古今亭今輔独演会@らくごカフェ(上)

行きたい寄席や落語会は無数にあるが、全部行けるわけはない。
前後数日を含めた行きたい席の数々からギュギュっと絞り込んで、28日日曜日、らくごカフェでの「わりかし頑張れ!古今亭今輔ひとり会 vol.5」へ。
200円安くなるので予約も済ませておく。

新作落語界の鬼才、今輔師を聴くのはずいぶん久々である。当ブログによると、2年前のGWに池袋で聴いて以来。
ずっと聴きたかったのだ。実際、前回のひとり会も検討した。
浅草ではトリも取る師匠だけど、芸協の寄席自体行く機会が少ないから。
5月の芸協らくごまつりでは、クイズの司会でお目にかかった。あのお祭りでお見かけした噺家さん、最近次々と聴けていて嬉しい限り。
4連続で、芸協会員の落語会に出向くことになる。珍しいことだが、本来私は、別に芸協嫌いでもなんでもない。
今輔師の会と行き先を迷ったのはやはり芸協の噺家で、柳家蝠丸師。翌月曜日の上野広小路亭、しのばず寄席でトリを取っている。

狭いらくごカフェではあるが、満員である。熱気あふれる中スタート。
今輔師のファン、実になんとも不思議な感じだ。女性も多く、あまり落語マニアっぽくなく見える。
4席オール新作。実になんとも珍しく、楽しい会でした。そして、知的興奮に充ちあふれた内容。
前半2作の演題がわからない。それでも、「超絶的な嘘でもって宿題をやらない言い訳をする」一席目のタイトルは調べたらわかった。

オオカミ少年
七福神たちが人気を復興しようと集まる噺
柳家金語楼作「変わり者」
(仲入り)
1/4の完全犯罪

トリの一席については、今輔師のブログにタイトルが出ていた。
仲入り前の金語楼作は、高座でタイトルを語っていたもの。
まあ、新作の演題なんかわからなくていいのだけども。

今輔師、故郷・富岡の観光大使を務めているんだそうだ。
今日は希望者に、富岡製糸場の入場券を配りますとのこと。
世界遺産になったのはいいが、現在少々人気低迷気味だそうな。その観光案内。
最寄り駅の上信電鉄、上州富岡駅の駅舎はグッドデザイン賞などを受賞している名建築だそうだが、師に言わせるとややシャレすぎているんだと。その近くには、隈研吾の設計した市役所もある。
ぜひ富岡にいらして、帰りに焼きまんじゅう食べて帰ってくださいって。

この会、1週間前に落語カフェに状況を確認したら、予約が8人とのことでずっこけたそうな。独演会でつ離れしないなんてみっともない。
でも、特に何もしなかったところこのように盛況でと。さすがイマラーのみなさんと客に感謝。
私も、予約入れたの直前だ。
今日は新作4席、すごいでしょと。こんなに頑張っている私、もっと落語界で評価されなければいけませんだって。
師はあくまでも自虐として言っているのだが、もっと評価されるべきなのはまったく同感。
寄席では、どうしても同じ噺をすることになりがちだそうな。今日は自分の会なのでやりたい噺を。

それからクイズの話。ただいま絶好調らしい。
ネット番組の、幕末限定カルトクイズ大会に参加し、見事優勝する師。
最近は、カズレーザーなど芸能人が集まって、仕事でなく趣味でクイズ大会を催していたりするんだそうだ。
そこに参加し、次々勝ち抜ける今輔師。

まず軽めの一席。噺家は、修業時代叱られても絶対に言い訳しないことを叩きこまれますという前フリから。
宿題をやらない中学生を叱る教師。中学生のほうは、宿題はやったのだが登校途中巨大な鷹に捕まったりして提出できないと、毎日特殊な言い訳をする。

既存の新作落語のどこにも収まらない落語を掛ける今輔師だが、実は古典落語の技法をふんだんに使っていると思う。
登場人物について、その背景は描かない。だから会話があくまでも軽いのである。
過剰な演技でせっかくの自作落語をダメにする噺家もいる中、師の軽さは特筆すべきものだ。
コント仕立てともいえるが、いっぽうで「隠居と八っつぁん」の会話を彷彿とさせる。
私の知っている師の噺では「群馬伝説」が近い。ストーリーがではなく、登場人物二人の会話の構成が。
そして、当初わからない人物の背景が、徐々に描かれる。描かれてもなお軽いのだけど。

続きます。

作成者: でっち定吉

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