鶴めい七叶亭2(中・雷門小助六「禁酒番屋」)

思い出したけども夢丸師、不思議なクスグリがあった。
「イーピンが通ったら当然チーピンも通ると思ってるようなもんだ」
イーピンか通ることとチーピンが通ることとは、無関係ではないでしょうか。スーピン通ったのならまあ、わかるけど。

二番手は雷門小助六師。
最近よく聴いている気がしたが、そのとおりで今年4席め。
作りこんだマクラが楽しく、珍品を気負いなく出し、スタンダード演目も正攻法でしっかり楽しいという、スキのない人。

揺り戻しというものがありまして。
とマクラを始める。なんのことか。

私は松戸に住んでまして、出身でもあります。
先日、千葉県を豪雨が襲いまして。
ヨネスケ師匠が、千葉県出身者を集めてチャリティ落語会を企画したんですね。
千葉県出身者、全員数えたら30人を超えているそうで。多すぎるので、芸術協会と、あと一之輔師匠に、市川出身、出身じゃないらしいんですけど高校が市川の菊之丞師匠を足して、開催されました。

ヨネスケ師匠はYou Tuberです。落語界初の迷惑系ユーチューバーですね。
最近桂が取れて高座名もヨネスケになりました。
私も小助六の「小」だけカタカナにして、「コ助六」にしようかと思います。ヨネスケ師匠には喜んでもらえるでしょうが、師匠をしくじりますね。
ヨネスケ師匠早速カメラを回して、私もインタビューされました。

えー、千葉県はもともと国が3つ、安房上総下総とあってなかなか団結しませんけども、今回珍しく結集しました。この機会を大事にしていきたいです。

そうしたら、一之輔さんも昇也さんも、みんな同じこと答えてまして。
日頃団結しなくても、発言は団結するんだなと。
私正直、茨城の取手とか土浦とか、あちらの常磐線沿線のほうがなじみを感じます。鴨川とか言われてもどこだっけと。あ、イルカのいるところねという感じです。
居酒屋で知らない人同士が、「ぼくは函館」「ぼくは稚内」と盛り上がっていました。函館と稚内なんて大変な距離がありますけど、同じ北海道ということで同士なんですね。うらやましいですね。
ともかく無事に会は終わりまして。演者はノーギャラです。
会場の費用を差し引いて、160万を超える額でしたが、これを振り込みました。
普段は、このあと打ち上げです。でも、打ち上げしてるところをもしファンの方に見られたら、寄付する前に抜いてるんじゃないかと思われるかもしれません。
そんな配慮で、今回は打ち上げなしです。みんな別れて帰りました。
私は新宿の夜席がありました。そちらでは打ち上げしてますけど、それは別の話です。
この後、千葉県庁に目録を持っていきました。それが昨日なんです。
ヨネスケ師匠と私、それから遊雀師匠ですが、遊雀師は寄席があるということで帰りました。
そうしたらもう、さすがに打ち上げてもいいだろうということで。ヨネスケ師匠、ずっと我慢してたんですね。
午後2時から飲み始めて、終わったのが9時です。7時間です。
ヨネスケ師匠の息子さんが私と同世代なんていう関係ですよ。ありがたいですよ。
でもさすがに、私も途中でちょっと帰りたくなりました。なので、落語の話を持ち掛けました。
そうしたらヨネスケ師匠、落語好きなんですね。嬉しいねえ落語の話ということで、また盛り上がりまして。

お酒も我慢しなきゃいけないと思うと飲みたいものでして。
と、実に綺麗に禁酒番屋につなげる。

マクラは、きちんと設計している人と、その場のアドリブ(と見せている)人とがいる。
設計している人の中では、小助六師が一番面白い。
設計してマクラがつまらない人は、自分の喋りたいことだけ喋って、客には興味がなかったり。小助六師は、客の興味を引かないことは喋らない。

この禁酒番屋、一度聴いた記憶が。2年前に元住吉で聴いた演目。
ご家中の月見の会で、二人のさむらいが腕試し。切り殺したほうが切腹。
そこから始まる。
実にスタンダードな一席。どこも突出しておらず、どこも足りなくない。
説明過剰になる部分もない。
段階的な酔いぶりも見事。
唯一特徴的なのは、小便を女中のも詰めるところぐらい。ここは上方ふう。

水カステラと油の瓶を、ポンと抜く音が珍しい。
しょんべんのときは入れないんだなと思った。
しょんべん持ってく際は、ごにょごにょ言って三度目で「植木屋です」。
しょんべんのご注文でと断るが、役人のほうは今さらなに言ってやがると思っているので、その点はまるで気にしていないのだった。
あまり追求せずに、とっととお役目にかかる。

いつも見事な小助六師である。

続きます。

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