堀之内寄席2 その2(桂宮治「大工調べ」上)

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春風亭昇羊「夢の酒」

昨年よく聴いた昇羊さんだが、今年はまだ2席目だ。まあ、巡り合わせである。
いろいろと飛び道具を持った人だが、マクラがいつも面白い。
宮治さんについて。
宮治アニさんは、楽屋でも高座と同じでテンション高いんですと。
今日は昇羊さん、会場入りがちょっと遅れてしまったのだと。
そうすると先輩の宮治さんが、「まあまあ昇羊さん、上座へどうぞ」。
マイクチェックなど会場の準備も、早く出てきたこの先輩が全部済ませている。
太鼓を叩きたかったのだが、「まあ、俺がやるから」と言われてしまう。
即興で作るマクラが面白い。

友達が結婚したという話を振る。「あ、師匠の昇太じゃないですよ」。
その友達、奥さんが大変やきもち焼きだそうな。そこから、夢の酒へ。
あら、昨年ここ堀之内で聴いた噺だ。前半だけ神田連雀亭で聴いたこともある。
好きな噺なので別にいいけれど、常連の多いこの会では、前回のこれを聴いた人も多かったのでは。
さらにパワーアップしていた。工夫を怠らない人だ。
嫁のお花が、一層かわいらしく、より悋気やみになっている。
若いのに、女の描写がとても上手い。
若旦那が夢の中で酒を勧められて飲んでしまうのを、「断ったらいいじゃないですか。夢の話なんですから」とお花のほうから言うのは面白い。
「三度の酒より、飯が」と間違ってしまうが、「大事なところを間違ったらいけない」と、大旦那の口を借りてスムーズに進める。

夢を使った場面転換のシーンが見事。
サゲはもったい付けずにスッと。そういうのが好きな人みたい。いいな。

桂宮治「大工調べ」

トリは宮治さん。
本編はこの上なく凄い、大工調べであった。
天才だと、成金で一番上手いのはこの人だと、本気で思った。
よく考えたら宮治さんをトリで聴くのが初めて。高座を支配する、圧倒的な力を初めて知った私。
にもかかわらず、マクラでの非常に大きなマイナスが、いつまでも気になり続ける一席であった。一週間経った今でも気になり続けている。
大工調べに圧倒され、打ちのめされたのは事実。マクラのマイナスが大き過ぎたのも事実。両方が同等に真実なのである。

マイクの電池が切れましたねと、マイクを取っ払って肉声で喋る。マイクの切れるいい会場です、と早速ぶちかます。
昇羊さんの遅刻をいじる宮治さん。お客さんの座布団も、みんな私が並べたんです、開場前なので冷房も付けないで。
障子が開いて、着替えた昇羊さんが、アニさんすみませんでしたと顔を出す。
宮治さん、いいよお前、この状況がお客さんから見たときパワハラじゃないか。
本来、大笑いになるべきシーンだが、芝居みたいでなんだか微妙で変な雰囲気。
昇羊さんが姿を消すと、あいつ今頃、楽屋で俺の私物踏んでますよと。
でも、男前っていいですよね、近くでよくよく見てみるとそれほどでもないんですが。

続けて、落語界は一日でも先に入ったほうが後輩の生殺与奪を握っていると語り、併せて吉本のグダグダ記者会見をネタにする。

続きます。

作成者: でっち定吉

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