ゴルフマンガ「オーイ!とんぼ」は弟子の育成、ハラスメントすべてに答えてくれる

LINEマンガは電子コミック界では存在感薄めだが、相当数のマンガが無料で読める。
無料で読むためなら、30秒の広告ぐらい見ましょう。それが現代社会というものだ。
私のマンガを読む量はタイミングにより千差万別。まるで離れるときもあるが、たった今は非常に多い。
おかげで小説の読破が減ってしまったのでマンガは減らすつもりだが、ひとつ猛スピードで読みふけっているマンガがあり、これはやめられない。
単行本で換算すると、もう15巻ぐらいに入っている。すでに50巻が出ているそうで。

そんなもの読まずに、落語ブログなんだから「あかね噺」をもっと読めと言われそうだ。
だが、落語界を描いたあかね噺よりもさらに師弟関係を、育成を考えさせてくれるマンガを今日は取り上げます。
ゴルフのマンガ「オーイ!とんぼ」。
あかね噺と合わせてアカネトンボだ。合わすな。

主人公は最初中学生で、途中から高校に入る「とんぼ」(本名)。女の子であって、女子ゴルフ界が舞台。
とんぼは島の子である。鹿児島県の奄美群島の手前にあるトカラ列島「火之島」。実在の中之島をモデルにした島。
船でしか入れない、今どき貴重な過疎の島。
ここに島民しか知らない3ホールのゴルフコースがあり、とんぼは幼い頃から父の形見の3番アイアン1本で遊んできた。
海辺の崖の上、大変風が強いこのコースで、風を操るようにプレイするとんぼ。
島の外には決して出ず、この楽園でひたすら遊んできたとんぼ。その素質を元プロゴルファーの副主人公が見い出す。
この型にはまらない自由な、柔軟なゴルフをなんとか島の外に出してやりたいと考える。

主人公の年齢的には少年マンガ誌で連載していてもいいところだが、なんとゴルフ専門誌らしい。
そのため、技術論は非常に頻繁に出てくる。よくわからんが。
それでもアニメになっているようだし、少年たちにだって刺さるかも。すでに本屋では平積みだったし。

副主人公の懸命の策略が功を奏し、とんぼは自分の意思で島を出る。
だが副主人公は考える。この娘の豊かな発想力は並の指導者では活かせない。できるだけ触らないようにして欲しい。

鉄拳制裁を指導と言いくるめる落語界の一部。
そこに対する強烈なアンチテーゼに期せずしてなっている。まあ、もともとジュニアゴルフ界の親自体に作者が疑問を持っているのでしょう。
ちなみに原作者かわさき健は、ゴルフマンガ界隈ではきっと常識なのではないかと思うが、川崎のぼるの息子さん。
巨人の星やいなかっぺ大将、てんとう虫の歌の。

とんぼのライバルたちも魅力的。
できるライバルは、「なによあの娘、クラブたった7本で廻ってるわよ。それになにこのアプローチ。常識外れだわ」なんて少女マンガみたいなことは一切言わないのだった。言うのはモブキャラだけ。
ライバルへの相互リスペクトはなんとなく、スパルタ要素のない巨人の星っぽい。
そしてデキる彼女たちは、とんぼの一風変わったプレイに魅了され、影響されていく。
とんぼは、彼女たちが成功すれば無邪気に喜ぶ。

できるライバルは、みな精神・肉体に何らかの傷を負っている。これは天真爛漫なとんぼも同様。
米国のコースでもって池のワニに噛まれ、左脚が粉砕骨折しもはや再起不能かと思われた選手まで。
左脚に力が入らないのでレフティに転向までして復活を遂げた。
そして、本土のスクールにおけるとんぼの先輩の父は、娘を支配する毒親である。
しかし親から勝利を強いられたゴルフを通し、娘は自己を開放していく。

それどころか、元ゴルファーの副主人公が最も手負いの傷である。
業界を追放され、家庭も壊してしまった。
かつて本人も、ゴルフを始めたい息子にでたらめな指導を施し、結果ゴルフも家庭も取り返しがつかないことになった。
反省してもし足りない。
つまり、「オーイ!とんぼ」は弟子を育てる師匠の、再生の物語なのだった。

落語界にも、なるべく対象に触らない方法論はあるのだが。
柳家さん喬師の育成は有名。よく喬太郎師について語られるが、他にもそんな弟子がたくさんいるのである。
成功例がたくさんあるいっぽう、なんの根拠もなく厳しい師匠が偉いと思うアホなファンのおかげで、今日も潰れていく弟子がいる。
弟子を無数に潰してしまい、しかし晩年になんとか育てたパターンも。だが潰した事実が消えることはない。

最近、三遊亭白鳥師の育成が話題になりかけている。
ここは完全放置。前座の弟子が頼まれたワキの仕事の報告義務すらない。
そして、ここの3人いる弟子がみるみる伸びてくるのだった。

あかね噺には、育成ベタな師匠が出てこないね。
実際の落語界には、有名でもないしそこそこ毒だという師匠も多数いるはず。
角をためて牛を殺すそんな展開も読んで勝手に憤慨してみたい。

作成者: でっち定吉

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