ちいかわのほうにはいろいろな登場人物が出てまいりまして。
ハチワレにうさぎにくりまんじゅう、人のいいのが鎧さん、泣き虫でちいかわなんてこのあたりが出てきますと話の幕開けで。
今月やっと「ちいかわ」の映画を観にいきまして。
といって、最初から観ようと思ってようやく行ったわけでもない。なんだか急に行きたくなって。
実に面白かった。
その前に観にいったトイ・ストーリー5が、これも間違いなくよかったのに霞んでしまった。
もともと、息子がかなり早い段階からちいかわにハマってたので、結構観ていた。
サブスクに入った際は集中してアニメを観ていた。
その息子は、マンガで全部読んだからいいやと言って映画は行っていない。変なやつ。
劇中の結構重要なミュージカル要素など、さすがにマンガでは楽しめないと思うのだが。
今日はちいかわについて、少々無理やり落語の要素に寄せて語ります。
ネタバレはしません。
ちいかわの普段のアニメはなにせ1分ちょっと。
この範囲で、起承転結。まあ、次の回に続いていくので、結は甘いこともある。それは全然いい。
ともかく、この短いアニメがどう映画になるのかなと。
そう思っていたら、まるで違和感なくて驚いた。
そしてちいかわをはじめとする登場人物たちも、まるで日頃と同じ。新たな属性が付け加わったりしない。
ドラえもんの映画で、ジャイアンがいい奴になったりするようなことはまるでない。
モモンガも普段通りの嫌味なやつ。くりまんじゅうはいつものように飲み続けて、そして二日酔い。
秘訣は、日頃の1分アニメにおいても、視聴者を必要以上にびっくりさせようとしていないことだろう。
ストーリーが消耗しづらいのだ。
一つ一つのシーンを丁寧に描いていくと、ちゃんと次につながる。
だから映画ならではの無理がない。
こういったこともあり、マンガ、アニメとの断絶がまるでなくてびっくり。
マンガとアニメの間の断絶がないのがまずすごいのだが、映画もまた別だと思うのに。
今回フジテレビはちいかわのおかげで大いに潤ったであろう。しかし本来フジテレビは、徹底してコラボをやってきた会社。
コラボするスポンサーをかき集め、そして商業化のための要素をストーリーに付け加える。
こうやって原作をいじりまくることが絶対に悪だなどと言わない。商売なんだから。
でもちいかわは原作者がすみずみまで監修し、監督もそれを全面的にバックアップし、断絶のない作品を作った。
フジテレビの出番がない。
これは画期的なことだと思う。
もっと大事なのは、その結果が商業的にも大成功を生んだということ。
で、落語との関連である。
主人公ちいかわは、十分に言葉を喋れない。
喋れなくてもいいのだが、設定上やや問題がある。視聴者が、何を言ってるのかわからない。
これについては、二つの方法論で解決していて、その方法論がどちらも落語っぽい。
- 表情で伝える
- ハチワレが通訳してくれる
表情で伝えるというのは、言葉と違い解釈の余地を残すのがいい。
映画の中で、ちいかわが自分だけ知った秘密を守るシーンは、真の解釈は視聴者にゆだねられるのだ。
落語もそう。
ちりとてちんにおいて、隠居が寅さんという嫌味ばかりいう男に対し、腐った豆腐を食わせる真の目的はなにか。
「単純な嫌がらせ」「たしなめ」「相手の対応とワンセットで楽しんでいる」なんだっていいわけである。
隠居がどういう心理状況にあるのかは、直接には語られない。
これが物語を深くする。
言葉を操れるハチワレは、ちいかわの意思は全部わかる。
ちいかわがごにょごにょ語ると、ハチワレは視聴者のためにダイジェストで伝えてくれる。
落語にも、相手に語らせないというやり方があるでしょう。
目的は違うのだけども、なんだかとても落語っぽさを感じる。
落語との共通点はそれだけか。もうひとつある。
どんな危機的な状況であっても、なんだかのんびりしているのが落語っぽい。
これは、うさぎが貢献している。
敵と戦うどんな緊迫したシーンでも、うさぎだけはいつも冷静、というか状況に合わないモード。
さて、新たなアイディア。
落語「夏の医者」をちいかわたちで作ったら面白いと思うのだ。
うわばみに飲み込まれたいつもの3人。
「なんだここ。お腹の中だ。うわばみの」とハチワレ構文のハチワレ。
「ハア?」とうさぎ。
このままだと消化されてしまう。「うう…」とさすまたにしがみついて泣いているちいかわ。
ハチワレは、どうやって出たらいいか考えている。
うさぎは、完全にいつものモード。とりあえず、うわばみの胃の中を駆け回る。
そうこうしているうちに泣き虫のちいかわが思い出す。もらった腹下しの薬があった。これをピンクのポシェットから取り出す。
ハチワレが「まこう。薬を」と宣言する。
うさぎが、「ヒイー、ヤッハー」と駆けずり回って薬をばらまく。
ハチワレが「なんとか、なれー」。
じきにうわばみがもだえ苦しんで、3人は出口から排出され無事脱出。
汚れたハチワレがちいかわに微笑んで「ちょっとくさいね」。
ちいかわは「ウン」と満面の笑み(シャレではない)。
そこで気が付く。ハチワレとちいかわのさすまたを、うわばみの腹に置き忘れてしまったことを。
もう一度うわばみに、飲み込んでくれないか交渉するが断られる。
ほどなくうわばみ、ギザギザのついたさすまたも排泄する。そして。
「夏のギザは腹にさわる」
ちいかわの作者さんが落語好きとは聞こえてこないけど、きっと好きだと私は思いますよ。
与太郎ものなんてきっと好きだと思う。