ、売り切れるスピードが遅かったのだ。
らくごカフェは、1週間前に喬太郎師の弟弟子、㐂三郎師の勉強会に来たばかり。
そちらも盛況だったが、この日は50席作っているからレベルが違う。
静脈瘤破裂(近況報告) | 馬遊 |
蜘蛛の糸 | 喬太郎 |
(仲入り) | |
一中節門付け | 喬太郎 |
鰻の幇間 | 馬遊 |
高座には釈台。二人兼用である。へんな落語会。
よたよたと金原亭馬遊師登場。
本当にヨボヨボ。まだ50代なのに。
よっこらしょと腰を下ろす。
上がっちまえば、仕事の半分は終わりです。
「死に損ないがやってまいりました。4月から6月まで、2回入院しまして」
入院したなんてまったく知らなかったが、なにせ前回、この師匠がいかに瀕死の状態だったか、ゲストの白鳥師から入念に聞いている。
なので意外感はまるでなくて。
この近況報告漫談が30分。
たまらなく面白かった。こんな漫談の語れる人は、いない。
生と死のきわきわを生きているわけだが、だからといって卑屈でなく、悲壮感もなく。
生きている喜びに溢れているが、しかし喜びは実にひっそりしたもの。
ともかく、古典落語より面白いんじゃないかと。
外出しようとして、路地を抜けたところで立てなくなる馬遊師。
「フラフラフラフラフラっと来まして」。フラが多いな。
ご近所が助けてくれて、救急車で搬送、即入院。
尋常でない低血圧と、飲み過ぎで肝硬変になりかかっている。
毎日内視鏡など検査の連続。
そしてメシはまずい。おかゆならまだいいが、重湯である。
そして初体験。大人用紙おむつをさせられる。
看護師さんに局部を見られるし、実にもって屈辱。
次の喬太郎師が、この漫談(漫談なのかと言う疑問もぶつけつつ)、ネタ帳に何と書くかという話をしていた。
「恥辱の病棟」なんてどうでしょうかだって。後期日活ロマンポルノ風で。
ちなみに今日のタイトルにした「静脈瘤破裂」はでっち定吉が付けたものである。キョン師のほうが面白いけど。
そもそも漫談をネタ帳に、なんと書くかは、前座のセンス次第らしい。
そういえば「ガーコン」という演題を付けたのは、古今亭右朝であったという。
寝たきり老人みたいなもので、床ずれになりかける。
肛門周りもカブれ、これも脚を持ち上げられ、看護師さんに薬を塗ってもらう。
ようやく退院してから飲み仲間に、看護師さんに世話してもらって反応したんじゃないかと言われましたが、そんな元気はありませんと馬遊師。
肝臓も回復し、ようやく退院できた。
あるとき、自分の部屋で急にもよおした。
1階のトイレに行かなきゃ。
しかし、なんとキッチンで、粗相してしまう。どうしたことだ。
これが下血であった。下が真っ黒だったという。
出血したので一旦意識を失う。それでもトイレは行って、また血を出したが、出てから倒れ込んでしまう。
同じアパート住人の世話で、またしても救急搬送。
静脈瘤破裂だった。
病院では、当たり前だが高満さんと本名で呼ばれる。馬遊さんとか師匠とか呼ぶ人はいない。呼んでほしくもないけれど。
関西出身らしい看護師はとても口が悪く、師匠に向かって「くたばり損ない」なんて平気で言う人。
二度目の入院で、「久しぶりい、元気?」なんて言ってくる。
でもなんだかとても嬉しそうな馬遊師。
看護師さんには慣れましたけど、女性のことは全然平気にはなりません。
二度の入院で、すっかり体力筋力の衰えた馬遊師。日々歩いている。
とはいうもののこの暑さでは、外で倒れて迷惑掛けてしまう。
まだ寄席に10日間出る体力はないが、今日は1日だけだから杖ついて出てきた。
まだ生きていたいなと思いましたとのこと。
お酒は厳禁。
オリンピック観ながらノンアルコールビール飲んでいる。
最近のノンアルはすごく旨いですね。最初の2〜3本はビールと一緒です。
飲んでる気分になるかと言ったら、なりませんけど。
ともかく、24時間シラフというのは不思議な感覚です。
今日はこのあと喬太郎師匠が一席やって、その後が私ですと。
でも喬太郎師、二席でしたけど。
プログラムも把握してないんだな。いいけど。