クライマックスシリーズ、DeNAの大逆転まで観てから買い物に行って、帰ってきたらもうキングオブコントやってた。
昨年と同じく、途中から参加しました。
Tverで振り返ろうと思ったら、ずいぶんアップが遅かったので出すのが一日遅れました。
昨年の当該記事、結構来訪者があったことに気づいた。ありがとうございます。
キングオブコント2025 ロングコートダディの魅力/や団の暴力要素の考察
まずは。
昨年書いた内容、今年答え合わせができた気がしている。
や団はまたしても、変な暴力に進んでいって、そして今年は綺麗に散った。
コントのシチュエーションとしては、「力関係の潮目が変わった」である。これはなんら問題ない。
だが、なんでことさらに暴力に走るのか。気に食わない上司をひっぱたくには本来相当高いハードルがあるのに、それを軽々超えてしまうからピンと来なくなる。
もちろん、「いきなり立場の逆転があったというだけで上司をひっぱたく男のクレイジーさ」をフィーチャーしていることぐらい理解する。でも客はそこまでついてきていない。
や団は暴力に取りつかれていて、その感性を修正できないままなのだ。
「暴力が笑いになる」と考えている、みなしているということだ。安易な暴力。
まあ、暴力シーンを見ると笑う人も間違いなくいる。そこには刺さる。
でも、このやり方では天下は獲れないということ。
ところで、しくじるのは暴力だけではない。他の要素も、演者の思いと真逆に働いて、しくじることがある。
落語においてもしばしばそう。
表面的な感情が、しばしば客の内面をも支配してしまうということを、常に私は書いている。
「表面的な感情に内面を支配されるなんて、愚かだ」と、自称お笑いマスターは言いそうなのだが、この感性は誰にでもあるもの。
たとえばスベリウケ。
これは本来、大変高度なワザ。だが、軽々しくやってしまうとしくじる。
「スベっている様子を客に見せる」ことで、客の脳がその状態を「スベっている」と錯覚してしまうのである。
そう思う客はなにも、ひどい勘違いをしているのではない。
「いや、ウケのためにスベッたのに!」と演者は思う。でも、設計を誤ってしまったことに無頓着だ。
自虐も、同じ理由で決して軽々しくやるべきではないと思っている。
私ったらこんなにダメなんですよお、と見せることで、錯覚した客の脳は、「あ、この人ダメなんだ」と思ってしまう。
もちろん、ある程度はそう思ってもらわないと、自虐の意味と効果がないのも確かである。
それを念頭に置いて。
ジェラードン(優勝)と、蛙亭(準優勝)の優勝決定戦。
くしくも「バー」でネタが被ってしまった。落語なら「ついた」という状態。それはまあ、いいのだけど。
どちらのコントにも、共通する要素がある。「気持ち悪い」だ。
暴力やスベリウケ、自虐と同様、「気持ち悪い」もまた客の気持ち悪さを本当に発動することがある。
気持ち悪いキャラはもちろん笑いになるのだが、反作用もある。だからくれぐれも気を付けないといけない。
きもわるキャラを出し、笑いを得て、かつ反作用を働かせないためにはどうすればいいか。
- そのキャラが嫌いになれない仕掛け(共感)
- キャラの気持ち悪さに必然性がある
- やりすぎないことを常に意識する
- 客が感じるほどには、コントの相方が引いていない
このように工夫して初めて、反作用をギリギリまで抑えられた客が、きもわるキャラを楽しめるようになる。
さて、先に出た蛙亭の中野が、すでにこれらを意識し、実践していた。
振られた女に非常に薄情な中野、気持ち悪いのに、なんだか許せてしまう。
中野は服装もスーツでちゃんとしているから、泣く女を叱るギャップで笑えてしまう。
そしてイワクラも適度に気持ち悪い女。現実にいそうだが、そこから微妙に上にはねる面倒な女。
許せてしまう理由は、中野がなんとなく楽しさをにじませたキャラだからなのだろう。正直コントである前に、演者のニンは馬鹿にならない。
さらに、気持ち悪さの骨格を決めておいて、それが向こう側へ落ちないようちゃんと設計しているのが上手いなと。
イワクラが、中野が気になるもんだからペラペラ話しかける。イワクラにも中野にも、つかず離れずの共感が生まれる。
ちなみに暴力好きのや団とそのファンは、「許せない人間のほうが笑いになる」と思っているのでは。
蛙亭は非常に面白かったのだが、さらにジェラードンが上だった。
ジェラードン、強烈な出オチ。気持ち悪い男が机の下から現れて、客の度肝を抜く。
しかし、それを広げない。むしろ急速にこの出オチをしぼませることに注力する。なぜか。
早いこと出オチを解消しておかないと、客の頭にそれだけが残ってしまうからだ。これは最悪。
ジェラードンの気持ち悪いほう、アタック西本は本当に気持ち悪い。
でもやっぱり、愛嬌がある。
相方かみちぃは、しっかり引いているのだが、途中は引きすぎないようにしている。
引いているのは記号としてであり、いっぽう、引きすぎないのは西本が嫌われないようにであろう。
だから、客はこのふたりを突き放さない。熱湯が注ぎ込まれる中、適切な量の冷水が流れ込む。
いつまでもぬるま湯に浸かっていられるのは、蛙亭と同じ。
ところで、生放送で観た際はジェラードン面白いな、蛙亭は設定が被って気の毒だったな、と思った。
求人ボックスがスポンサーの大会で、タウンワークのCMに出ている芸人が優勝。
だが翌日Tverで観返したら、コントのレベルが雲泥の差だった。蛙亭のおしゃれな、爆発力の低いコントが圧倒的に面白い。
ま、これは仕方ないでしょう。作品としては、蛙亭が上だった。
ジェラードンが、出オチの後細かいギャグで世界を維持しつつ、最後にどんと下半身バニーガールでかさ上げしてきた、その勝利だと思う。