柳家三三平日昼の独演会 その5(品川心中)

昨日から書く予定にしてた質問に加え、もうひとつ思い出しちゃった。
思い出しついでに書く。
「三三師匠の達筆の秘訣は?」

ぼくは上手い人っぽく見せるのが得意なだけです。
修業中、小三治と顔合わせることはほとんどないわけですが、メモはよく置いてありました。
その字を見て真似ました。
あと、先代扇橋師匠の字は味のあるヘタウマでしたね。これも真似しました。
蝶花楼馬楽は画数が多くて大変ですよ。
私は名前だけなら六画ですけど。でも上には上がいます。
きく麿さんは前座時代「十八」でした。木久蔵師匠の「木」を分解したものですね。いちはちじゅうのもくもくですよ。
これ、四画です。
さらに上がいまして、柳家一九師匠です。三画ですからね。

そして最後のほうにあった質問。

「ネコという名前の犬はその後どうなりましたか」

ネコはですね。ぼくは直接見たことはないんですけど。
修業中、ネコの子供がいましたね。
(小もんさんに品種を訊かれて)シーズー? ですかね。モップになりそうな犬です。
ネコはですね、禽太夫アニさんが修業中に叱られたあと、こっそり蹴ってました。
だからネコは、禽太夫アニさんが近づくと警戒してうなります。当然、「あんたなんかしたでしょ!」と叱られます。
叱られた後で、またネコを蹴ってました。
禽太夫アニさん元暴走族なんですけど、優しいんです。

フォローになってない。
他には、またしても林家の悪口があった気がする。

ではそろそろということで、高座の準備。
小もんさんが先に引っ込んで、袖から座布団を持ってきた。
メクリも持ってくる。
三三師一度引っ込んで、着流しでトークしていたところに羽織を着こんで、「花咲か爺さん」の出囃子で再登場。

もうさすがにマクラは不要。
スピーディに品川の板頭、お染へ。
お染の説明が明確。美人というより抜けるように色が白くてなんとも愛嬌があるらしい。
長年板頭を張ってきたが、徐々に人気が落ちた。
季節の変わり目だというのに移り替えができない。移り替えができないと、ひとえにできず、あわせで働かないとならない。
そして今まで後塵を拝していた後輩たちは、いい気味だとばかり冷たい。悔しいからもう死んじゃおう。
お客の一覧を見る。「噺家さんも来てるわね。白酒兼好一之輔…このあたりはダメだわ」。
というわけで、貸本屋の金蔵に決定。身寄りもいないし、いなくなっても世の中困るわけじゃないし。

この先は、基本スタンダード。
極めて普通で、そして実に面白い。
やりすぎもないし、物足りない部分もない。
三三師も、骨格がちゃんと柳家だなと思った。

一席めの「女天下」はもっと刈り込めばもっとよくなるのにと思ったのだが。
でもこの品川心中に関しては、説明の量がかなり多いのに、説明が乗った分まるまる楽しい。冗舌な三三師の本領発揮みたいだ。
説明のための説明でなく、気に入った部分を持っていって欲しいということみたい。

せっかく来たのにお染はよその部屋を回って全然来ない。やっと来たが、金蔵ふてて狸寝入り。
お染は手紙を書いている。いびきをかいたまま背後に忍び寄る気持ち悪い金蔵。
説明して、なら俺も死ぬよと言質を引き出し、ガッツポーズのお染。いや、ほんとにガッツポーズはしてないけどそんな感じ。

その夜はもう、お染のテクニックをフルに使って金蔵に大サービス。
この部分聴きたい人は別料金でやりますので。

ちょっとだけ、珍しい点があった。
いとま乞いに出向く金蔵の相手をするのが、おかみさんでなくて親方だった。
このほうが自然な気もする。

白装束は、女ものは立派だが、男物は膝までで袖なし。
こういうクスグリもしっかり入れるが、でもまるで重くない。
登場人物がみなつま先立ちしてるようなイメージなのだ。

心中場面はことのほか勢いがいい。
刀は親方のとこに立てかけたまま忘れるし、剃刀はスパッと切れたら縫いにくいし。
刀も剃刀も同じようなもんかと思うと、金蔵としては死んだときの姿に違いがあるみたい。
「針でちくちく」はない。
このあとお染は金蔵を引きずり、梯子段を降りて外へ。戸があるが力を込めると潮風で傷んでいて見事開く。
安房上総から流れ込んでくる潮風と、波の音。暗い品川の海が一気に開けた。
夜だから見えないのにもかかわらず、素晴らしい情景が広がった。
そこにまっすぐ伸びる桟橋。この人、最初から第3手段決めておいたのかね?

お染に突き落とされたが、カネができたのでお染は翻意。
全部聞いてる金蔵は悔しいが、海を歩いて八ツ山あたりで上陸。犬の町内送りはない。
親方のうちは博打の真っ最中。
親方が「安心しろ手入れじゃねえ」と言ったのを聞いて、火を消す奴がいる。手入れに反応したらしい。
親方の背中駆けあがって梁にぶらさがるやつ、糠味噌に足つっこんで金玉落とすやつ、便所に落ちた与太郎。
それ以外に、へっついに首つっこんで抜けなくなったやつがいた。なくはないがちょっと珍しい印象。
この人は、へっついを壊さずどうやって首を抜いたのであろうか。

実に楽しい一席でフィニッシュ。
1時半に始まった会は、午後3時半終演予定のところ、4時に終わったので実にたっぷりでありました。
ブログ記事も、まさか5日間も続けるとは思わなかった。

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