堀之内寄席2 その1(笑福亭希光「ちりとてちん」)

定期購読・年6,000円(税込)

希光 / ちりとてちん
昇羊 / 夢の酒
(仲入り)
宮治 / 大工調べ

またしても仕事に隙間が生じる。
予定していないのだが、落語に行くとするか。安い席があれば嬉しい。
東京かわら版を開くと、「堀之内寄席」がある。毎月23日に、杉並の堀之内妙法寺で開かれる落語会である。
長講3席が聴ける上質な会。基本的には芸協の二ツ目が出演する。
今回、顔付けがいいではないか。いつも気に掛けている会なのに、ノーマークであった。
妙法寺は、粗忽噺の「堀の内」の舞台。おそつさま。うちから近くはない。
一度、機会を作って神田からお祖師さままで、堀の内の舞台を歩いてみたいものだと思っている。鍋屋横丁を抜けて。
間違えて浅草に行くのはさすがになしで。

ここ堀之内寄席には、昨年の3月に出向いて以来だ。
その際、今回出ている昇羊さんも聴き、日曜日に楽しい「青菜」を聴かせてもらった春風亭柳若さんも初めて聴いた。
毎月やっているので客もなかなか上質。
入場料500円で、茶菓子まで付けてくれるのでありがたい。
南無妙法蓮華経。これも御仏の導きである。

障子越しの廊下で、鳴り物が入る。贅沢な会だ。
この日出番のない古今亭今いちさんが顔を出し、笛は私でしたなんて挨拶してスタート。

笑福亭希光「ちりとてちん」

希光さんは、2日前の日曜日に品川・中延で聴いたばかり。
その際聴いたのとまったく同じマクラ。闇営業うんぬんはなかったが、湯河原で、神田の老人たちの前で披露した落語の話など。
マクラを豊富に持っている人なのだと認識したばかりだったのだが。
だが、聴いたばかりのマクラなのに、やたら面白い。ご本人にとっても、完成された鉄板のデキらしい。
そして、堀之内寄席の客には、よりウケていた。
希光さんは東中野在住なので、ここは地元みたいなもの。

高座の横に「堀之内」と書かれた釈台が置いてある。
希光さん、上方落語だからこの釈台を見台として使ってもいいわけだが、この人の高座で、見台使っているのは見たところがない。
鶴光師の東京弟子はだいたいそうだったかも。

調子のいい男がいますねといって、ちりとてちんへ。
導入部が似ていて、一瞬、冬に聴いた「ふぐ鍋」かと思った。この季節にそんなはずないけど。

豆腐を飲み込むハイライトが圧巻。爆笑でした。
隠居は実のところ、愛想の悪い竹のほうが好きなのだというような深みはない演出だが、笑いをストレートに追求する。
腐った豆腐を食わせるある種ひどい噺だが、隠居が腐った豆腐に毒消しのわさびを混ぜつつ、「これがわしの良心や」と語っているのが楽しい。
そういえば、最近この一言は聴かないな。東京だとわさびでなくて唐辛子になるからか。
愛想の悪い竹さんを呼ぶときに、調子いい男は隠れない。
隠れないのに噺から消えてしまう点だけ、少々気になったのだが、でもこのほうが落語としては自然かもしれない。

続きます。

作成者: でっち定吉

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