かみさんの強さを小三治夫妻で描いておいてから、本編へ。
棒手振りの商人が帰ってくる。帰ってくるなりかみさんに、帰るのが早いと責められる。
今日は(魚を)売り切ったんだよ。
あらそう、じゃ、ご飯の支度にしましょ。お願いね。
なんで俺が作るんだよ。俺は外で働いてきたんだよ。
なに、外で働いてたって、ご飯作って恥ずかしいことはないんだよ。そういう世の中なんだから。
この、「熊の皮」に似ているが細部の結構違う噺は、「女大学」ではないか。
昨年、珍品好きの桂銀治さんから聴いた。
この魚屋は、甚兵衛さんではなく名前を金太という。
帰る際にチラッと公開ネタ帳を見たら、「女天下」と書いてあった。
あ、そういうんだと思った。
だが、大きな勘違いをしていたかもしれない。そもそもこの噺、「女天下」としか言わないのかも?
柳家小袁治師が喬太郎師の番組で出したときも、演題はそうだった気がしてきた。
なので、そこそこアクセスを集めた銀治さんの記事も、タイトル訂正しました。劇中に貝原益軒の「女大学」が出てくるが、演題は「女天下」です。
ようやく湯に行く許可をもらうが、かみさん厳しい。30分で帰ってこないと家に入れないよ。
湯に向かうと銀行の偉いさんである山田さんの帰宅に遭遇。何の気なしに見ていたら、銀行では幅を利かす山田さんも、家ではからきし。
根津先生のところへ署名をもらいに行くと言ってようやく出してもらう。
一部始終を見て同情する金太。
ふたりで根津先生のところに出向く。
山田さん、署名をもらうのは本当なのだが、それ以外に先生に頼みがあったのだ。
どうかうちの女房たちに、「女大学」を読み聞かせて欲しい。女の本分を語って聞かせて欲しい。
怒り出す先生。君たちはなぜ人に頼るのか。女房ごときに頭を下げてどうする。必要があれば腕にものを言わせなさい。
先生「この世は男尊女卑なのだ! 男尊女卑! 男尊女卑!」
そこへ書生さんが声を掛ける。
先生「なに、客席が引いてきた? 構うものか」
でも本当は書生さんは慌てて声を掛けたのだ。奥さまがご帰宅ですよ。
早くそれを言いなさい。
明治の空気たっぷりの落語であるが、あの時代の「強い女性」と、現在のそれではだいぶ中身が変わっているのに、本質が変わらないところが落語のすごいところである。
長いマクラのあとの1席めとして、非常に面白かった。
ただちょっと終盤、流れが滞留している気もした。
この「女天下」、展開は誰にでも想像できるものだ。噺の価値とは関係ない。
想像できる流れにスパッとたどりつかないとダレちゃう。
この益田太郎冠者作の明治の落語、どうやら、「最古典化」が求められている。
真の古典になるためには、刈り込まないと。
やはり掛けられる回数でしょうか。
熊の皮や加賀の千代も、ひところよりずいぶん掛かるようになった印象。次はこの女天下じゃないでしょうか。
仲入り休憩後、幕が開くとメクリと座布団がない。
三三師がなんだったか、出囃子にのって現れる。
三三師が紹介して、アンケート箱を抱えた小もんさん登場。
背の高い三三師と、同じぐらい背の高い小もんさん。
楽しいコーナーだったが、先に少々の不満を書いておく。
振り返るとちょっと長かったな。
私は常に自覚してるが、セコでケチな男である。
同じ木戸銭で、時間が伸びるとそれを喜ぶおアニイさんだ。実際、この後大ネタの品川心中だったのだから、トークで落語が犠牲になったわけでもないのだ。
しかし先の「女天下」だって、もっと刈り込めばもっと楽しくなるだろう。トークだって同じだなとは思った。
いろいろ楽しい話を聞けたわけで、文句なんかではないのだ。
でもサービスで喋りまくる三三師に、頑張ってやりすぎる二ツ目さんの高座をちょっとだけ連想したりなんかして。
トークは高座と違って型がないから、ついやりすぎてしまうのかも。
質問を読み上げるのは小もんさん。
まずは蝶花楼馬楽襲名の理由が語られる。
師匠からは名前変えろよと勧められた。では、なぜ馬楽か。
これは、小里ん師が七代目馬楽と同期だったのが大きいのだと。年に一度、必ず一緒に飲む仲だったそうで。
なので小もんさんも馬楽によくしてもらっていた。
三三師も、人格穏やかな人だったと。
三三師は、蝶花楼がなぜ柳家から出るのかについて客に解説。
四代目小さんは、小三治から小さんになる前、馬楽だったんですよ。
それからその次の馬楽は、その後の八代目正蔵(彦六)でした。この馬楽は、四代目小さんの身内でした。
だから、馬楽になった以上次は小さんだと思っていたのでしょう。でも小三治が小さん(五代目)になっちゃった。
それでぐれて正蔵になったんです。
だから正蔵っていうのは、ぐれてなる名前なんですね。
七代目の師匠は、二ツ目時代は蝶花楼花蝶という名前でした。上から読んでも下から読んでも蝶花楼花蝶です。三遊亭遊三みたいなものです。
(小もんさんに)花蝶よりも、やっぱり馬楽?
そうですね。大きさが違いますので。
いっぽう、桃花さんが蝶花楼なのは、彦六の系統だからです。柳朝、小朝と来て、ぴっかりさんが蝶花楼になったわけです。
(小もんさんに)桃花さんには報告したの?
ええ、電話したら喜んでくださいました。
「なんであんたとあたしがきょうだい弟子になるのよ!」とか言われなかった?
そういうことはありません。蝶花楼を二人で支えていきましょうと言ってもらえました。