キングオブコント2025 ロングコートダディの魅力/や団の暴力要素の考察

外で仕事して帰ってきたら、キングオブコントがすでに始まってた。
しかも、私の大好きなロングコートダディがトップバッターで1位。
2番手のや団が2位。
ああ、一番面白いところを見逃した。
その後は、以前から着目してるレインボーなど面白かったが。
その他には、後で取り上げるファイヤーサンダー以外特に振り返りたいネタはなかったですね。

キングオブコント、かつて採点して見てたこともあった。
ちょっと近年は私と距離が遠い。
2年前のサルゴリラあたりがどうも。
決してつまらないコンビだと思っているわけじゃないのだが、あの優勝でブレイクしたのかというと。
その前のビスケットブラザーズにも、ずっと違和感を抱えたままだし。
昨年はラブレターズだが、番組観たかどうかすら思い出せない。

とはいえ審査において「華のないコンビだから点入れない」とか、そういう忖度をして欲しいわけじゃない。
どんな大会だって、なんだかなという年もあるし、数年続くこともある。
ともかく今年のロングコートダディの優勝は、そういう懸念も片隅に置きつつ、いろんな意味でよかった。
実績十分な彼らは、今後の一層の活躍が予想される。

見逃したコントは、Tverで改めて観ました。

ロングコートダディのモグドンのネタは、本当に面白い。
少しずつ違和感を積み重ねておいて、モヤモヤを一気に爆発させる構成の見事さ。
「否定から入る人」というどこにでもいそうな人を、キャラものの世界に持ってくる類まれなるセンス。
「モグドンは学校には行けないよ」と友達になった小学生は言う。
そりゃまあ、地底人だからなと客が思った瞬間、「なんでも否定から入る人は学校には行けないんだ」。

まったくの想像だが、「否定から入る人」をちょっと嫌だなと思う気持ちと、さらに演者自身の中にも否定から入る気持ちの両方があるのだと思う。
これこそ、ネタとしての立派な昇華。

そして、このネタが2位のや団の否定になっていると言うのが、今日の考察である。
ちなみに今日のブログ書いてて、私も段落を「いや」から始めそうになり、ドキッとしました。
指摘されて否定したい、モグドンの気持ちがよくわかる。

や団の、1本目はロングコートダディと1点差。
こちらにも暴力とは別の引く要素を感じるが、まだいいとしよう。
ファイナルステージのネタが決定的によくないなと思ったのだ。
ああ、この暴力性を綺麗に昇華しない限り、優勝なんてできないなと。
居酒屋で、客に向かって悪態をぶつけ続けるネタは、面白いかどうかの前に、ストレートに引いてしまう。

や団は2022年の大会ですでに、暴力要素に溢れるネタを披露していた。
過失で死なせてしまった友人を埋めてしまおうという。
キングオブコントの現在の審査員は、いずれも暴力のもたらす笑いについては、把握しつつも蓋をできる人たち。
私の感じたような不快感は、直接点数には表れにくい。しかし天下を獲れるかどうかにおいては、ささやかに影響すると思う。
売れてるコントは、実のところ少々暴力的なキャラでも可愛げがある。
だがトリオなのが仇なのだろう、徹底的な暴力一直線。暴力一直線がボケの仕事と心得ている。
最もよくないのは、「悪態をつくたびに客が笑う」という構造がいつの間にかできあがってしまうこと。
それでもなお脳内の暴力感性に自由な人は、戸惑わない。婆さんがババア呼ばわりされていれば笑えるという人にとっては。
そうでない私のような人は、もう笑えなくなる。「悪態で笑う」という行動が脳内拒否反応をもたらすからだ。
秋山竜次だけ、「引いちゃう人もいると思う」とコメントしていた。

ロングコートダディのモグドンのネタは、「否定から入る人」と言う、実にささやかな暴力の悪癖に迫っている。
悪癖を笑う(非難する)この感性こそ、や団の暴力性を根本から否定しているわけだ。
暴力を否定して得られる笑いと、暴力そのもので狙う笑い。
好みの問題ではあるけれど、どちらがいいか。

ロングコートダディのファイナルステージのネタは実に楽しい。
なんでも「言語化してくれ」と迫るデキ女子と、ひったくりに遭う巡査という、よく思うつくよねという組み合わせ。

コントというよりむしろコメディ芝居のようなオシャレなデキ。
衝撃のオチだが、あれが優勝の決定的な要素ではないだろう。
オチはやや暴力的だが、すべてをひっくり返す暴力性は漂わない。もう少しじっくり考えると、これでなくてもいい気もしてくるけども。
非常に楽しいのにも関わらず、無名のコンビがファーストステージでこのネタを披露したとして、ウケないかもしれない。
大会でも、年季が時として役に立つ。

大会の見方としては邪道だが、今回はロングコートダディを全面的に応援してしまった。
水準以上のデキで、ああよかったなと。
ファーストステージでは1点差だったから、差はほぼファイナルステージでのものだ。
冷静に考えると、や団とロングコートダディのネタに著しい差があったのかどうか。
結局のところ、どっちを好きな人が多かったかによる気がする。

この大会にはもう一つ、暴力を感じさせるネタがあった。
3番手のファイヤーサンダーである。ちなみに、これも見逃したのでTverで観た。
不祥事からテレビバラエティで戻ってきた芸能人のネタ。
しかし、復帰してはいけないレベルの犯罪を犯していたという。

これには別に、引かない。
客が感じる暴力の生々しさがないからだ。
「もしも、重罪を犯してテレビに帰ってこれる芸能人がいたら」というネタである。
それ以外の暴力要素は綺麗にカットされている。
作る側に配慮(コンプライアンスとは異なり、客に届けるための方法論)があるからだと思うのだ。

先ほど「暴力に蓋ができる」と評した審査員たちだが、ブラックさにはみんな触れてた。
やはり才能ある人は違うのだなと。
山内は、「自分は笑うが他人が引いてるかもしれない」という、客の懸念について触れてた。
落語会で私もこれを感じることがある。
そう思うと殺人じゃなく、巨額な詐欺みたいな重罪のほうがよかったのかもしれないが。

ちょっと下火になっていた気がするキングオフコントだが、ロングコートダディのおかげでよみがえるでしょう。

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