トリは桂竹千代さん。
赤い着物に袴姿。
お客さまに、噺家さんは長い噺も覚えててすごいねって言われますけど。
間違えてることもよくあります。ただ、間違いをお客さまに気づかれない技術ぐらいは持ってます。
お客さまのほうは、一言一句落語のセリフ覚えてるわけじゃないですから。
いま3席ありましたけど、全員どこか間違えてますよ。
やってるほうは、あのセリフ忘れちゃったけども辻褄合うかなとドキドキしてるんですけども。
中には、昔の音源聴き尽くしているご通家の方もいらっしゃって。あ、あそこ抜けたなんて言われることもあるんですね。
でも、堂々としてればいいんです。堂々としてれば、演出として抜いたんだと思ってもらえます。
私でっち定吉もよく、あそこが抜けた（なかった）なんて書いてるから、ちょっとドキッとした。
抜けたからダメだなんて書いてはいないけど。
そもそも、演者が毎回同じセリフを喋ると思ってないし。
お客が演出だと思ってくれたが実は間違えただけ、というマクラを柳家甚語楼師が振ってますね。
あと宗教ネタ。
竹千代さんは先日、源氏の始祖である源頼光について講演した。
あまり知られていない人だが、坂田金時など四天王のひとり。
同時代の安倍晴明は有名だが。
源頼光、史料も少ないのだが、ひとつあった。
「源頼光の霊言」、これは大川隆法の著書である。
食わず嫌いはいけないと思って、読んでみる竹千代さん。
中身はほぼ、イタコの口寄せである。ただ、「イタコではない」とも書かれている。
そして、死者の霊言なのに、しばしば大川隆法の他の著書の宣伝がなされる。
講演の際、名前が一緒なのでゲストに坂本頼光先生を呼んだ。
坂本頼光は大川隆法に憤っていた。
水木しげるのアシスタントであった坂本頼光は、大川隆法が水木しげるの霊言も下ろしていたのに激怒している。
水木先生は戦争で片腕になったのだ。その人が幽霊になって、両手を出すものか。
マクラはすべて、すべて蒟蒻問答のフリなのであった。
蒟蒻屋の親方が、なんにもわからないくせに堂々立ち向かうさまを先取りしているのである。
噺家も、そして宗教家も堂々としていればいいんだと。
信じている人にとってはそれは真実なのだ。
ちなみに、マクラ振り終わったこの時点で、午後2時45分。
残り15分。
この時間でできるの？と思ったが、17分くらいで終えた。すごい。
蒟蒻問答はもともとあまり好きじゃない。
やたら長いから。
長いわりに、間の抜けた場面が多い。
演者のほうは、田舎ののんびりした感じを出したいなんて思ってやってそうなのだが。それほどは長さに効果のない噺。
へっつい幽霊（若旦那の出てくるほう）にも同じことを思う。
鯉昇師が「餃子問答」にしているのはこの対策なのだと、私なりに勝手に理解している。
上州安中という具体的な場所と背景を省くと、意外なぐらい短くなる。
竹千代さんにも、長い蒟蒻問答への問題意識があるらしい。
本当にムダを省いている。
蒟蒻屋の親方の背景は描かない。
八っつぁんが坊主になるまでも早い。すでに毛がないし。
問答の坊主が来てからも、寺の備品をバッタに売る場面はないし、逃げ出す相談もまとまっていない。
蒟蒻屋の親方がたまたまやって来て、翌日の問答となる。
そして翌日もまた早い。親方の衣装を整えたりはしない。
なるほど、これだけ削ると、15分強でできるのである。
削ったら物足りないなんてことはない。
噺の骨格は強い。そして寺の隠語や、いざとなったら問答の坊主埋めちまえなんて不謹慎なクスグリはすべて残してある。
竹千代さんの蒟蒻問答、聴いたことがあったような気がしたのだが、違った。
唖の釣りにおける「身振り手振りがなぜか伝わる」という所作の強烈なギャグが、蒟蒻問答をヒントにしてるんだろうと思ったことがあったのだ。
今回の蒟蒻問答の所作自体実に大振りで、その唖の釣りを思い出した。
顔もコワモテなので、蒟蒻屋の親方にぴったり。
所作の楽しい竹千代さん、他になんの噺があったっけ。
「だくだく」は以前聴いた。
あと、引越しの夢なんてやらないかな。
実に中身の濃い昼席でありました。
都営地下鉄の1日券を持っているので、ハネたあとは練馬まで行って20%還元で買い物した。
なんだ落語はオマケか。そんなこともないですが。
8月は「いたばしPay」20%還元だから、また1日券で出かけます。
本日も早速。
