柳家三三平日昼の独演会 その1(柳家小もん「もぐら泥」)

このところ毎日午前0時にアップしていた。
今日は久々の「撮って出し」。
閉演後すぐにアップして悦に入る。
スポーツの秋。
私にとってのスポーツなのである。

阿佐ヶ谷アートスペースプロットに行くつもりだったが、文京シビックホールでやってる柳家三三平日昼の独演会を見つける。
ゲストが、真打昇進と蝶花楼馬楽襲名の決まった柳家小もんさん。
会の名前に「質問コーナーあり」とある。質問はしないが、これは興味ある。
三三師は私にとって、らくごカフェの「三三と若手」と併せ、平日昼間に聴く人になってしまった。
昼でも集客力はすごい。

このあたりよくうろうろしているのだが、シビックホール小ホール、初めて来た。
立派なホール。
客席が階段状で見やすく、そして池袋演芸場なみに明るい。

もぐら泥 小もん
女天下 三三
(仲入り)
質問コーナー 三三・小もん
品川心中 三三

 

幕が開くといきなりメクリは「柳家小もん」。

そこのメクリにあります通り、柳家小もんと申します。
あんまりこういう芸能はないですね。芝居で横にメクリが出たりしないでしょ。
でも、似た芸もあります。動物園行きますと、こんなの書いてますね。
◯◯目の△△科のなになにと。
私は落語家目の柳家科みたいなもんですね。
今日はおおぜいさまで。
今日は質問コーナーもあるとのことで緊張します。

真打昇進襲名決定の話は自分からは振らない。
あとで三三師がフォローしてたが、実に奥ゆかしい。

我々の方ではよく泥棒の噺をします。
差支えがなくていいですね。客席のほうから、「俺の悪口言いやがって!」という人がいたら捕まえたらいいんですから。

泥棒小噺、「鯉が高い」を振る。
強盗が奪ったのが50両。しかし奪われた料理屋の亭主が提供した鯉こくの代金が50両。
ここ、すごくウケてた。
オチで拍手が飛ぶ。
小噺に拍手飛ぶのは好きじゃないのだが、でもそれだけ見事な持ってきようだったのだ。
強盗に入られた主人が、のんびりしてるのがいいんでしょうな。それゆえに、いったいどうなるだろうと思わされるのだ。

鯉が高い、はどの泥棒噺の前に振ってもいいわけだが、もぐら泥とは相性いいのかも。
蜃気楼龍玉師が、もぐら泥の前に振ってたのを思い出す。調べたらもう6年前か。

泥棒の種類にもぐらなんてのがいまして。
昔の家は基礎なんかなくて地面に乗ってるだけですから、こう、家の下を掘ると、掘れるんですな。で、腕を伸ばして掛け金外して侵入するという。
昼間のうちに、汚い格好して杖でもついて、あたりを付けておくんです。印をつけたりして。

もぐら泥は珍しめだけども、小もんさんが語ると珍品感が一切ないから面白い。しょっちゅう掛かってる噺に思える。
これ、上方のほうがメジャーじゃないですかね。あちらではおごろもち盗人という。

どこも強調しない。それゆえに面白いという、ザ・柳家の芸である。私はこれゆえに柳家が好きなのだ。
商家の旦那が、夜中にそろばん弾いているが数字が合わない。かみさんに訊くと、反物買ったと白状する。
ここだって「実はこれも買った」みたいに広げるクスグリが、特に上方にはあるわけだが、そんなのは入れない。
旦那は、晦日の払いができなくなって困っている。そこで、泥棒捕まえて番所につき出し、2円も手に入れようとなる。
実に自然な流れ。

旦那のセリフと、掛け金に手を伸ばして必死なもぐらのセリフとがシンクロするのが楽しいのだが、ここも強調しない。
かみさんに、見てみろ土間をと旦那。
あらやだ、手が生えてる。
もぐら(の手)、たちまちふんじばられて御用。
浮かぶ絵が見事。

もぐら、泣き落としと恫喝を繰り返す。
しかし、「70になるお袋がいまして」と泣き落としたあと、「俺の50人の子分が黙ってない」では、さすがにバレバレ。
子分50人いるやつが、お袋養うのに必死なわけあるか。
このままでは済ませない、いつか必ず出てきて火をつけてやるという恫喝には、「この家は借りてるんだ」と旦那。

このくだりも、常に8割の力で進めるのがたまらない。
過去聴いた、数少ないサンプルのもぐら泥と違うねえ。上方とも全然違う。
そして、4人目の登場人物、もぐらが救いを求める通行人の男。
これまた、実に軽い。
すかんぴんで酒も飲めない男。そのペーソスを強調したっていいのに、まるでその誘惑に駆られない。

もぐらに小便引っ掛けてったたちの悪い犬とすれ違ったので、俺も小便してくかと。
流れにムダがない。そこで、くくりつけられたままのもぐらに話しかけられる。
泥棒の言うとおりに背中からがま口を出してやるが、そこから猫ババするまではあっという間。
逡巡が一切ないところがたまらない。
世間にはない芸だなあと。
もっとも小もんさんを褒めるのに、「引き算の美学だ」みたいな手垢のついた言葉で済ませるのも違う。
引き算しまくった結果、それがゆえにたまらなく面白い、そこを褒めるべきだと思う。

幸せな一席でした。

続きます。

4時過ぎに閉演した会で、メトロ・エムのマックでもって4時45分に仕上げました。スポーツの秋。
ただ、明日のアップは遅いかもしれません。
(と思ったら、その日のうちに書けましたので7時にアップします)

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