新横浜コットン亭は今年2024年に復活している。
毎月あるのだが、復活第1回と第3回に続き、今回の第5回へ。
毎月昼夜交互開催で、私は昼のほうが出歩きやすいのである。
演者よりも会場についている状態。まあ、そんなのもいいや。
新横浜という街は、極めて人工的なのに、徐々に徐々に日常感が侵食しつつあるその空気が割と好き。
あと相鉄ローゼンとかちゃんとしたスーパーができれば完璧。
東急電鉄はタッチ決済乗車キャンペーンをこのところずっとやっている。
現在はJCBカードで改札を通ると半額(上限500円)。タッチ決済で改札通る人、私のほかに見たことないけど。
JCBカードもたくさん持ってるから、乗りたきゃほぼ無限に半額で乗れる。
運賃が上乗せされている新横浜もこれで安心。
台風接近中であるが、それでもなかなか盛況。
新横浜コットン亭は復活第2回から、今秋真打に昇進する落語協会の二ツ目さんが必ず入っている。
朝之助改メ梅朝、志ん松改メ志ん橋、始改メ伝輔。
そして今回4人目が、唯一改名しない柳家花ごめさん。
今回のお相手は真打の桂やまと師。
やまと師も3年振り。この師匠はスタジオフォーの四の日寄席に行けば聴けるのだが、この会自体にご無沙汰してしまっている。
花ごめさんも以前は花緑弟子の会などでよく聞いていたが、最近はご無沙汰だ。
二度聴いた粗忽長屋はすばらしかったが、まったくそれることもあり。
でも最近、真打昇進も控えて名前をよく目にするようになった。面白いことに新作のほうでも名前を見る。
新作は一度も聴いたことがないが、今日聴けるのではなかろうか。
たがや | 花ごめ |
百川 | やまと |
(仲入り) | |
狸の札 | やまと |
もう半分 | 花ごめ |
最初に花ごめさん。ということは、真打昇進を記念してトリということだ。
初めてコットン亭に寄せていただきます。
横浜という土地は文化レベルが高くて嬉しいですね。最初からヨイショ丸出しで申し上げておりますが。
真打昇進のお知らせと、披露目のチケットありますのでと。
「待ってました」なんて掛け声があるといいですね、に応えてスタッフがマイクで「待ってました」。
待ってましたから掛け声、花火、玉屋鍵屋へ。
そろそろシーズンも終わりのたがや。
地噺は難しいねとしか言えない。
開演までぐっすり寝てたのだが、さらに寝てしまった。
続いてやまと師。
私は、落語の語り口というものは、棒読みがデフォルトであるべきではないのかとつらつら考えている。
以前から棒読みの効能は述べていたところだが、見解がさらに先に進んだのである。
しかし、非棒読み勢力は間違いなく勢力を保って今後もずっと存在し続ける。この最右翼は菊之丞師。
そしてそれと並ぶ非棒読み派がやまと師ではないのかと。
やまと師はイキイキと、自然な演技を落語に持ち込んでいる、
人間国宝、雲助師にも似ている。
語り口は違うけども、顔も似ているし噺のムードがよく似ている。
名を挙げた人はみな古今亭。やまと師も桂だが古今亭。
登場から早々と、声は通り、明るくていい感じ。
真打になるのは嬉しいものですよ。よく、二ツ目に上がるときが一番嬉しいなんて言いますが、真打のほうが嬉しいものです。
みんなここを目標にするんですから。
私のほうもめでたいことが一つあります。
明日8月30日は、私の誕生日です。それも50回目の。
私は先祖代々荒川ですが、大きな祭りはあまりありません。
隣の台東、文京あたりはすごいですね。
三社祭や神田明神やら。
そこから四神剣。
百川という料理屋で実際にあったとされる話を落語にしたものですと。
百川はあんまり好きな噺じゃない、と出るたびに書いている私だが、やまと師のものは実によかったです。
百兵衛さんは最初からしっかりマヌケであるから、四神剣の掛け合いの前半と、亀文字師匠を呼びにいく後半とに断絶がない。
そして若い衆たちが、一度も一枚岩になっていない。
あれは確かに四神剣の掛け合いだと同意する自主性のないヤツもいるいっぽう、丸っきり疑っている仲間もいて、一度も意見が一致しない。
医者のかもじ先生の薬籠が先に届いてからは、やっぱり間違ってるよという意見が主流の中で、四神剣で前面に出ていた男が頑張ってなんとか意味を見出そうとする。
だが、「手遅れになるといけない」のワードを解こうとして、ついにこやつもギブアップ。
百川を聴くと、あまり好きじゃないアンジャッシュのすれ違いコントを連想する。これは渡部のやらかしとは関係なく昔から。
本来出会わない要素が、山出し奉公人を通じて奇跡的に一致してしまうのが百川の核心。だが、一致の仕方が好きじゃないのだ。
だが、やまと師は違った要素をムリにはめ込まない。最初から最後まで、ズレたままなのだ。
ズレたままなのに、なんとか合理的に解釈しようとする部分が笑いになるのだ。
噺家のみなさん一致が快になると考えすぎて、反対意見を引っ込めがちになっていないだろうか。
この演出は、新作落語を作るときにも非常に参考になるのではないでしょうか。
続きます。明日も百川から。