柳家小せん「夢八」@江戸東京博物館(上)

先週、息子と訪れたばかりの江戸東京博物館、ひまわり寄席。
またも出かけます。
金曜日に行くことを見越して、先週あえて展示を全部見なかったのだ。

5時に入場して、常設展が大人480円。子供は東京都在住の中学生なのでタダ。
先週の続きから見て回るが、それにしても展示の多いこと。
歌舞伎や吉原を扱ったコーナーもやっと見られた。落語については、ない。
吉原についての展示、あって当然にも思うがそうでもない。
品川区のやってる「品川歴史館」なんて、品川遊郭については一切触れられていない。品川宿、一体どうやって栄えたというのであろうか。

落語の終わった後もまた展示を見て、いっそ来週も来ようかと息子に言ったのだが、さすがにもういいって。
明治以降の東京の展示では、人力車もあるので反対俥ごっこもできる。

さて、先週は例外的に1階のホールでおこなわれたひまわり寄席だが、今回は展示の一部である芝居小屋「中村座」の前で。パイプ椅子だが、なかなかいい雰囲気。
池袋演芸場程度には並べられた、多くの椅子が埋まる。
ここまで埋まるとなると、客は落語目当てで来ているのだろうか? 息子に言わせると、東京かわら版を見てやってくるのは私ぐらいだろうということだけど、そうとも思えない。

大好きな小せん師、私は4月の池袋以来だ。四半期に一度は聴きたい師匠。
毎週金曜日はナイトミュージアム実施中で、毎回怪談が掛かる。
この日の小せん師ネタ出しは「夢八」。夢見の八兵衛の略。
柳家一琴師にでも教わったのだろうか。上方ネタの、非常に珍しい噺。
先週の馬石師の臆病源兵衛と同様、別に怖い噺ではない。ちょっとは怖いが基本は爆笑噺。
爆笑ものなのにあまり掛からないという点も、臆病源兵衛と同じ。

私は、東京の噺家からちゃんと夢八を聴いたことがない。ストーリーもうろ覚えだが、細かい部分は上方のものとだいぶ違っていたように思う。
あと、上方では主人公八兵衛はかなりアホの喜六に似たキャラだと思うのだが、小せん師のもの、そういう感じではない。
アホはアホなのだが、足りないわけではない。

さて小せん師、怪談なんですがそこは落語ですからと。
笑いが主の噺なので、隙あらば笑ってくださいだって。
そして、いつも語る内容だが、落語はボーッと聴くのが一番ですと。
今、自分の家にいても詐欺の電話が掛かってくるようなことになっているんです。ボーッとできる場所はそんなにはないですよと。
確かにいつも思うのだが、ボーッと聴くのも一つの才能だと私は思う。この能力がまずあった上で、次に演出の細かい部分に着目したりする。
最初から細かい部分に入ってしまう人は、聴き方が上手いとはいえまい。

しかし、展示を観て廻って少々くたびれ気味で、眠気をこらえるのに苦労した。
また、絶えず気持ちいい波長を出す語りの小せん師、寝るには最適。
実際、前回の池袋も、せっかくの「人形買い」だったのに、途中で寝てしまった。
これは褒めているのである。好きな人にはわかるでしょう。
今回はこれ一席を聴きにきているのだ。さすがに寝るわけにはいかない。グッとへそに力を入れてこらえる。

一年に一度しか喋らない娘の小噺。一年に一度「おじいちゃん」「おばあちゃん」と家族の誰かの名を語るたび、その人が死んでいく。
ついに「お父さん」と呼ばれる日が来たという小噺を、「恐怖のネタ」として語り、本編へ。

続きます。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。